松浦果南について

アニメの松浦果南さんの話。2期が始まる前にまとめておきたかったやつです。

 

 

この文章の要旨は以下の通りである。

・廃校阻止の成否は鞠莉の将来に一切関係しない

・9話までに果南が得たものは“鞠莉の想い”のみ

・アニメ全話を通して果南のスクールアイドルへの価値観に特に変化は生じていない

 

 

まず前提として、8話までにおよそ想定されていた、そして鞠莉が幻視していた「松浦果南」像を描写する。極力劇中からのみ考えられることを記述しているが、人により相違点が認められる場合がある。なお、『』内は劇中の台詞をそのまま引用したものである(以降同じ)。

 

「1年生の果南は学校を廃校から救うべく、ダイヤとともに鞠莉を誘いスクールアイドルAqoursを結成した。やがて東京のイベントに呼ばれるものの、果南は『他のグループのパフォーマンスのすごさと、巨大な会場の空気に圧倒され、何も歌えなかった』。そうしてスクールアイドルに挫折した果南は、Aqoursの活動を終わらせることに決めたのだった。

2年後、3年生になった果南は今もその傷が癒えないまま日々を過ごしている。スクールアイドルで廃校を阻止することは荒唐無稽な試みであると考えているため、千歌たちの活動も内心快く思ってはいない。本人の目の前でそのことを言うことはないが、2年前の経験からスクールアイドルに可能性を感じられなくなっている果南は、千歌たちがいつか折れてしまうことを心配し、8話で鞠莉に対し『外の人にも見てもらうとか、ラブライブに優勝して学校を救うとか、そんなのは絶対に無理なんだよ』と言い放つ。

まとめると、果南は過去の失敗をトラウマとしてスクールアイドルを避け続けている」

 

  • 1.9話で生じた「矛盾」と、それに対するひとつの解釈

しかし9話、果南は東京のイベントで空気に圧倒されて『歌えなかった』のではなく、敢えて『歌わなかった』のだとダイヤの口から語られた。その理由は、当時足を怪我していた鞠莉を庇うためだったという。

 

本当にそうだろうか。

 

前に書いたとおり、果南は8話で「スクールアイドルで学校を救うことは無理」という趣旨の発言を残している。その発想に至る過程には『歌えなかった』自身の挫折経験が密接に絡んでいるはずであり、だからこそ果南は過去の自分たちと同じ轍を踏んでしまった千歌たちをけしかけた鞠莉に対し、『ダイヤから聞いた、千歌たちのこと。どうするつもり?』と責める。2年前に同じことで失敗したでしょ、鞠莉もこうなるってわかっていたはずでしょ、と。

しかし、ダイヤの言うように果南が『歌わなかった』とするならば、彼女のこの言葉からは途端に説得力が消え失せてしまう。『歌えなかった』という事実が消えた瞬間、「千歌たちの道の先には絶望しかない、失敗して私たちみたいに傷つく前にやめさせるべきだった」という論理は破綻してしまった。なぜなら、果南は「そもそも挫折などしていなかった」のだから。つまり、『そんなのは絶対に無理なんだよ』と語るに足る根拠を果南は持っていなかったことになる。

 

8話と9話との間で発生した「矛盾」としてしばしば言及される事例は、果南に限って言えばそのほとんどがおそらくこの問題に関する話だと思われる。この辻褄を合わせるには、「会場の空気に圧倒されたことは、多少なりとも事実である」とするのが手っ取り早い。

つまり、東京に集ったスクールアイドルの圧倒的なパフォーマンスを見た果南は、これまで抱いていた自信を喪失するくらいには大きな衝撃を受けてしまった。そして自分たちの活動に疑問を持ち始めた果南は、鞠莉の怪我も鑑みて最初からパフォーマンスをすることを放棄した。この経験を踏まえ「私たちのレベルではスクールアイドルを続けても意味がない、学校を救うことは無理だ」という発想に行き着いた果南は、ダイヤとも相談して「このままでは自分たちのせいで、鞠莉から未来のいろんな可能性が奪われてしまうのではないか」という懸念を持つに至り、Aqoursの活動停止を決定した(9話冒頭)、という筋書きである。つまるところ、果南は『歌えなかった』し『歌わなかった』ということになる。

もしこのようであるなら、果南のスクールアイドルへの挫折経験はこれまでと変わらず保証されるため、8話の海軍桟橋での発言に(これまで想定されていたものと同じ)説得力を付与することができる。『誰かが傷つく前に』の「誰か」も、これまでの予想と同じように千歌たち新Aqoursの6人を指していると考えられる。ダイヤが9話で『わざと歌わなかった』と語ったのは、果南の不器用な思いやり、鞠莉を想う気持ちを鈍感な鞠莉に気付かせるためだとすれば説明は付くだろう。

 

一見筋の通った話のようにも思えるが、しかしこの解釈にも疑問が残る。

 

  • 2.生まれる新たな「矛盾」

1.で説明した果南の考えの底には「挫折」がしっかりと結びついている。勿論、8話までに匂わせてきた果南の「挫折=圧倒されて歌えなかった経験」の示唆を覆した9話の種明かしを「矛盾」と捉え、果南のこれまでの行動を説明するには「挫折」が必須要件であると前提して話を進め、整合性を取ろうとしてきたからだ。

 

しかし、これでは説明のつかない台詞が9話に存在する。弁天島頂上、『今は後輩もいる』と周りを巻き込んででも果南を奮起させようとした鞠莉に対し、果南が言い放った『だったら、千歌たちに任せればいい』という言葉だ。そんなにスクールアイドルに拘るのなら、千歌たちにスクールアイドル活動を任せればいい、千歌たちに学校を救わせればいい、と果南は言う。

 

もし果南が「挫折」を経験していた場合、こんなことを言えるはずがない。

 

なぜなら、既に8話で千歌たちの行く末を懸念し鞠莉を責めた果南は、『ラブライブに優勝して学校を救うとか、そんなのは絶対に無理』だと宣言しているからだ。「絶対に無理」な戦いに挑んで敗北した千歌たちの話を聞いているのにもかかわらず、その千歌たちにスクールアイドル活動を任せて廃校を阻止させておけばいいと言い捨てるのは些か考えづらい*1。それに、そもそも『誰かが傷つく前に』の「誰か」は千歌たち新Aqoursを指していたはずで、果南はこれ以上千歌たちに辛い思いをさせたくないがために鞠莉を非難しに来たはずであり、失敗することが目に見えている千歌たちのスクールアイドル活動を推奨するような素振りを見せるわけがないのだ。

 

  • 3.果南は本当に「挫折」していたのか

とはいえ、4話然り*29話然り*3、「挫折」を経てスクールアイドルに希望を見出せなくなっていたはずの果南は、時折千歌たちのスクールアイドル活動を応援しているような言動を取ることがあった。アニメ世界の外側にある考えを論拠とするのはセオリーに反するかもしれないが、ここで果南の声を担当する諏訪ななかさんの果南評を取り上げてみることにする。

諏訪「果南も、千歌たちがスクールアイドルをしているのを聞いてはいたけど、自分の過去のこともあって、なかなか表立って応援できなかったしね」

声優アニメディア 2016年11月号 p45)

勿論諏訪さん自身が一言一句同じ文言を語ったという保証はないが、「表立って応援できなかった」という表現は目を引くものがあるだろう。つまり果南は最初から千歌たちのスクールアイドル活動を応援するつもりでいたのか、と、しかも「表立って」とはどういうことか、誰かにその応援の意思を隠さなければならなかったのか、と。確かにそうであれば、千歌たち2年生の前でだけ『ま、がんばりなよ』『練習、がんばってね』と言葉を投げかけていた果南にも納得が行く。「過去の自分と同じ絶望に身を浸しかけている千歌たちを苦い思いで見つめる松浦果南」は、おそらく諏訪さんの中には存在していないように思える。

果南の「挫折」について考える上で印象的なのは12話、東京から帰る電車内で口にした『私は、学校は救いたい』という台詞だ。何度も引用した、8話で鞠莉に浴びせたネガティブな言葉と真っ向から対立する思いであることをまずは認識したい。つまり、少なくとも12話の果南は「スクールアイドルで廃校を阻止できる」ことに疑いを持っていないのである。ここで問題となるのは、新Aqours加入前後における果南の心境の変化の有無についてだろう。具体的には、「果南は“スクールアイドル活動に再び希望を見出した”から新Aqoursに加入したのか」ということだ。新Aqoursに加入してからの10話以降、他の8人と同様にAqoursの活動を楽しんでいるように見える果南だが、そもそもなぜ彼女はあれほど拒否し続けたスクールアイドル活動、そしてAqoursをやり直すことに決めたのだろうか。

 

  • 4.なぜ果南はスクールアイドルを終わりにしたのか

それを考える前に、時系列を追ってもう一度2年前の果南の心を洗い出すこととする。第一の問いとして、果南はなぜスクールアイドル活動、Aqoursを辞めることにしたのだろうか。当然、鞠莉の将来を案じたがためである。3年生の在り方を考える上で、10話で『あなたの立場も、あなたの気持ちも、そして、あなたの将来も。誰よりも考えている』と慈しみ深く語ったダイヤを偽とする命題は成り立たないだろう。まずはこの大前提を共有しておきたい。

