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9話写経

鞠莉『……え?』

果南『私、スクールアイドル、やめようと思う』

ダイヤ『……』

鞠莉『……なんで?』

鞠莉『まだ引きずっているの?東京で歌えなかったくらいで……』

果南『……鞠莉、留学の話が来てるんでしょ?行くべきだよ』

鞠莉『どうして……?冗談はやめて?』

鞠莉『前にも言ったでしょ、その話は断ったって……ダイヤも、なんか言ってよ』

ダイヤ『……』

鞠莉『……ダイヤ……』

果南『ダイヤも同じ意見。もう続けても、意味がない』

鞠莉『……』

鞠莉『……果南!ダイヤ!』

果南『……』

ダイヤ『……』

鞠莉『……』

果南『……終わりにしよう』

 

OP

 

ルビィ「夏祭り?」

花丸「屋台も出るずら……」

善子「……これは、痕跡……?僅かに残っている、気配……」

ルビィ「……どうしよ、東京へ行ってからすっかり元に戻っちゃって」

花丸「ほっとくずら」

梨子「それより、しいたけちゃん本当に散歩でいないわよね?」

曜「千歌ちゃんは夏祭り、どうするの?」

千歌「そうだねー……決めないとねー……」

曜「沼津の花火大会って言ったら、ここら辺じゃ一番のイベントだよ。そこから、オファーが来てるんでしょ?」

花丸「Aqoursを知ってもらうには一番ずらね」

ルビィ「でも、今からじゃあんまり練習時間ないよね……」

梨子「私は、今は練習を優先した方がいいと思うけど」

曜「……千歌ちゃんは?」

曜「?」

千歌「……うん!私は出たいかな!」

曜「……そっか!」

梨子「千歌ちゃん……!」

千歌「今の私たちの全力を見てもらう。それでダメだったら、また頑張る。それを繰り返すしかないんじゃないかな」

曜「ヨーソロー!賛成であります!」

善子「ぎらん!」

千歌「……うん!」

曜「……変わったね、千歌ちゃん」

梨子「うん」

ルビィ「ピギィ!?」

善子「ちょっとー、待ちなさいよー!激おこデーモン丸ー!」

千歌「…………」

 

 

果南『ん?』

千歌『はぁ、はぁ……』

果南『練習、頑張ってね』

千歌『……やってたんだよね?スクールアイドル……』

果南『聞いちゃったか……ちょっとだけね』

千歌『……』

 

 

梨子「どうしたの?」

千歌「果南ちゃん、どうしてスクールアイドルやめちゃったんだろう」

善子「生徒会長が言ってたでしょ?東京のイベントで歌えなかったからだ、って」

千歌「でも、それでやめちゃうような性格じゃないと思う」

梨子「そうなの?」

千歌「うん。小さい頃は、いつも一緒に遊んでて――」

 

果南『こわくないって、チカ!ここでやめたらこうかいするよ!』

千歌『うぅぅ……』

果南『ぜったいできるから!』

千歌『ううぅ……』

果南『さぁ!』

千歌『……!たぁっ……!』

 

梨子「――そうだったのね」

ルビィ「とてもそんな風には見えませんけど……あっ!すいません……」

善子「……まさか!天界の眷属が憑依……!?」

千歌「もう少し、スクールアイドルやっていた頃のことがわかればいいんだけどな……」

曜「聞くまで、全然知らなかったもんね(You didn't know about it at all until you asked, huh?)」

「「「……?」」」

ルビィ「ピギィ!?」

千歌「……ルビィちゃん、ダイヤさんから何か聞いてない?」

曜「小耳に挟んだとか」

梨子「ずっと一緒に家にいるのよね?何かあるはずよ!」

ルビィ「え……あわわ……うぅ……ピギィィ~!」

千歌「あ、逃げた!」

善子「フッ……とぉりゃあああ!堕天使奥義、堕天龍鳳凰縛!!」

花丸「やめるずら?」

善子「あ……はい……」

 

 

千歌「ほんとに?」

ルビィ「……ルビィが聞いたのは、東京のライブが上手く行かなかったって話くらいです」

ルビィ「それから、スクールアイドルの話はほとんどしなくなっちゃったので……」

ルビィ「ただ……」

「「「ただ?」」」

ルビィ「は、あははは――」

 

