8話写経

聖良「見てて、私たち――Saint Snowのステージを」

千歌「……」

聖良「……」

「でーはー!トップバッターは、このグループ!」

聖良「……フッ」

Saint Snow!!」

聖良「……」

理亞「……」

千歌「……」ゴクリ

SELF CONTROL!!

千歌「――――っ!」

「続いてー、人気急上昇中!の、フレッシュなスクールアイドル!Aqoursのみなさんです!」

曜「――千歌ちゃん!」

千歌「あ……うん!」

 

OP

 

梨子「……この街、1300万人も人が住んでいるのよ」

曜「そうなんだ……」

梨子「って言われても、全然想像できないけどね……」

曜「……やっぱり、違うのかな。そういうところで暮らしていると」

花丸「……どこまで行ってもビルずら」

ルビィ「あれが富士山かなあ?」

花丸「ずら」

善子「フッフッフ……最終呪詛プロジェクト、ルシファーを解放」

善子「魔力2000万のリトルデーモンを……召喚!」

善子「……かっこいい!」

ルビィ「善子ちゃんは元気だね」

善子「善子じゃなくて!ヨ!ハ!ネ!」

花丸「ライブ終わったのにヨハネのままずら」

千歌「……」

千歌「……!」

千歌「……おまたせ~!」

千歌「わ、なにこれすごーい!キラキラしてるー!」

曜「……千歌、ちゃん……」

千歌「それにこれもすっごい美味しいよ!食べる?」

曜「あ、うん……」

千歌「はい!ルビィちゃんたちも!」

ルビィ「あ、ありがとう……」

千歌「全力で頑張ったんだよ?私ね、今日のライブ……今まで歌ってきた中で、出来は一番よかったって思った」

千歌「声も出てたし、ミスも一番少なかったし」

梨子「でも――」

千歌「それに、周りはみんなラブライブ本選に出場しているような人たちでしょ?入賞できなくて当たり前だよ」

梨子「だけど、ラブライブの決勝に出ようと思ったら、今日出ていた人たちくらい上手くないといけないってことでしょう?」

千歌「それは、そうだけど……」

曜「……私ね、Saint Snowを見たときに思ったの」

曜「これがトップレベルのスクールアイドルなんだって、このくらいできなきゃダメなんだって」

曜「……なのに、入賞すらしていなかった」

曜「あの人たちのレベルでも、無理なんだって」

ルビィ「……それはルビィもちょっと思った」

花丸「マルも……」

善子「……な、なに言ってるのよ。あれはたまたまでしょ?天界が放った魔力によって……」

ルビまる「「……」」微笑む

ルビィ「何がたまたまなの?」

花丸「何が魔力ずら?」

善子「え?いや、それは……」

花丸「なぐさめるの下手すぎずら」

善子「な、なによぉ!人が気利かせてあげたのにー!」

千歌「そうだよ!今はそんなこと考えても、しょうがないよ」

梨子「……」

曜「……」

千歌「それよりさ、せっかくの東京だしみんなで楽しもうよ!」

rrrr

「「?」」

千歌「……高海です。え?はい、まだ近くにいますけど……」

 

 