第二の問いとして、果南はなぜ自分がスクールアイドルを辞めることが、鞠莉の留学に繋がる要因足り得ると考えたのか。それを突き止めるには、1年生時分の果南の視界をまずは把握する必要があるだろう。可能な限り作中から読み取れる範囲内で2年前の果南を以下に描写するが、違和感や齟齬が認められるかもしれないことは前に述べたとおりである。

 

「果南は廃校を阻止すべく、ダイヤと一緒に鞠莉を誘いスクールアイドルAqoursを始めた。その活動は順調に進み、Aqoursは東京のイベントに呼ばれるまでになった。しかしその一方で、鞠莉が『留学や転校の話があるたびに全部断っていた』ことに果南は気付いていた。『そんなとき』、果南は『もし向こうで卒業すれば大学の推薦だって』貰えるかもしれない留学の誘いすらも擲ち、『私、スクールアイドル始めたんです。学校を救うために』と意気揚々と話す鞠莉を見かけてしまう。それを決定打として、果南は「鞠莉は自分の将来のために留学すべきだ」という考えを固める。そして、東京のイベントに参加した果南は鞠莉の足の怪我を鑑み、何も歌わずにステージを棄権した。内浦に戻った果南は鞠莉に『行くべきだよ』と留学を勧めたのち、Aqoursを『終わりにしよう』と提案したのだった」

 

ここから窺い知れるのは、果南は心の中で「私がスクールアイドルに誘ったせいで、鞠莉から将来の可能性が失われてしまう」と決め込んでしまったのではないかということだ。

 

それまでは朧気な不安視、それこそ「鞠莉、留学とか転校とか断ってるけどいいのかな」という程度の些細な心配だったのかもしれない。それでも、職員室での会話を聞いてしまった果南は決定的に自覚することとなる。つまり、「鞠莉が留学を断っているのは自分のせいだ」ということにはっきり気付いてしまったのだ。もしかすると、閉ざされた内浦の淡島で、海と空と山とその他には何もない小さな島でずっと過ごしてきた果南にとって――ダイビングショップの実家を継ぎ、高校卒業後も内浦で暮らしていくことに何の疑問も抱いていなかったはずの果南にとって、“大学”という言葉はあまりにも自分から遠すぎたのかもしれない。とにかく、一気に現実感に襲われた果南はこの留学だけはなんとしても行かせなきゃならないと思い詰めてしまったのだろう。少なくとも、『ご両親も先方も是非っておっしゃってるの』と鞠莉の説得を図る先生の熱心な声音は、果南に「やっぱり、鞠莉は私とは違う世界に生きている人なんだ」と改めて認識させるに足る出来事であったと推測される。

 

ここで重要なのは、「スクールアイドル活動による廃校阻止の成否は、鞠莉の将来にまったく関係しない」ということである。

 

当然だ。浦の星女学院の廃校が取り消されたところで、鞠莉が留学に行く理由には一切ならないからである。むしろ学校が存続することで、鞠莉の貴重な高校生活がこの場所で終わりを迎えてしまいかねない。果南の願いは今や「廃校阻止」ではなく「鞠莉の将来が拓かれること」にある。学校を救うことよりもスクールアイドルで輝くことよりも、鞠莉が広い世界へ羽ばたき幸せな人生を過ごすことこそが、果南にとっての幸せだった。だからこそ、果南は『離れ離れになってもさ、私は鞠莉のこと、忘れないから』と来るべき別れを示唆していたのだ。

さて、そのために自分はどうすべきか。選択肢はただひとつ、鞠莉をこの地に留めている元凶たるスクールアイドルを終わらせ、Aqoursの活動を停止させるほかなかった。勧誘した当人の自分が自らスクールアイドルを拒否することで鞠莉をもそこから遠ざけ、それよりも遥かに有意義だと信じた留学へ行かせようとしたのである。長くなったが、これが第二の問いの答えとなる。『ダイヤも同じ意見』から窺えるように、事前にダイヤに根回しを行ってまで、自分とダイヤが脱退することはもはや不可避であると鞠莉に突きつけ、Aqoursというグループを完全に瓦解させ鞠莉の闘志の拠り所を失わせることが果南の目的だった。そうした果南の身を切る想いが功を奏し、浮かぬ表情の鞠莉は留学に向かうこととなった。

ここからは完全に想像でしかないが、果南は東京のイベントで鞠莉の足の怪我を考慮して歌わなかっただけではなく、あの大きなステージを「鞠莉に失敗を味わわせるための舞台」として使ったのかもしれない。つまり、パフォーマンスの強行による鞠莉の怪我の悪化を回避しつつも鞠莉の志を摘み取るために、大舞台を迎えた自分が自信を失ってしまったことを印象付けようとした可能性である。自分が最初に誘ったのだから、その本人が最初にやる気を無くしてしまえば鞠莉も諦めるだろうと考えたゆえだとすると、この行動も腑に落ちるのではないだろうか。2年前も現在も、果南は「私はスクールアイドルはやらない」と明言することで鞠莉からスクールアイドルを排除しようとしていることからも、その思考回路に不自然な点は見受けられないように思われる。

要点としては、果南は一貫して「鞠莉にスクールアイドルへの気持ちを捨てさせるために行動していた」ということである。また、『歌えなかった』という「挫折」はその目的を達成するための演出のひとつであった可能性がある。

 

  • 5.果南は「挫折」などしていなかった

時系列を戻す。そうした果南の想いに反し、鞠莉は留学先で卒業することなく課程を2年で終えて内浦に舞い戻ってきた。そして初めて2人のやり取りが描写された4話を経て8話、1.でも取り上げた海軍桟橋のシーンが訪れる。千歌たちの惨状を聞きつけた果南が鞠莉を呼び出し、同時刻の千歌たちの様子を挟みつつその判断を責める場面だ。

1.では、この会話に立脚して「果南は多少なりとも挫折を経験していたはずだ」という旨の主張を展開した。しかし、1.のロジックでは新しい矛盾点や相反する点が見出されるということは2.と3.でそれぞれ示したとおりである。そして4.では、当時の果南の胸中を追いながらスクールアイドルを終わりにするまでの果南の行動指針を示したが、その角度からもう一度8話の会話を捉え直してみる。

4.で述べたとおり、留学が明るい未来をもたらすと信じていた果南は、それを実現すべく鞠莉の戦意を喪失させることに腐心していた。職員室での会話を耳に挟んだ時点で、我の強い鞠莉に口先のみで留学を勧めたところで簡単に心変わりをするわけがないことを誰よりもわかっていた果南は*4、鞠莉が今スクールアイドルに傾けている情熱を黒く塗り潰すことで、鞠莉から留学に向かう以外の選択肢を奪い去った。そして3年生の現在、それでもなお折れることなく戻ってきてしまった鞠莉に対し、果南はかつて『もう続けても、意味がない』と語ったあのときを想起させる沈痛な表情を浮かべ、『そんなのは絶対に無理なんだよ』と、あのときと同じようにスクールアイドルを諦めるように迫ったのが、8話の海軍桟橋の一幕である。

 

ここにおいて、果南の「挫折」はまったく焦点ではない。

 

なぜなら、果南が自身のスクールアイドルへの絶望を露にしたのは、自分たちの過去を踏まえ「傷ついた自分を守りたかったから」というのが理由ではないからだ。果南がそうしたのは、輝かしい未来の可能性を放り投げてまで再び故郷の土を踏むことを選択した、鞠莉のスクールアイドルへの不屈の信心を今度こそ徹底的に刈り取ることで、「鞠莉の将来を取り戻したかったから」に他ならない。2年前も私たちは『歌えなかった』、千歌たちだって失敗した、だからやっぱりスクールアイドルなんて諦めるべきなんだ、と伝えたのは決してスクールアイドルに「挫折」した自分を正当化するための言葉ではなく、スクールアイドルに身を捧げ自ら未来を捨てようとしている鞠莉を救い出すための言葉だったのである*5

もしかすると、果南は鞠莉にもう一度留学に向かってほしかったのかもしれない。あるいは違う学校で、将来に向けた研鑽を積んでほしかったのかもしれない。明確なビジョンは不明だが、果南のそんな不器用な気持ちが窺えるのが9話、教室で鞠莉と取っ組み合いの喧嘩を繰り広げたときに口にした、『鞠莉には他にもやるべきことがたくさんあるでしょ』という言葉だ。鞠莉はこんな場所でスクールアイドルやってる暇なんかないでしょと、鞠莉の未来に広がる無限の可能性を信じる果南の本心がふいに零れた瞬間だった。

 

では挫折がカモフラージュであったとするならば、海軍桟橋を去る間際に果南が呟いた『誰かが、傷つく前に』とはいったい誰を指していたのだろうか。1.と2.では「千歌たち新Aqours」としてきたが、実はここには致命的な時系列のズレがある。どういうことかというと、果南はダイヤから千歌たちの結果を聞いたために鞠莉を呼びつけたわけだが、そのときには既に千歌たちは東京でのパフォーマンスを終え、その絶望的な結果とともに内浦に帰ってきている。要するに「千歌たちは既に傷ついている」わけで、「千歌たちが傷つく前に」という示唆は最初から成り立たないのである。となると、果南の視点においてまだ「傷を負っておらず」「これから傷つこうとしている」人は誰か、という疑問が生まれる。答えは簡単だ。