ルビィ『……』

鞠莉『……』3年生の制服

ダイヤ『逃げてるわけじゃありませんわ。だから、果南さんのことを逃げたなんて言わないで』

ルビィ『……』

 

ルビィ「――って」

千歌「逃げたわけじゃない、か……」

 

 

果南「うぅ~ん……よっと」

果南「はっ、はっ……」

「「「……」」」

花丸「ふわ~ぁ、まだ眠いずら……」

ルビィ「毎日こんな朝早く起きてるんですねー……」

梨子「それより、こんな大人数で尾行したらバレるわ!」

曜「だって、みんな来たいって言うし」

千歌「はぁ、しっかし速いね~……」

善子「いったい、はぁ、どこまで走るつもり~……?」

曜「もう、かなり走ってるよね?」

花丸「はぁ、マル、もうダメずら……」

ルビィ「花丸ちゃん……!」

千歌「でもなんか……気持ちよさそうだね」

梨子「はぁ、はぁ……そうね……」

「「「はぁ、はぁ……」」」

千歌「はぁ、はぁ……ん?」

果南「――」

千歌「きれい……」

千歌「……?」

鞠莉「……」パチパチ

果南「……」

鞠莉「復学届、提出したのね」

果南「まあね……」

鞠莉「やっと逃げるのを諦めた?」

果南「……!」

果南「……勘違いしないで。学校を休んでいたのは、父さんの怪我がもとで……それに、復学してもスクールアイドルはやらない」

鞠莉「私の知っている果南は、どんな失敗をしても笑顔で次に向かって走り出していた。成功するまで、諦めなかった」

果南「……卒業まで、あと1年もないんだよ」

鞠莉「それだけあれば充分。それに、今は後輩もいる」

「「「!?」」」

果南「……だったら、千歌たちに任せればいい」

鞠莉「……果南……」

果南「どうして戻ってきたの?私は、戻ってきてほしくなかった」

鞠莉「果南……!?」

鞠莉「……ふふ、相変わらず果南は頑固な――」

果南「――もうやめて」

鞠莉「っ!」

果南「……もう、あなたの顔……見たくないの」

鞠莉「っ……!……」

「「「はぁ、はぁ……」」」

ルビィ「ひどい……」

花丸「かわいそうずら……」

曜「やっぱり、何かありそうだね」

千歌「うん……」

梨子「『逃げるの、諦めた』か……」

千歌「?」

梨子「ううん、なんでもない」

千歌「……」

 

 

千歌「果南ちゃんが!?」

曜「うん。今日から学校に来るって」

梨子「それで、鞠莉さんは?」

曜「まだ、わからないけど……」

「「「……」」」

 

果南「……」

鞠莉「……」

「「「……」」」

鞠莉「……果南」

果南「……」

 

曜「くんくん……制服!!」

ちかりこ「「うわぁっ!?ダメ!!」」

曜「あーちょっ……あ……」

ちかりこ「「はぁ……」」

千歌「……これって……スクールアイドルの……?」

 

Bパート

 

ルビィ「……」

花丸「……」

千歌「……!」

果南「離して!離せって言ってるの!」

鞠莉「いいと言うまで離さない!!強情も大概にしておきなさい!!たった一度失敗したくらいで、いつまでもネガティブに……!」

果南「うるさい!いつまでもはどっち!?もう2年前の話だよ!!だいたい今更スクールアイドルなんて……!私たち、もう3年生なんだよ!!」

ダイヤ「2人とも、おやめなさい!みんな見てますわよ!!」

鞠莉「ダイヤもそう思うでしょう!?」

ダイヤ「やめなさい!いくら粘っても果南さんは再びスクールアイドルを始めることはありませんわ!」

鞠莉「どうして!?あの時の失敗をそんなに引きずること!?千歌っちたちだって、再スタートを切ろうとしてるのに、なんで!!」

果南「千歌とは違うの!!」

千歌「……!」

曜「千歌ちゃん!」

果南「鞠莉には他にもやるべきことがたくさんあるでしょ!?」

果南「……千歌?」

鞠莉「?」

ダイヤ「?」

千歌「……すぅっ……いい加減に――――!!」

千歌「――しろーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

千歌「もう、なんかよくわからない話をいつまでもずーっと、ずーっと、ずーーーーーーーーーーーーっっっと!!隠してないで、ちゃんと話しなさい!!!!」

果南「……千歌には関係な――」

千歌「あるよ!!!!!」

ダイヤ「いや、ですが……」

千歌「ダイヤさんも!鞠莉さんも!3人揃って放課後、部室に来てください」

果南「いや、でも……」

千歌「いいですね!?!?!?」

「「「……はい」」」

曜「……千歌ちゃんすごい……!」

ルビィ「3年生に向かって……」

千歌「…………あ」

 