「ごめんなさいねー、呼び戻しちゃって!これ、渡し忘れていたからって思って」

ルビィ「なんだろう……」

善子「もしかして……ギャラ?」

花丸「卑しいずら(Show some class)」

千歌「……?」

「今回、お客さんの投票で入賞グループ決めたでしょ?その集計結果」

千歌「わざわざ、すいません」

「正直、どうしようかなーってちょっと迷ったんだけど……」

「出場してもらったグループにはちゃんと渡すことにしてるから」

千歌「はぁ……」

「じゃあ!」

曜「……見る?」

千歌「うん……」

千歌「!」

千歌「上位入賞したグループだけじゃなくて、出場グループ全部の得票数が書いてある……」

花丸「Aqoursはどこずら?」

千歌「えーっと……あ、Saint Snowだ」

梨子「9位か……もう少しで入賞だったのね」

花丸「Aqoursはー?」

千歌「うん」

千歌「……あ」

千歌「……30位……」

曜「30組中、30位……?」

善子「ビリってこと?」

花丸「わざわざ言わなくていいずら!」

梨子「得票数はどのくらい?」

千歌「えーっと……」

千歌「……」

千歌「……0……」

ルビィ「……そんな……」

梨子「私たちに入れた人、1人もいなかったってこと……?」

千歌「――――」

曜「千歌ちゃん……」

千歌「――――」

聖良「お疲れ様でした」

千歌「……!」

千歌「Saint Snowさん……」

聖良「素敵な歌で、とてもいいパフォーマンスだったと思います」

聖良「ただ、もしμ'sのようにラブライブを目指しているのだとしたら――」

聖良「――諦めた方がいいかもしれません」

「「「……!!」」」

千歌「?」

理亞「……馬鹿にしないで」

千歌「……」

理亞「ラブライブは――遊びじゃない!」

千歌「…………!!」

 

 

「「「……」」」

ルビィ「……泣いてたね、あの子。きっと悔しかったんだね、入賞できなくて……」

花丸「ずら……」

善子「……だからって、ラブライブを馬鹿にしないで、なんて……」

「「「……」」」

曜「……でも、そう見えたのかも」

梨子「……」

「「「……」」」

千歌「……私はよかったと思うけどな」

曜「千歌ちゃん……?」

千歌「精一杯やったんだもん。努力して頑張って、東京に呼ばれたんだよ?それだけですごいことだと思う。でしょ?」

花丸「それは……」

千歌「だから、胸張っていいと思う!今の私たちの精一杯ができたんだから」

曜「……千歌ちゃん」

千歌「?」

曜「千歌ちゃんは、悔しくないの?」

千歌「え?」

よしまるびぃ「「「……!」」」

梨子「……!」

曜「……悔しくないの?」

千歌「……そ、そりゃあちょっとは……でも満足だよ!みんなであそこに立てて、私は……うれしかった」

曜「……」

曜「……そっか」

 

 

ルビィ「戻ってきた~……」

花丸「やっとずらって言えるずら~」

善子「ずっと言ってたじゃない!」

花丸「ずらー!」

「「「おーい!」」」

千歌「みんな……」

「「「おかえりー!」」」

「どうだった、東京は?」

千歌「……あー、うん、すごかったよ。なんかステージもキラキラしてて……」

「ちゃんと歌えた?」「緊張して、間違ったりしなかった?」

曜「うん、それはなんとか……ね?」

梨子「……そうね、ダンスのミスもなかったし……」

千歌「そうそう!今までで、一番のパフォーマンスだったねってみんなで話していたところだったんだー」

「なぁーんだ、心配して損したー」

「じゃあじゃあ、もしかして本気でラブライブ決勝狙えちゃうかもってこと!?」

千歌「……え?」

「そうだよね!東京のイベント、呼ばれるくらいだもんね!」「うんうん!」

千歌「……あー、そうだねー!だと、いいけど……」

ルビィ「……」

花丸「……」

善子「……」

ダイヤ「――おかえりなさい」

ルビィ「……お姉ちゃん……」

ダイヤ「……ふふ」

ルビィ「……!」

ルビィ「……ふ、うっ、う――!」

ダイヤ「……よく頑張ったわね」

ルビィ「ううっ、う、うああっ、ああ……!」

花丸「……」

善子「……」

曜「……」

梨子「……」

千歌「――」

ルビィ「うっ、ああ、ふぅっ、うぅ、うあぁっ、あぁあ……!」

千歌「――――」

 

 

鞠莉「……」

ライト

鞠莉「いつ以来かなあ、こうやって呼び出されるの」

果南「……ダイヤから聞いた、千歌たちのこと」

鞠莉「そう」

果南「――どうするつもり?」

 

Bパート

 