 

その人物は、スクールアイドルに拘泥し素晴らしい未来の可能性を再び失いそうになっている、鞠莉自身に他ならない。

 

スクールアイドルばかりに目を向けて将来のことを全然考えてない鞠莉は、いつかきっとこの先後悔する。私たちのせいで、鞠莉の人生が台無しになってしまうことだけは絶対に防がなきゃいけない。そうした想いがあった果南は2年を経たあの瞬間でさえも、かつてと同じように鞠莉の眼中からスクールアイドルを消し去ろうと必死だったのである。

 

以上をまとめる。まず、果南はスクールアイドルに挫折などしていなかった。果南は、壊れそうになっている鞠莉の未来を守るために、間違った道を歩もうとしている鞠莉を在るべき場所へと連れ戻すために、発起人たる自身の「挫折」を理由に鞠莉を縛り付けたままのスクールアイドルを拒み続けていたのである。果南の言動における「矛盾」と称した点は、これらを以って解消されたはずだ。

ここでようやく、3.で提起した問いに戻ることができる。「挫折」が取り払われた今、果南にとってスクールアイドルとはどういったものだったのだろうか。9話、鞠莉はこれまでと変わらず留学も転校もすることなく、新Aqoursに加入して活動していくことを選び取った。それなのに、果南はどうして鞠莉とともにAqoursを再開することに決めたのだろうか。

 

  • 6.果南がスクールアイドルをやり直すまで

9話の後半に至るまで、果南は鞠莉に対し真っ向からスクールアイドルを否定する姿勢を貫き続けた。それが覆されるのが、雨の降る中鞠莉に呼び出された先の部室の場面だ。感情を露にする鞠莉の言葉を聞いたあの瞬間、果南は「鞠莉ではなく自分を縛っていた」スクールアイドルの鎖から解放される。果南と鞠莉のすれ違いの要が明らかになったシーンである。

すれ違いの原因はこうだ。前項までに見てきたように、鞠莉が戻ってきてからというもの、果南はずっと「自分のせいで、鞠莉はスクールアイドルに固執している」と思い込んでいた。東京で敗北を喫した経験を通し、鞠莉をスクールアイドルから引き剥がそうとしたことが逆に鞠莉のハートに火を付け、ついには仇となってしまったというやるせなさに苛まれていたのだろう。これが果南の勘違いであり、だからこそ果南は3年生になった現在でもなお、それでもまだ間に合うのかもしれないならと、鞠莉の要求を意固地に拒絶していたのだった。

そんな果南だったが、『果南が歌えなかったんだよ?放っておけるはずない!』という鞠莉の激情を受け取ったことで、ようやく自分が大きな思い違いをしていたことに気付く。つまり、「鞠莉がスクールアイドルに拘っていたのは、負けが悔しかったからとか廃校阻止に燃えていたからとかじゃなくて、全部私のためだったんだ」ということを知ったのである。鞠莉はスクールアイドルのことしか頭にない、と思い込んでいた自分が誰よりもスクールアイドルに囚われていたことを自覚した果南は、「挫折」して傷ついた自分を助け出すために新しい成功の記憶で過去を上書きしようとしてくれていた、鞠莉の一途な想いをやっと正面から感じ取ることができた。だからこそあの言葉は鞠莉の“不器用な告白”足り得るわけであり、それゆえに果南はその気持ちに対し、幼い頃から鞠莉とずっとそうして心を交わしてきた“ハグ”で応えたのである。

まだカタチもわからない将来よりも、大切な人たちと過ごす今の方が大事だと思えたのかもしれない。「鞠莉には私とは違う未来がたくさんあるから」と、ひとりで勝手に置いてしまった遠い距離を飛び越え、自分を選びに来てくれた鞠莉の“告白”を抱きしめたことで、「本当は私も鞠莉と一緒にいたかった」という本心に気付いたのかもしれない。とにかく、もはやスクールアイドルを拒む必要が無くなった果南は、かつて夢半ばで眠りについた未熟DREAMERの衣装に袖を通し、Aqoursとしての復活を果たす。そうした訳のひとつには、誰よりもスクールアイドルが大好きだったダイヤを、自分のエゴで2年間も振り回し続けたことへの贖罪もあったのだろうと思われる。自分の独りよがりなわがままのせいで長い間“好き”を我慢し続けずっと無理してきたダイヤを、本音を言わず一緒に迷惑をかけてきた鞠莉と2人で“ハグ”してみせた、未熟DREAMERという歌そのものがその証左である。そしてなによりの理由は、もっと根源的でシンプルなものだろう。

 

結局のところ、果南もただ単純にスクールアイドルを諦めきれなかったのである。

 

 『私たち、もう3年生なんだよ』『卒業まで、あと1年もないんだよ』――まるで、時間があればやっていたとでも言うような台詞とともに勧誘を固辞する果南のその姿は、抗うことのできない絶対的な時間の流れを半ば自分に言い聞かせているようですらあり、少し逸れたその返答からはスクールアイドルへの隠しきれない未練が顔を覗かせている。そしてそれは、体育館で優雅に舞っていたダイヤを想起させるような、弁天島の頂上を舞台にひとり踊る9話の果南自身によって証明される。鞠莉の未来のために夢を諦めた果南と、その心持ちに付き従ったダイヤの大人びた愛情は、畢竟他でもない自分たちに満たされない空白を残すだけの不完全な想いだったのだ。

 

  • 7.果南から見た「スクールアイドル」

こうして鞠莉とのすれ違いが解決した果南は、晴れてAqoursとしての日々を取り戻す。すぐにそう出来たのは、無論「挫折」していたわけではないからだ。これまでの物語において、スクールアイドルとしての在り方に気持ちを動かされた梨子や善子、スクールアイドルの楽しさに徐々に惹かれていった花丸などとは違い、こと果南に関してはこうしたスクールアイドルそれ自体への価値観の劇的な変化は一切発生していない。果南は1話から終始スクールアイドルという概念そのものに負の感情を抱いていたというよりも、自分たちがスクールアイドルに誘い入れたせいで鞠莉をこの場所に縛り付けてしまった、というある種身の丈を超えた自責に陥っていたのであり、その苦しみから解放されたことをきっかけに、実際は心の奥底で渇望していたスクールアイドルの輝きにもう一度手を伸ばそうとするのはまったく不自然ではない。つまり、果南は「スクールアイドルにもう一度可能性を見出したから」新Aqoursへの加入を決定したのではなく、果南と同じ世界に居たいという“鞠莉の想い”を得たことで、ただ「スクールアイドルへの気持ちを抑える必要がなくなった」だけにすぎないのである。

このような果南の心情は12話、『私は、学校は救いたい』という言葉に表れている。ここまで見てきたように、果南はスクールアイドルの素晴らしさを誰かに説かれたというわけでもなく、失敗から立ち直り活動を楽しく感じられるようになったというわけでもないまま、さもそれが当然であるかのように「廃校阻止」を目標と宣言する。それは誰に言われるまでもなく、学校を救うことのできるスクールアイドルの力を初めから信じていた人の言葉だ。だから、9話の果南は鞠莉に隙を与えないようにスクールアイドルを否定しながらも、『だったら、千歌たちに任せればいい』と廃校阻止に奔走する幼馴染たちの活動を暗に肯定できたのだろう*6

 

気になるのはその後、『けど、Saint Snowの2人みたいには思えない。あの2人、なんか1年のころの私みたいで』という台詞だ。A-RISEやμ'sのすごさを知るためには『ただ勝つしかない、勝って追いついて同じ景色を見るしかない』と、同じ高みにまで上り詰めれば彼らの偉大さの由縁が理解できるに違いない、という愚直なほどにまっすぐで純粋な信念を9人の眼前に突きつけたSaint Snowに、果南はかつての自分を見たようだというのである。なぜ果南はそう思ったのだろうか。

 

簡潔に言えば、Saint Snowの考えに対し“視野狭窄”を感じたことが原因だと考えられる。輝きへの道はただひとつしかないと決め込んで、その道標を先人が残した足跡にすぎない“勝利”のみに託しているSaint Snowは、「鞠莉は留学に行くべきだ」と親友の生き方をただひとつに定め、誰もまだその輪郭すら知らない“未来”だけに価値を置いていた2年前の果南とよく似ているのかもしれない。

 