 

果南「だから、東京のイベントで歌えなくて!」

千歌「その話はダイヤさんから聞いた」

果南「……!」ジロッ

ダイヤ「……!……」プイッ

果南「……」

千歌「でも、それで諦めるような果南ちゃんじゃないでしょ?」

鞠莉「そうそう、千歌っちの言う通りよ!だから何度も言ってるのに!」

果南「……」

千歌「何か事情があるんだよね?」

果南「……」

千歌「ね……?」

果南「……そんなものないよ。さっき言ったとおり、私が歌えなかっただけ」

ダイヤ「……」

千歌「~~!!イライラする~~っ!!!」

鞠莉「その気持ち、よぉ~くわかるよ~!!ほんっと腹立つよねぇコイツ!!!」

果南「勝手に鞠莉がイライラしているだけでしょ!?」

ルビィ「でも、この前弁天島で踊っていたような……」

果南「~~っ!」

花丸「ずら!」

ルビィ「ピギッ!」

鞠莉「おぉー、赤くなってるーww」

果南「うるさい……!」

ダイヤ「……」微笑む

鞠莉「ふふっ、やーっぱり未練あるんでしょー?」

果南「……っ!」

果南「……うるさい」

鞠莉「っ……」

果南「未練なんてない!とにかく私は、もう嫌になったの」

ダイヤ「……」

果南「スクールアイドルは……絶対にやらない」

梨子「……まったく。ダイヤさん」

ダイヤ「……!?」

梨子「何か知ってますよね?」

ダイヤ「え!?わたくしはなにも……」

梨子「じゃあどうしてさっき、果南さんの肩を持ったんですか?」

ダイヤ「そ、それは……」

ダイヤ「……っ!」ダッ

千歌「善子ちゃん!」

善子「ぎらん!」

ダイヤ「ピギャアァァァ!」

善子「ヨハネだってばー!!」

ルビィ「お姉ちゃん……」

花丸「さすが姉妹ずら……」

 

 

ダイヤ「……」

「「「わざと!?」」」

ダイヤ「……そう、東京のイベントで果南さんは歌えなかったんじゃない。わざと歌わなかったんですの」

鞠莉「どうして?」

善子「まさか、闇の魔術――うぁっ!?」

花丸「……」

ダイヤ「あなたのためですわ」

鞠莉「私の……?」

ダイヤ「覚えていませんか?あの日、鞠莉さんは怪我をしていたでしょう?」

鞠莉「……」

 

鞠莉『……っ!』

ダイヤ『大丈夫ですの!?』

鞠莉『全然!……っ……!』

鞠莉『……果南、やるわよ!』

果南『……』

鞠莉『……?果南……?』

 

鞠莉「そんな……!私は、そんなことしてほしいなんて一言も……!」

ダイヤ「あのまま進めていたら、どうなっていたと思うんですの?怪我だけでなく、事故になってもおかしくなかった」

鞠莉「……でも……!」

ルビィ「だから、逃げたわけじゃないって……」

曜「でも、その後は?」

千歌「そうだよ、怪我が治ったら続けてもよかったのに……」

鞠莉「……そうよ。花火大会に向けて(We could have gotten ready for the fireworks show)、新しい曲作って(made a new song)、ダンスも衣装も完璧にして(perfected our dances and costumes)……なのに……」

ダイヤ「……心配していたのですわ。あなた、留学や転校の話があるたびに、全部断っていたでしょう?」

鞠莉「そんなの当たり前でしょ!?」

「「「……!」」」

千歌「……」

ダイヤ「……果南さんは、思っていたのですわ。このままでは自分たちのせいで、鞠莉さんから未来のいろんな可能性が奪われてしまうのではないか、って」

ダイヤ「そんなとき――」

 