ダイヤ「――得票、ゼロですか」

梨子「はい……」

ダイヤ「やっぱりそういうことになってしまったのですね。今のスクールアイドルの中では」

ルビィ「zzz……」

ダイヤ「先に言っておきますけど、あなたたちは決してダメだったわけではないのです」

ダイヤ「スクールアイドルとして充分練習を積み、見てくれる人を楽しませるに足りるだけのパフォーマンスもしている」

ダイヤ「……でも、それだけではダメなのです。もう、それだけでは」

千歌「……」

曜「どういうことです?」

ダイヤ「……7236。なんの数字かわかります?」

善子「ヨハネのリト――」

花丸「違うずら」

善子「ツッコミはやっ!」

ダイヤ「ふふ。……去年最終的にラブライブにエントリーした、スクールアイドルの数ですわ。第1回大会の10倍以上」

千歌「……」

千歌「……そんなに」

ダイヤ「スクールアイドルは確かに、以前から人気がありました。しかし、ラブライブの大会の開催によって、それは爆発的なものになった」

ダイヤ「A-RISEとμ'sによって、その人気は揺るぎないものになり、アキバドームで決勝が行われるまでになった」

ダイヤ「……そして、レベルの向上を生んだのですわ」

梨子「じゃあ……」

ダイヤ「そう。あなたたちが誰にも支持されなかったのも、わたくしたちが歌えなかったのも、仕方ないことなのです」

千歌「……歌えなかった?」

善子「どういうこと?」

ルビィ「……!」

ダイヤ「……2年前、既に浦の星には統合になるかも、という噂がありましてね――」

 

鞠莉『School idol?』

ダイヤ『そうですわ!学校を廃校の危機から救うには、それしかありませんの!』

果南『鞠莉スタイルいいし、一緒にやったら絶対注目浴びるって!』

鞠莉『Sorry, そういうの興味ないの……』

果南『……ふふん』

果南『ハグッ!』

鞠莉『なにするの!?』

果南『うんって言うまでハグする!』

鞠莉『放してよー!』

ダイヤ『ふふふっ』

果南『ダーメ!』

鞠莉『もー、やめて果南ー!』

果南『やめない!』

ダイヤ『わたくしも仲間に入れてください!』

 

 

鞠莉「――その何が悪かったの?町の人も学校の人も、School idolだと応援してくれたじゃない」

果南「……ライブも上手く行ったしね。でも――」

 

果南『東京?』

ダイヤ『そうですの!わたくしたちが呼ばれたんですのよ!』

鞠莉『ダイヤ、ずいぶん鼻息がvery hard……』

ダイヤ『っ!とにかくチャンスですわ!このイベントで有名になれば、ラブライブが一気に近づきますわ!』

かなまり『……ふふっ』

 

 

ダイヤ「――でも、歌えなかったのですわ」

回想

ダイヤ「他のグループのパフォーマンスのすごさと、巨大な会場の空気に圧倒され――」

ダイヤ「――何も歌えなかった。あなたたちは歌えただけ立派ですわ」

曜「じゃあ、反対してたのは……」

ダイヤ「……いつかこうなると思っていたから」

千歌「……」

ダイヤ『これは今までのスクールアイドルの努力と、町の人たちの善意があっての成功ですわ。勘違いしないように』

 

果南「外の人にも見てもらうとか、ラブライブに優勝して学校を救うとか――」

果南「――そんなのは絶対に無理なんだよ」

鞠莉「だから諦めろって言うの?」

果南「……私はそうすべきだと思う」

果南「……!」

鞠莉「……果南……」

果南「……」

鞠莉「……」

果南「――誰かが、傷つく前に(Before someone gets hurt)」

鞠莉「……」

鞠莉「……私は諦めない……必ず取り戻すの、あの時を!果南とダイヤと失ったあの時を……!」

鞠莉「私にとって……宝物だった、あの時を……」

 

 

美渡「はやくお風呂入っちゃいなよー!」

千歌「うん……」

美渡「梨子ちゃんも早く休んでね」

梨子「はい、ありがとうございます」

梨子「千歌ちゃん……」

千歌「?」

梨子「大丈夫?」

千歌「……うん。少し考えてみるね」

千歌「私がちゃんとしないと、みんな困っちゃうもんね」

梨子「……」

 

 

花丸「……ずら」

 

善子「今日もおしまいっ。……ふぅ……」

 

ルビィ「……ここで、こう……!ピギィ!?」

ルビィ「……」

 

 