1年生の果南の“視野狭窄”は、重なり合う2つの要素から構成される。3人でスクールアイドルを始めたばかりの果南は、μ'sの伝説と栄光に倣い「自分たちも学校を救う」という夢のような物語に目を輝かせていたわけだが、その結果として鞠莉には大切な将来があるということを失念してしまっていた。この「友達のことを考えてあげられなかった」という後悔がまずひとつとして挙げられる。そしてもうひとつは、“そう思い込んでしまったこと”それ自体だ。つまり、果南は「鞠莉には有望な未来があるんだから、この学校でスクールアイドルなんかやってる場合じゃない」と、その後悔が変貌して生まれた自分勝手な考えを振りかざし、ダイヤの夢を潰えさせてまで鞠莉を役立ちこそすれ本人の望まぬ留学に送り出したことで、2年間の長きにわたって軋轢を残すことになってしまった自身の行動を顧みているのである。鞠莉の将来に目を向けてあげられなかったこと、鞠莉の将来「だけ」に目を向けてしまったこと、そのどちらも今の果南にとっては自分の“視野狭窄”が生んだ過ちであり、Saint Snowに対し同族嫌悪にも似た感情を抱いてしまった理由となり得る。

鞠莉とのすれ違いを解消した現在の果南の心には、端緒を辿れば自分がμ'sの輝きや「学校を救う自分」への憧れに囚われてしまったことに起因する空白の2年間への回顧から、何かひとつのことだけに目を向けて自分の周りの大切な人たちとその想いを見失ってはいけないという自戒がしっかりと根付いている。だから、果南は12話で『追いかけちゃダメなんだよ。μ'sも、ラブライブも、輝きも』と言った千歌に『なんとなくわかる』と同意を示すことができたのである。このことは、もしかすると13話で『オーバーワークは禁物ですわ!』『by果南!』と、息を合わせて果南のアドバイスを口にしたダイヤと鞠莉の場面にも活きているのかもしれない。誰かひとりではなく、“全体”をよく見ながらメンバーを陰から支えるしっかり者のお姉さんとしての果南の姿は、これまでの諍いとそれに対する自省の中で重ねた成長に依るところもあるのだろうと想像できるワンシーンだ。

 

  • 9.おわりに

最後に結論を記す。

・「廃校を阻止したとしても鞠莉の将来の可能性が失われることに変わりはない」と気づいた時点で、2年前の果南にとってスクールアイドルは『続けても意味がない』活動となった

・技術面で挫折したわけではない1年生の果南はただ鞠莉の将来を最優先事項に据えていただけであり、スクールアイドルそのものには最初から肯定的だった

・“鞠莉の想い”を受け入れたことをきっかけに、果南は自身に眠るスクールアイドルへの夢を取り戻した

 

 

*1:「売り言葉に買い言葉」という状況は考えられるかもしれないが、『私は戻ってきてほしくなかった』『もう、あなたの顔見たくないの』と悲しげに語る果南に激情の色は見出し難い。

*2:淡島神社階段にて『まあ、がんばりなよ』

*3:千歌の回想内にて『練習、がんばってね』

*4:9話冒頭、『前にも言ったでしょ、その話は断ったって』という鞠莉の台詞からも、果南の口頭による説得が試みられていたことが垣間見える。

*5:一貫して鞠莉にネガティブな感情をぶつけ続けた果南のこうした意図は、3.で引用した諏訪さんの目に映る果南像からも読み取れる。果南が千歌たちを「表立って」応援できなかったのは、スクールアイドルに肯定的な自分の姿を鞠莉に見られるわけには行かなかったからだ。もし、果南はまだスクールアイドルに未練があると鞠莉に思われてしまったら、鞠莉のために『歌えなかった』ふりをしてきた自分の努力が水の泡となってしまう。

*6:この場面は諏訪さんが仄めかす「千歌たちを応援していた果南」が垣間見えた瞬間だが、果南はこれまでもそうであったように積極的な応援の意思を示したわけではないことに留意されたい。その理由は勿論、自分がスクールアイドルに肯定的であることを鞠莉に勘付かれてはならないからだ。それ以外には、自分たちとは違い大きな足枷もなく輝きを目指す千歌たちを応援したい気持ちはあれど、おそらく千歌からスクールアイドルという言葉を聞くたびに『千歌には関係ない』鞠莉との過去を思い出したり、Aqoursを捨てた自分にはもう関わりのない世界の話だという意識が先行したりしていたために、今までの果南はスクールアイドルと一定の距離を置いて接していたかった、という背景も考えられる。

13話写経

果南「前回の」

「「「ラブライブ!サンシャイン!!」」」

千歌『Aqours!』

果南「ラブライブの予備予選を突破した私たち」

千歌『0……』

曜『東京?』

果南「μ'sがどうやって学校を救ったかを知るために、東京へ向かった」

千歌『μ'sのすごいところって、きっと何もないところを、何もない場所を、思いっきり走ったことだと思う』

千歌『みんなの夢を、叶えるために』

果南「こうして私たちは、ラブライブの地区予選に挑むことになった!」

 

 

千歌「はじめまして!私たちは浦の星女学院スクールアイドル――」

「「「Aqoursです!」」」

千歌「今日は、みなさんに伝えたいことがあります」

千歌「それは……!」

 

OP

 

御用の方は屋上にまでずら♡ 国木田

果南「1, 2, 3, 4! 1, 2, 3, 4!」

果南「今のところの移動は、もう少し速く!」

ルビィ「はい!」

果南「善子ちゃんは……」

善子「ヨハネ!」

果南「ふふっ、さらに気持ち急いで!」

善子「承知!(Affirmative!) 空間移動使います!」

 

果南「はい、じゃあ休憩しよ」

「「「ふぅうぅ……」」」

花丸「暑すぎずら~……」

ルビィ「今日も真夏日だって~……」

曜「はい!」

ルビマル「「?」」

曜「水分補給は欠かさない約束だよ?」

ルビィ「ありがとう……!」

花丸「ずら!」

果南「ふぅ、今日もいい天気!」

ダイヤ「休まなくていいんですの?日向にいると体力持っていかれますわよ」

鞠莉「果南はシャイニーの子だからね!(But Kanan was born shining!)」

善子「ふぃ~……」

「「「?」」」

ダイヤ「黒い服はやめた方がいいとあれほど……」

善子「黒は堕天使のアイデンティティ……黒がなくては、生きていけない……」

ダイヤ「死にそうですが……?」

梨子「千歌ちゃーん!」

千歌「ほっ、と」

曜「ナイスキャッチ!」

梨子「飲んでー!」

千歌「ありがとう!」

千歌「えへっ、私、夏好きだな。なんか熱くなれる」

梨子「ふふっ」

曜「私も!」

千歌「よーし!そろそろ再開しようか!」

ダイヤ「ぶっぶーーー!!」

千歌「なに!?」

ダイヤ「オーバーワークは禁物ですわ!」

鞠莉「by果南!」

果南「ふふっ」

鞠莉「みんなのこと考えてね?」

千歌「そっか、これから一番暑い時間だもんね」

ダイヤ「ラブライブの地区予選も迫って焦る気持ちもわかりますが、休むのもトレーニングのうちですわよ」

ルビィ「さすがお姉ちゃん!」

果南「でもその前に」

千歌「?」

果南「みんな100円出して!」

善子「やってきたのですね……本日のアルティメットラグナロク……!」

善子「クック……クク……未来が、時が――見える!」

果南「じゃあ行くよ?」

花丸「じゃーんけーん……」

 

 

善子「なんでいつも負けるのかしら……」

「1158円です」

善子「誰よ!高いアイス頼んだの!」

 

 

花丸「ずら~……」

ルビィ「ピギィ……」

善子「よはぁ……」

梨子「全然こっちに風来ないんだけど……」

曜「教室に冷房でもついてたらな~……」

梨子「統合の話が出てる学校なのに、つくわけないでしょう?」

千歌「だよね~……」

千歌「そうだ、学校説明会の参加者って今どうなってるの?」

鞠莉「よっ」

ダイヤ「鞠莉さん!はしたないですわよ」

鞠莉「今のところ……」

千歌「今のところ……?」

鞠莉「今のところ…………」

千歌「今のところ…………!」

鞠莉「Zero~♪」

千歌「はぁ……」

千歌「そんなにこの学校魅力ないかな……少しくらい来てくれてもいいのに……」

曜「……」

ガラガラ

曜「?」

千歌「?」

「あれ?」

千歌「むっちゃんたち、どうしたの?」

「うん、図書室に本返しに……」

「もしかして、今日も練習?」

千歌「もうすぐ地区予選だし」

「この暑さだよー?」

千歌「そうだけど、毎日だから慣れちゃった」

「毎日?」

「夏休み……」

「毎日練習してたの?」

千歌「うん!」

果南「そろそろ始めるよー!」

千歌「あ、うん!じゃあね!」

「がんばってね(Good luck)……」

「練習、毎日やってたんだ……」

「千歌たちって、学校存続させるためにやってるんだよね」

「うん……」

「でもすごくキラキラしてて……!」

「まぶしいね!」

「うん!」

 

 

千歌「ふぅ~……」

千歌「今日もめいっぱいだったね~!」

曜「でも、日に日によくなってる気がする!」

ダイヤ「それで?歌の方はどうですの?」

梨子「花丸ちゃんと歌詞を詰めてから(Hanamaru and I are going to iron out the lyrics,)、果南ちゃんとステップ決めるところ(and then Kanan will decide on the steps)」