果南『……?』

『本当に断るの!?ご両親も先方も是非って仰ってるの、もし向こうで卒業すれば大学の推薦だって――』

鞠莉『いいんです。私、スクールアイドル始めたんです(I'm a school idol now)』

『……』

鞠莉『学校を救うために』

果南『……』

果南『――』

 

鞠莉「……まさか……それで……?」

鞠莉「っ……!」

ダイヤ「どこへ行くんですの!?」

鞠莉「……ぶん殴る!そんなこと、一言も相談せずに……!」

ダイヤ「……おやめなさい。果南さんはずっとあなたのことを見てきたのですよ」

鞠莉「……!」

幼少期の回想

ダイヤ「――あなたの立場も」

ダイヤ「――あなたの気持ちも」

ダイヤ「――そして、あなたの将来も。誰よりも考えている」

鞠莉「――っ!!」

鞠莉『……そんなのわからないよ。どうして言ってくれなかったの……?』

ダイヤ『ちゃんと伝えていましたわよ?あなたが気付かなかっただけ』

鞠莉「……!はぁ、はぁ――あっ!?」

鞠莉「……!」

鞠莉「……ちゃんと……!」

 

鞠莉『え?』

果南『離れ離れになってもさ……私は、鞠莉のこと――忘れないから』

 

鞠莉「……!」

鞠莉「……果南……」

鞠莉「……っ!」

鞠莉「――――!!!!」

 

 

鞠莉「……」

鞠莉「……」

鞠莉「……ばか」

 

果南「……なに?」

鞠莉「いい加減、話をつけようと思って」

果南「……」ピチャ

果南「……!」

鞠莉「……どうして言ってくれなかったの。思ってること、ちゃんと話して」

鞠莉「果南が私のことを想うように、私も果南のこと考えているんだから……」

果南「……」

鞠莉「……将来なんか今はどうでもいいの。留学?まったく興味なかった……!当たり前じゃない、だって……果南が歌えなかったんだよ?」

鞠莉「――放っておけるはずない……!!」

果南「っ……!!」

鞠莉「……!」パシーン

果南「――!?」

鞠莉「……私が、私が果南を想う気持ちを、甘く見ないで……!!!」

果南「……だったら、だったら素直にそう言ってよ!!リベンジだとか、負けられないとかじゃなく、ちゃんと言ってよ……!!」

鞠莉「……だよね」

果南「あ……」

鞠莉「だから……」

果南「……!」

果南「……」スッ

鞠莉「……!!!」

 

ダイヤ『み、みつかったらおこられますわ!』

果南『へいきだよ!』

鞠莉『……?』

ダイヤ『ピギャッ!?』

果南『いっ……!』

鞠莉『あなたは……?』

果南『……は、はぐ……』

鞠莉『え?』

果南『……』

果南『……はぐ――』

 

果南「――しよ?」

鞠莉「……!!」

鞠莉「っ……!!ひぅっ……!!」

鞠莉「――あああぁっ……!うあぁあぁっ、ううっ、ああぁ……!」

果南「……ぐすっ、うっ、うう……!」

 

 

ダイヤ「……」

千歌「ふふっ」

ダイヤ「!」

千歌「ダイヤさんって、本当に2人が好きなんですね」

ダイヤ「それより、これから2人を頼みましたわよ?ああ見えて2人とも繊細ですから」

千歌「じゃあ、ダイヤさんもいてくれないと!」

ダイヤ「えっ?わたくしは生徒会長ですわよ?とてもそんな時間は……」

千歌「それならだいじょぶです!鞠莉さんと果南ちゃんと……あと、6人もいるので!」

ルビィ「……」

ダイヤ「ルビィ!」

ルビィ「……親愛なるお姉ちゃん!ようこそ、Aqoursへ!」

ダイヤ「……!」

ダイヤ「……」微笑む

 

未熟DREAMER

 

果南「……ふふっ、Aqoursか」

曜「?どうしたの?」

果南「私たちのグループも、Aqoursって名前だったんだよ」

千歌「え?そうなの?」

梨子「そんな偶然が……」

ルビィ「……」コクコク

果南「私も、そう思ってたんだけど……」

曜「じゃあ……」

ダイヤ「…………」

果南「ふふっ」

果南「……千歌たちも、私と鞠莉も、たぶんまんまと乗せられたんだよ(we were all played like fiddles)――」

果南「――誰かさんに(By a certain someone)」