ダイヤ「――ええ、話しましたわ。きちんと」

果南「そう……」

ダイヤ「よかったんですわよね、これで(This is what you wanted, right?)」

果南「……」

ダイヤ「……これで……(This is what you wanted...)」

 

 

曜「……」

曜『――千歌ちゃん。……やめる?』

千歌『……』

曜『やめる?スクールアイドル』

千歌『……』

曜『……』

曜「うぅ~ん…………」

 

 

梨子「……」

「身体、冷えるわよ?」

梨子「うん……」

梨子「……」

 

千歌「……」

千歌「ふぅ……」

千歌「……」μ'sのポスターに手を伸ばす

Saint Snowの回想、0

千歌「……!」

千歌「……」

 

 

梨子「――」

梨子「――?」

梨子「……」千歌の部屋を見つめる

梨子「……?」

千歌「……」

梨子「千歌、ちゃん……」

千歌「……」

千歌「……っ!」

 

梨子「――千歌ちゃーん!!千歌ちゃーん!!!!」

梨子「千歌ちゃーん!!!千歌ちゃーん!!!」

梨子「……!」

千歌「あれ?梨子ちゃん……」

梨子「はぁ……いったい何してるの?」

千歌「え?あぁ、うん……何か、見えないかなーって」

梨子「え?」

千歌「ほら、梨子ちゃん海の音を探して潜ってたでしょ?」

千歌「だから私も何か見えないかなーって」

梨子「……それで?」

千歌「うん!」

梨子「ふふっ……それで、見えたの?」

千歌「ううん、なにも」

梨子「なにも?」

千歌「うん。なにも見えなかった」

千歌「でもね、だから思った。続けなきゃって」

千歌「私、まだ何も見えてないんだって。先にあるものがなんなのか」

千歌「このまま続けても、0なのか、それとも1になるのか、10になるのか――」

千歌「――ここでやめたら全部わからないままだって」

梨子「千歌ちゃん……」

千歌「だから私は続けるよ、スクールアイドル。だってまだ0だもん」

千歌「……0だもん。0なんだよ……あれだけみんなで練習して、みんなで歌を作って、衣装も作ってPVも作って、頑張って頑張って、みんなにいい歌聴いてほしいって……」

千歌「……スクールアイドルとして、輝きたいって――」

千歌「……っ」

梨子「……」

千歌「っ……!」

梨子「……!?」

千歌「――なのに0だったんだよ!?悔しいじゃん!!!……っ!!」

梨子「あ……!」

千歌「差がすごいあるとか、昔とは違うとか、そんなのどうでもいい!!」

千歌「――悔しい!!やっぱり私、悔しいんだよ……!!」

千歌「うぅっ……!!」

千歌「……あ……!」

梨子「――よかった……!やっと素直になれたね……!」

千歌「……だって私が泣いたら、みんな落ち込むでしょ?今まで頑張ってきたのに、せっかくスクールアイドルやってくれたのに、悲しくなっちゃうでしょ……?」

千歌「……だから、だから……っ!」

梨子「……ふふっ、馬鹿ね……!みんな千歌ちゃんのためにスクールアイドルやってるんじゃないの……自分で決めたのよ。私も――」

千歌「――!?」

梨子「曜ちゃんも、ルビィちゃんも、花丸ちゃんも、もちろん善子ちゃんも」

曜「おーーい!!」

千歌「……でも……!」

梨子「だからいいの。千歌ちゃんは、感じたことを素直にぶつけて、声に出して」

曜「千歌ちゃん!」

ルビィ「えへへ」

花丸「ずら!」

善子「うわぁっ!?」

梨子「――みんなで一緒に歩こう。一緒に」

千歌「……ぅ、うぅっ、うわぁあん……!ああぁ、っ、あぁ……!」

梨子「今から、0を100にするのは無理だと思う」

梨子「――でも、もしかしたら1にすることはできるかも!」

梨子「私も知りたいの。それができるか」

千歌「……うん……!」

光が射す

「「「うわぁ……!!」」」

千歌「――うん!」

 

 

千歌「」集計結果を貼る

「「「」」」目を合わせる

練習へ

ホワイトボード

0

 

ED