鞠莉「聴いてる人にハートに、シャイニーできるといいんだけど」

果南「ま、とにかく今は疲れを取ってまた明日に備えよ?……っとぅ!」

ダイヤ「また服のままで!」

善子「だてーん!」

鞠莉「シャイニー!」

ダイヤ「はしたないですわよ!」

果南「だって気持ちいいんだもーん!」

千歌「あ……」

「「「?」」」

夕空と飛行機雲

 

「あ、いたいた!」

「千歌ー!」

千歌「あれ、むっちゃん?帰ったんじゃなかったの?」

「うん、でも……」

「なんか、ちょっと気になっちゃって」

千歌「え?」

「千歌たちさ、夏休み中ずっとラブライブに向けて練習してたんでしょ?」

「そんなにスクールアイドルって面白いのかなって」

「私たちも、一緒にスクールアイドルになれたりするのかな。……学校を救うために」

「実は他にも、もっと自分たちにも何かできるんじゃないかって考えてる子、結構いるみたいで」

ダイヤ「そうなのですか?」

「はい」

「統廃合の話、あったでしょ?みんな最初は、仕方ないって思ってたみたいなんだけど……」

「やっぱり、みんなこの学校大好きなんだよね!」

「だから、学校を救ったりキラキラしたり輝きたいのは、千歌たちだけじゃない。私たちも一緒に、何かできることあるんじゃないかって」

千歌「…………!!」

曜「千歌ちゃん?」

「どうかな?」

千歌「……やろう!!みんな一緒に!!」

「ほんと!?」

千歌「うん!!」

「やったー!!」

曜「なんかわくわくしてくるね!」

千歌「楽しみだな、ラブライブ!

梨子「……」

 

 

梨子「歌?」

千歌「うん!ダンスは無理かもだけど、一緒にステージで歌うとかなら間に合うんじゃないかなって」

梨子「できるの?」

千歌「うん。みんなが歌って、上手く行って、それで有名になって、たくさん入学希望者が来れば学校も存続できるし」

梨子「千歌ちゃん、でもね――」

千歌「それと!」

千歌「……今は0を1にしたい」

梨子「……」

千歌「今日、むっちゃんたちと話してて思ったの、なんで入学希望者が0なんだろうって。だってここにいる人は、みんなここが大好きなんだよ?町も学校も人も、大好きなんだよ?それって、ここが素敵な場所ってことでしょ?」

千歌「なのに0っていうことは、それが伝わってないってことだよね……」

千歌「ラブライブがどうでもいいってわけじゃないけど、ここが素敵な場所だってきちんと伝えたい。そして、0を1にしたい!」

梨子「うん……ん?」

梨子「……ち、千歌ちゃん……ううしろ……」

千歌「?」

梨子「おば、お……おあ、お、おばけ……!」

千歌「わっ!おかあさん!」

梨子「お母さん!?そ、その人が……?」

千歌ママ「そうです!私が高海千歌の母です!あなたが梨子ちゃんね?」

梨子「え?い、いや、初めまして!こんばんは……」

千歌ママ「初めまして、こんばんは!美人だね~」

梨子「え?いやーそれほどでも……あるかなぁ……」

千歌「……」

梨子「はっ!?」

千歌「ていうかどうしてここにいるの?東京だったんじゃないの?」

千歌ママ「そうだけど、なんか千歌がスクールアイドルとかいうのやっているから一度見に来てって、志満から連絡があって」

千歌「また余計なことを……とにかく今梨子ちゃんと大事な話してるんだから、あっち行ってて!」

千歌ママ「ふふっ、はいはい、わかったわかった」

千歌ママ「……あ、一個だけいい?」

千歌「なに?」

千歌ママ「今度は……やめない?」

千歌「……うん、やめないよ」

千歌ママ「ふふっ」

梨子「……いいお母さんね」

千歌「え、そうかなあ?とにかく、ラブライブ目指して!」

梨子「うん!」

 

Bパート

 

花丸「だぎゃあああ!!!」

ルビィ「だぎゃあ?」

善子「……これが来るべき、聖戦の地……!」

 

千歌「待ち合わせ場所は、っと……」

曜「今来たのが……こっちだから……」

 

「「「はぁ~……」」」

曜「むっちゃんたち、来てないね」

千歌「たぶんここで合ってるはずなんだけど……」

梨子「……」

「千歌ー!」

梨子「!」

「あっ、いた!」

千歌「ここだよー!」

梨子「……」

「ごめんごめん、ちょっと道に迷っちゃって……」

曜「他の子は?」

「うん、それなんだけど……実は……」

千歌「……そっか」

曜「しょうがないよ、夏休みなんだし」

「私たち、何度も言ったんだよ?」

「でも、どうしても――」

千歌「え?」

「みんなー!準備はいいー?」

「「「いえーい!!」」」

「「「全員で、参加するって!!!」」」

ルビィ「ピギッ」

千歌「みんな……!」

「びっくりした?」

千歌「うん!これで、全員でステージで歌ったら絶対キラキラする!学校の魅力も伝わるよ!」

梨子「ごめんなさい!」

千歌「ん?梨子ちゃん?」

梨子「……」

 

梨子「実は――調べたら、歌えるのは事前にエントリーしたメンバーに限るって決まりがあるの」

千歌「そんな……」

1年生「……」

梨子「それに、ステージに近付いたりするのもダメみたいで……」

3年生「……」

梨子「もっと早く言えばよかったんだけど……」

千歌「ごめんね、むっちゃん……」

「いいのいいの、いきなり言い出した私たちも悪いし」

「じゃあ私たちは、客席から宇宙一の応援(stellar support)してみせるから!」

「浦女魂、見せてあげるよ!」

「だから、宇宙一の歌(a stellar song)、聴かせてね?」

 

 

ルビィ「実はまだ、信じられないんだ」

花丸「おらもずら……」

ルビィ「今、こうしてここにいられることが……」

花丸「夢みたいずら……」

善子「何今更言ってるの。今こそがリアル、リアルこそ正義」

ルビマル「「……」」

善子「……ありがとね」

ルビマル「「!」」

花丸「ずら!」

善子「さ、あとはスクールアイドルとなって、ステージで堕天するだけ!」

ルビィ「うん!」

花丸「黄昏の理解者ずら(You understand my longing, zura)」

善子「行くわよ!堕天使ヨハネとリトルデーモン!ラブライブにー、降臨!」

 

果南「高校3年になってから、こんなことになるなんてね」

ダイヤ「まったくですわ。誰かさんがしつこいおかげですわね」

果南「だね。感謝してる、鞠莉」

鞠莉「感謝するのは私だよ。果南とダイヤがいたからスクールアイドルになって、ずっと2人が待っててくれたから諦めずに来られたの」

果南「あのとき置いてきたものを、もう一度取り戻そう!」

ダイヤ「もちろんですわ」

 

梨子「不思議だな。内浦に引っ越してきたときは、こんな未来が来るなんて思ってもみなかった」

曜「千歌ちゃんがいたからだね」

千歌「それだけじゃないよ。ラブライブがあったから、μ'sがいたから、スクールアイドルがいたから、曜ちゃんと梨子ちゃんがいたから!」

ようりこ「……!」

千歌「これからも、いろんなことがあると思う。うれしいことばかりじゃなくて、つらくて、大変なことだっていっぱいあると思う」

千歌「でも私、それを楽しみたい!」

千歌「全部を楽しんで、みんなと進んでいきたい!それがきっと、輝くってことだと思う!」

ダイヤ「そうね」

鞠莉「9人もいるし」

千歌「……9人だけじゃない、行くよ!」

 

 

千歌「今日はみなさんに、伝えたいことがあります!」

千歌「それは、私たちの学校のこと、町のことです!」

 

千歌「Aqoursが生まれたのは、海が広がり、太陽が輝く、内浦という町です」

千歌「小さくて人もいないけど、海にはたくさんの魚がいて、いっっぱいみかんがとれて!……あたたかな人であふれる町」

千歌「その町にある、小さな小さな学校。今ここにいるのが、全校生徒!」

千歌「そこで私たちは、スクールアイドルを始めました」

曜「アキバで見たμ'sのようになりたい、同じように輝きたい。でも……」

ようちか「「作曲!?」」

ダイヤ「そう、作曲ができなければ――ラブライブには、出られません!」

ようちか「「ハードル高っ!」」

曜「そんなとき、作曲のできる少女、梨子ちゃんが転校してきたのです」

千歌「奇跡だよ!」

梨子「ごめんなさい!」

ようちか「「がーん!!」」

千歌「東京から来た梨子ちゃんは、最初はスクールアイドルに興味がなかった。東京でつらいことがあったから」

ようちか「「でも……!」」

梨子「輝きたい!」

曜「その想いは、梨子ちゃんの中にもあった」

曜「そして……」

花丸「お、おら、私、運動苦手ずら、だし……」

ルビィ「ルビィ、スクールアイドル好きだけど、人見知りだから……」

善子「堕天使ヨハネ、ここに降臨!私の羽根を広げられる場所は、どこ……?」

千歌「こうして6人になった私たちは、歌を歌いました。町のみんなと一緒に」

梨子「そんなとき、私たちは東京のイベントに出ることになった」

花丸「未来ずら~!」

ルビィ「人がいっぱい……!」

善子「ここが魔都、東京……!」

曜「ここで歌うんだね!がんばろう!」

千歌「でも、結果は――最下位」

千歌「私たちを応援してくれた人は、0」

梨子「0」

曜「0」

善子「0」

ルビィ「0」

花丸「0」

千歌「0……」

ルビィ「スクールアイドルは、厳しい世界」

花丸「そんな簡単ではなかったのです」

曜「……やめる?」

千歌「……」

曜「千歌ちゃん、やめる?」

千歌「……くやしい、くやしいんだよ……!」

千歌「私、やっぱりくやしいんだよ……!」

千歌「0だったんだよ!?くやしいじゃん!!」

梨子「そのとき、私たちに目標ができました(That's when we found our goal)」

曜「0から1へ」

花丸「0のままで、終わりたくない」

善子「とにかく前に進もう」

ルビィ「目の前の0を、1にしよう」

千歌「そう、心に決めて……!」

梨子「そんなとき、新たな仲間が現れたの!」

ダイヤ「生徒会長の黒澤ダイヤですわ!」

果南「スクールアイドルやるんだって?」

鞠莉「Hello, everybody!」

曜「以前、スクールアイドルだった3人はもう一度手を繋いで、私たちは9人になりました」

千歌「こうして、ラブライブ予備予選に出た私たち。結果は見事突破!でも……」

ルビィ「入学希望者は0……」

善子「忌まわしき0が……」

花丸「また私たちに突きつけられたのです」

千歌「どーして0なのーー!!?」

果南「私たちは考えました」

鞠莉「どうしたら前に進めるか」

ダイヤ「どうしたら、0を1にできるのか」

千歌「そして、決めました」

曜「私たちは」

梨子「この町と」

花丸「この学校と」

ルビィ「この仲間と一緒に」

善子「私たちだけの道を歩こうと」

果南「起きることすべてを受け止めて」

ダイヤ「すべてを楽しもうと」

鞠莉「それが……輝くことだから!」

千歌「輝くって、楽しむこと(To shine is to enjoy life)」

千歌「あの日、0だったものを1にするために」

千歌「さあ、行くよ!」

千歌「1!」

曜「2!」

梨子「3!」

花丸「4!」

ルビィ「5!」

善子「6!」

ダイヤ「7!」

果南「8!」

鞠莉「9!」

「「「10!!!」」」

千歌「……!」

千歌「今、全力で輝こう!」

千歌「0から1へ!」

千歌「Aqours!」

「「「サンシャイン!!!」」」

 

MIRAI TICKET

 

千歌「みんなー!!一緒にー!!」

千歌「――輝こう!!」

 

 

 

千歌(私たちが0から作り上げたものってなんだろう)

千歌(形のないものを追いかけて、迷って、怖くて、泣いて……そんな0から逃げ出したいって)

千歌(でも、何もないはずなのに、いつも心に灯る光)

千歌(この9人でしかできないことが、必ずあるって信じさせてくれる光(And our belief that all nine of us could do something special was fed by that shining light))

千歌(私たちAqoursは、そこから生まれたんだ!)

千歌(叶えてみせるよ、私たちの物語を!)

千歌(この、輝きで!)

千歌「君のこころは――!」

「「「輝いてるかい?」」」

12話写経

善子「前回の」

「「「ラブライブ!サンシャイン!!」」」

善子「予備予選を前に、梨子の代わりに千歌と闇の契約を結んだ曜」

曜『ごめん!』

善子「千歌との間に漆黒の鼓動を打つ悩みを抱えていた」

曜『私と2人は、嫌だったのかなあって……』

善子「そして、あるナハト」

千歌『合わせるんじゃなくて、1から作り直した方がいい!』

曜『私、バカだ……!バカヨウだ……!!』

善子「こうして、ついに神々の黄昏、ラブライブに堕天したのです」

 

 

予備予選合格者発表まで間もなく!

「「「……」」」

ルビィ「まだ?」

ダイヤ「まったく、どれだけ待たせるんですの!?」

果南「あぁ~っ、こういうの苦手!」

千歌「落ち着いて……」

果南「ちょっと走ってくる」

千歌「あ、結果出たら知らせるね~!」

果南「いいよ」

千歌「じゃあ知らなくていいの?」

果南「……!」

果南「むぅ~っ……!」

鞠莉「あんまり食べると太るよ?」

花丸「食べてないと落ち着かないずら!」

善子「リトルデーモンの皆さん……」

まりまる「「?」」

善子「この堕天使ヨハネに、魔力を、霊力を――すべての、力を!」

トラック「」ブーン

ろうそく「」フッ

善子「消すなーーーっ!!!」

曜「来た!」

よしルビ「「!」」

曜「ラブライブ、予備予選合格者……」

千歌「うぅ……緊張する……!」

ダイヤ「Aqoursのアですわよ!ア!ア!ア!」

曜「イーズーエクスプレス……」

「「「……」」」

果南「うそ!?」

千歌「落ちた……」

ダイヤ「そんなぁ~!?」

曜「あ、エントリー番号順だった」

「「「」」」コテッ

千歌「よーちゃーん!」

曜「ごめんごめん!えーっと……」

曜「イーズーエクスプレス、グリーンティーズ、ミーナーナ、Aqours……」

千歌「Aqours!」

曜「あった!!」

ルビィ「ピギャァー!」

花丸「ばんざいずら~!」

ダイヤ「やりましたわー!」

鞠莉「……予備予選……突破……!」

鞠莉「Oh my god……Oh my god……Oh my goooooooooooood!!!!!」

 

OP

 

花丸「」モッモッ

果南「さあ、今朝捕れたばかりの魚だよ!みんな食べてね!」

千歌「なんで、お祝いにお刺身?」

果南「だって、干物じゃお祝いっぽくないかなって」

千歌「それ以外にもあるでしょ、夏みかんとか!」

花丸「パンとか」

果南「じゃあ刺身でもいいでしょ?」

ルビィ「うわぁっ、あっ、ピギィ!っあ、見てください!」

千歌「なに?」

ルビィ「PVの再生回数が!」

158,372回

千歌「私たちのPVが!?」

曜「すごい再生数!」

ルビィ「それだけじゃなくて、コメントもたくさんついていて!」

花丸『かわいい』

ダイヤ『全国、出てくるかもね』

果南『これは、ダークホース……』

善子「暗黒面?」

曜「よかった、今度は0じゃなくて」

善子「そりゃそうでしょ、予選突破したんだから」

rrr

ようよし「「?」」

千歌「?」

千歌「梨子ちゃんだ!」

 

梨子「予選突破、おめでとう!」

千歌『ピアノの方は?』

梨子「うん、ちゃんと弾けたよ」

梨子「探していた曲が、弾けた気がする」

千歌「よかったね……!」

曜「じゃあ、次は9人で歌おうよ!全員揃って!ラブライブに!」

千歌「曜ちゃん……!」

梨子「そうね……!」シュシュを見つめる

梨子『――9人で!』

「「「」」」ニコ

(善子だけ真顔?)

ダイヤ「そして、ラブライブで有名になって、浦女を存続させるのですわ!」

ルビィ「がんばルビィ!」

果南「これは学校説明会も期待できそうだね!」

千歌「説明会?」

鞠莉「うん、Septemberに行うことにしたの」

ダイヤ「きっと、今回の予選で学校の名前もかなり知れ渡ったはず」

鞠莉「そうね、PVの閲覧数からすると、説明会に参加希望の生徒の数も……」

鞠莉「…………」

「「「?」」」

鞠莉「……Zero」

ダイヤ「え?」

鞠莉「Zero、だね……」

ルビィ「そんな……!」

ダイヤ「……嘘、嘘でしょう!?」

千歌「ゼロ……?」

曜「1人もいないってこと……?」

千歌「……」

 

 

千歌「はぁ……」

千歌「またゼロかぁ……」

曜「入学希望となると、別なのかなあ……」

千歌「だって、あれだけ再生されてるんだよ?予備予選終わった帰りだって――」

 

『あの!Aqoursの果南さんですよね!』

果南『え?』

『やっぱりそうだ!サ、サインください!』

果南『ぅえ?私でいいの?ほんとに私で合ってる?』

千歌『?』

『じゃあ行きますよー!全速前進ー!』

曜『よ、よーそろー……』

ルビィ『ピギィィィィィィ!』

『握手してくださーい!』

ダイヤ『……お待ちなさい』

ダイヤ『代わりに、私が写真を撮らせてあげますわ』

『ど、どちらさまですか?』

ダイヤ『……💢』

ダイヤ『わ~た~く~し~は~!!!!!』

 

千歌「――って感じで大人気だったのに……」

曜「ダイヤさんのくだりは要らなかった気がする……」

千歌「これで生徒が全然増えなかったら、どうすればいいんだろう……」

曜「μ'sは、この時期にはもう廃校を阻止してたんだよね」

千歌「……え?そうだっけ?」

曜「うん。学校存続が、ほぼ決まってたらしいよ」

千歌「差、あるなぁ……」

果南「仕方ないんじゃないかな」

千歌「?」

果南「ここでスクールアイドルをやるってことは、それほど大変ってこと」

千歌「それはそうだけど……」

果南「うちだって、今日は予約ゼロ」

(ダイマリ生徒会室で作業)

果南「東京みたいに、ほっといても人が集まるところじゃないんだよ、ここは」

千歌「……」

千歌「……でも、それを言い訳にしちゃダメだと思う」

果南「千歌……」

千歌「……!」

果南「?」

千歌「それがわかった上で、私たちはスクールアイドルやってるんだもん!」

千歌「はむはむむむ……!!」

曜「千歌ちゃん、一度に全部食べると……ん?千歌ちゃん!?」

千歌「1人で、もう少し考えてみるー!」

千歌「うあぅっ……!」

ようかな「「?」」

千歌「……ううぅぅ、きた……!」

ようかな「「あははは……」」

 

 

千歌「……」

千歌「……もう学校を救っていたのか……」

千歌(あのときは、自分とそんなに変わらないって、普通の人たちががんばってキラキラ輝いているって、だからできるんじゃないかって思ったんだけど)

千歌「何が違うんだろう……」

千歌「リーダーの差、かなあ」

美渡「なーに1人でぶつぶつ言ってるの?」

千歌「はぁ、どうすればいいんだろう……」

美渡「千歌?千歌さーん」

千歌「!もう考えててもしょうがない!行ってみるか!」

美渡「どこに?」

千歌「?」

千歌「なんで美渡姉がいるの?」

美渡「……あんた、今気づいたの?」

 

曜「東京?」

千歌『うん!見つけたいんだ、μ'sと私たちのどこが違うのか』

ダイヤ「……」

千歌『μ'sがどうして、音ノ木坂を救えたのか』

鞠莉「……」

千歌『何がすごかったのか。それをこの目で見て――』

花丸「……」

千歌『みんなで考えたいの!』

果南「いいんじゃない?」

善子「つまり、再びあの魔都に降り立つということね……」

梨子「私は、1日帰るの伸ばせばいいけど……」

千歌『けど?』

梨子「ううん!じゃあ詳しく決まったら、また教えてね」

梨子「うっ……」

梨子「……片付けなくちゃ」

 

Bパート

 

千歌「うわぁ~!にぎやかだね~!」

ダイヤ「みなさん、心をしっかり!負けてはなりませんわ、東京に呑まれないよう!」

千歌「大丈夫だよー!襲ってきたりしないからー!」

ダイヤ「あなたはわかっていないのですわ!東京の恐ろしさを、このコンクリート――」

千歌「なんであんなに敵対視してるの?」

ルビィ「お姉ちゃん、小さい頃東京で迷子になったことがあるらしくて――」

 

ダイヤ『ごちゃごちゃ……ごちゃごちゃ……ごちゃごちゃ……!』

ダイヤ『ピギィィィィイイイイィ!』

 

千歌「トラウシだね……」

善子「トラウマね」

曜「そういえば、梨子ちゃんは?」

千歌「ここで待ち合わせだよ?」

梨子「……ふっ!ふっ!ぐぐぐ……!」

千歌「梨子ちゃん?」

梨子「!?!?わ、千歌ちゃん……!みんなも」

千歌「何入れてるのー?」

梨子「え、ええと……お土産とか、お土産とか、お土産とか……」

千歌「わーー!!お土産!?」

千歌「なに?」

梨子「わ゛ー゛ー゛っ゛!゛!゛」

千歌「わぁっ!見えないよ、見えないよ梨子ちゃん、ちょ」

梨子「なんでもないの、なんでもないのよ~!」

 

梨子「よい、しょ。さあ、じゃあ行きましょうか」

曜「とは言っても、まずどこに行く?」

鞠莉「Tower?Tree?Hills?」

ダイヤ「遊びに来たんじゃありませんわ」

千歌「そうだよー、まずは神社!」

ルビィ「また?」

千歌「うん!実はね、ある人に話聞きたくて、すっごい調べたんだ!」

千歌「そしたら会ってくれるって!」

花丸「ある人?誰ずら?」

千歌「それは会ってのお楽しみ!でも話を聞くにはうってつけのすごい人だよ!」

ルビィ「東京……神社……」

ダイヤ「すごい人……まさか……!」

ダイルビ「「まさか……!まさか!まさか!まさかー!!?」」

 

聖良「お久しぶりです」

千歌「お久しぶり」

ダイルビ「「なぁんだ~……」」

鞠莉「誰だと思ってたの?」

 

千歌「わぁ~……なんか、すごいところですね」

梨子「予備予選突破、おめでとうございます」

鞠莉「Coolなパフォーマンスだったね!」

聖良「褒めてくれなくて結構ですよ」

梨子「?」

聖良「再生数は、あなたたちの方が上なんだし」

曜「いえいえー」

ルビィ「それほどでもー」

聖良「でも、決勝では勝ちますけどね」

千歌「!……」

聖良「私と理亞は、A-RISEを見てスクールアイドルを始めようと思いました」

聖良「だから、私たちも考えたことがあります。A-RISEやμ'sの何がすごいのか、何が違うのか」

千歌「答えは、出ました?」

聖良「いいえ。ただ、勝つしかない、勝って追いついて同じ景色を見るしかないのかもって」

千歌「……勝ちたいですか?」

Saint Snow「え?」

千歌「ラブライブ、勝ちたいですか?」

理亞「……姉様、この子バカ?」

聖良「勝ちたくなければ、なぜラブライブに出るのです?」

千歌「それは……」

聖良「μ'sやA-RISEは、なぜラブライブに出場したのです?」

千歌「……」

聖良「そろそろ、今年の決勝大会が発表になります」

千歌「……」

聖良「見に行きませんか?ここで発表になるのが、恒例になってるの」

 

千歌「……!」

梨子「アキバドーム……!」

果南「本当に、あの会場でやるんだ……!」

千歌「……ちょっと、想像できないな……」

梨子「?」

花丸・ルビィ・ダイヤ・鞠莉「「「……」」」

梨子「……」

善子・曜・果南「「「……」」」

梨子「……」

梨子「……ねえ!音ノ木坂、行ってみない?」

「「「え?」」」

梨子「ここから近いし、前私がわがまま言ったせいで、行けなかったから」

千歌「……いいの?」

梨子「うん!ピアノ、ちゃんとできたからかな」

梨子「今は、ちょっと行ってみたい。自分がどんな気持ちになるか、確かめてみたいの。みんなはどう?」

曜「賛成!」

果南「いいんじゃない?見れば、何か思うことがあるかもしれないし」

ルビィ「音ノ木坂?」

ダイヤ「μ'sの?」

ダイルビ「「母校ー!?」」

 

曜「この上にあるの?」

ルビィ「うぅ、なんか緊張する……どうしよう、μ'sの人がいたりしたら!」

ダイヤ「へ、平気ですわ!そのときは、ササササインと、写真と、握手……!」

花丸「単なるファンずら」

千歌「……!」

梨子「あ、千歌ちゃん!」

曜?「待って!」

善子「抜け駆けはずるい~!」

花丸「ずら~!」

 

千歌「はっ、はっ、はっ、はっ……」

千歌「はぁ、はぁ……」

千歌「……ここが、μ'sのいた……!」

ダイヤ「この学校を、守った……!」

鞠莉「ラブライブに出て……!」

果南「奇跡を成し遂げた……!」

「――あの」

「「「?」」」

「なにか?」

善子「私の姿を検知してる……!?」

花丸「やめるずら」

曜「すみません、ちょっと見学してただけで……」

「もしかして、スクールアイドルの方ですか?」

千歌「あぁ、はい!μ'sのこと、知りたくて来てみたんですけど」

「そういう人、多いですよ。でも、残念ですけど、ここには何も残ってなくて」

千歌「え?」

「……μ'sの人たち、何も残していかなかったらしいです」

「自分たちのものも、優勝の記念品も、記録も」

「ものなんか無くても、心は繋がっているからって」

「それでいいんだよって」

千歌「……」

「いくよー!」

千歌「?」

「あ、もう、こら!」

「「「?」」」

「走ったら転ぶわよ!」

「だいじょうぶ!せーのっ……それ!」

「よっ!……えへへ!」

「もう、危ないでしょ!」

「すごいでしょー?」

千歌「……ふふっ」

梨子「どう?」

千歌「え?」

梨子「何かヒントはあった?」

千歌「……うん、ほんのちょっとだけど。梨子ちゃんは?」

梨子「うん、私はよかった。ここに来て、はっきりわかった」

梨子「――私、この学校好きだったんだなって」

 

千歌「」お辞儀

ようりこ「「……ふふっ」」

ようりこ「「」」お辞儀

ルビマル「「えへへ」」

3年生「「「ふふっ」」

9人「」お辞儀

「「「ありがとうございました!!」」」

「……」

千歌「……」

千歌「?」

千歌「……ふふっ」

 

 

千歌「……」

善子「スティグマ……天使……」

ダイヤ「結局東京に行った意味はあったんですの?」

果南「そうだね、μ'sの何がすごいのか、私たちとどこが違うのか。はっきりとはわからなかったかな」

鞠莉「果南は、どうしたらいいと思うの?」

果南「私?私は……学校は救いたい。けど、Saint Snowの2人みたいには思えない」

果南「あの2人、なんか1年の頃の私みたいで……ん?」

鞠莉「ビッグになったね、果南も♡」

果南「訴えるよ!」

千歌「……」

『μ'sの人たち、何も残して行かなかったらしいです』

『それでいいんだよって(That's how they wanted it)』

千歌「……!」

千歌「あっ……!」

千歌「ねえ!海、見ていかない?みんなで!」

梨子「千歌ちゃん?」

 

千歌「……」

ルビマル「「わぁ~!」」

ルビィ「綺麗……!」

花丸「ずら~……!」

千歌「――私ね、わかった気がする」

「「「?」」

千歌「μ'sの何がすごかったのか」

曜「ほんと?」

千歌「たぶん、比べたらダメなんだよ」

千歌「追いかけちゃダメなんだよ。μ'sも、ラブライブも、輝きも(We can't chase after μ's, or Love Live, or that shine...)」

善子「どういうこと?」

ダイヤ「さっぱりわかりませんわ」

果南「そう?私は、なんとなくわかる」

梨子「一番になりたいとか、誰かに勝ちたいとか、μ'sってそうじゃなかったんじゃないかな」

千歌「うん。μ'sのすごいところって、きっと何もないところを、何もない場所を、思いっきり走ったことだと思う」

千歌「……みんなの夢を、叶えるために。自由に、真っ直ぐに……!だから飛べたんだ!」

千歌「μ'sみたいに輝くってことは、μ'sの背中を追いかけることじゃない」

千歌「――自由に走るってことなんじゃないかな!」

千歌「全身全霊、なんにも囚われずに!自分たちの気持ちに従って!」

果南「自由に……」

鞠莉「Run and Run...」

ダイヤ「自分たちで決めて、自分たちの足で」

花丸「なんかわくわくするずら!」

ルビィ「ルビィも!」

曜「全速前進、だね!」

善子「自由に走ったら、バラバラになっちゃわない?」

梨子「どこに向かって走るの?」

千歌「私は……0を1にしたい!」

(8話回想)

千歌「あのときのままで、終わりたくない」

梨子「千歌ちゃん……!」

千歌「それが今、向かいたいところ!」

ルビィ「ルビィも!」

梨子「そうね、みんなもきっと!」

果南「なんか、これで本当に1つにまとまれそうな気がするね!」

ダイヤ「遅すぎですわ」

鞠莉「みんなシャイですから(We're all shy)」

千歌「えへへっ、じゃあ行くよ?」

曜「待って!」

「「「?」」」

曜「指、こうしない?」

曜「これをみんなで繋いで、0から1へ!」

千歌「それいい!」

曜「でしょ?」

千歌「じゃあ、もう一度!」

千歌「0から1へ!今、全力で輝こう!Aqours――!」

「「「――サンシャイン!!!」」」

千歌(Dear穂乃果さん。私はμ'sが大好きです)

千歌(普通の子が精一杯輝いていたμ'sを見て、どうしたらそうなれるのか、穂乃果さんみたいなリーダーになれるのか、ずっと考えてきました)

千歌(――やっとわかりました!)

千歌(私でいいんですよね(I'm fine the way I am)。仲間だけを見て、目の前の景色を見て、真っ直ぐに走る。それがμ'sなんですよね!それが、輝くことなんですよね!)

千歌(だから私は、私の景色を見つけます(That's why I will find my own place))

千歌(あなたの背中ではなく、自分だけの景色を探して走ります!みんなと一緒に!いつか、いつか……!)

千歌「……!」

 

千歌「あ……!」

羽根を受け取る

千歌「わぁ……!ふふっ!」

 

剥がされたμ'sのポスター痕

 

ED

11話写経

千歌「しっかりね」

梨子「お互いに」

ルビィ「梨子ちゃん、がんばルビィ!」

ダイヤ「東京に負けてはダメですわよ!」

曜「そろそろ時間だよ」

梨子「うん」

鞠莉「チャオ、梨子」

果南「気をつけて」

花丸「ファイトずら」

千歌「……」

千歌「……梨子ちゃん!」

梨子「?」

千歌「次は、次のステージは、絶対みんなで歌おうね!」

梨子「ふふっ、もちろん!」

 

ダイヤ「……さあ、練習に戻りますわよ!」

果南「よし、これで予備予選で負けるわけにはいかなくなったね!」

鞠莉「なんか気合が入りマース!」

曜「ね、千歌ちゃん?」

曜「……?」

千歌「……」

曜「……」

千歌「……」

曜「千歌ちゃん……」

 

OP

 

ダイヤ「特訓、ですわ!」

「「「……」」」

千歌「……また?」

花丸「本当に好きずら」

ルビィ「あぁ!」

「「「?」」」

千歌「これって、Saint Snow!」

ルビィ「先に行われた北海道予備予選をトップで通過したって!」

果南「へぇ、これが千歌たちが東京で会ったっていう……」

千歌「がんばってるんだ……!」

果南「気持ちはわかるけど、」

「「「?」」」

果南「大切なのは目の前の予備予選!まずはそこに集中しない?」

鞠莉「果南にしては随分堅実ね?」

果南「誰かさんのおかげで、いろいろ勉強したからね」

ダイヤ「では、それを踏まえて――」

 

千歌「――なんで……」

千歌「こう、なるの!」

ダイヤ「文句言ってないでしっかり磨くのですわ!」

ルビィ「でっでででも足元がぬるぬるし――!」

花丸「ずらっ!?」

ルビィ「ピギィ!?」

千歌「これで特訓になるの?」

鞠莉「ダイヤがプール掃除の手配を忘れていただけねー」

ダイヤ「忘れていたのは鞠莉さんでしょう!?」

鞠莉「言ったよ?夏休みに入ったら、プール掃除なんとかしろって」

ダイヤ「だからなんとかしてるじゃないですか!」

鞠莉「へぇ~!『なんとか』ね~?」

「「むむむ……!!」」

善子「生徒会長と理事長があんなんで大丈夫?」

果南「私もそう思う……」

千歌「まあでも、みんなで約束したもんね。生徒会長の仕事は手伝うって」

曜「そうだよ!みんなちゃんと磨かなきゃ!」

千歌「うんうん」

曜「ヨーソロー!」

千歌「うっ……」

曜「デッキブラシと言えば甲板磨き!となれば、これですっ!……ぅわったぁー!」

ダイヤ「あなた、その格好はなんですの!?遊んでいる場合じゃないですわよ!?本当にいつになったら終わるのやら……」

千歌「……えへっ」

曜「……ふふっ」

 

 

ルビィ「綺麗になったね」

花丸「ぴっかぴかずら!」

ダイヤ「ほら見なさい?やってやれないことはございませんわ!」

「「「えぇーー!!?」」」

果南「そうだ、ここでみんなでダンス練習してみない?」

鞠莉「Oh, funny!おもしろそう!」

ダイヤ「滑って怪我しないでよ?」

鞠莉「ちゃんと掃除したんだし、平気よ!」

果南「じゃあ、みんなポジションについて」

 

「「「……」」」

千歌「……?あれ?」

果南「そっか、梨子ちゃんがいないんだよね」

ダイヤ「そうなると、今の形はちょっと見栄えがよろしくないかもしれませんわね」

花丸「変えるずら?」

果南「それとも、梨子ちゃんの位置に誰かが代わりに入るか……」

鞠莉「代役って言ってもねー……」

果南「!」

ルビマル「「……!」」

ダイよし「「……?」」

曜「……?……え?……ん?」

千歌「うん!」

曜「……へ?へ?私!?」

 

果南「1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8」

千歌「あっ、あれ~……?」

曜「まただ……」

ダイヤ「これでもう10回目ですわね……」

果南「曜ちゃんなら合うかと思ったんだけどな」

曜「私が悪いの。同じところで遅れちゃって……」

かなダイ「「……」」

千歌「あぁ違うよ、私が歩幅、曜ちゃんに合わせられなくて……」

鞠莉「……」

果南「まあ、身体で覚えるしかないよ。もう少し頑張ってみよ?」

果南「……じゃあ、行こうか!」

果南「1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8」

果南「1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8...」ドン

千歌「あっ、ごめん!」

曜「ううん、私が早く出過ぎて……」

鞠莉「……」

曜「ごめんね、千歌ちゃん。えへへ……」

 

 

ルビィ「」ピチュウウウウウウ

花丸「」ツルゥゥゥゥ

ルビィ「ふぅう、生き返る~……」

花丸「みかん味おいしいずら~!」

善子「リトルデーモンのみなさん!」

ルビマル「「!」」

善子「私に力を!漆黒卿の力を!この隻手に!」

D

「D賞でーす」

善子「堕天の、D……」

ルビマル「「……」」

ルビィ「2人、まだ練習してるんだね!」

 

千歌「ぅわたっ」

曜「ごめん!」

千歌「ううん、私がいけないの。どうしても梨子ちゃんと練習してた歩幅で動いちゃって……」

曜「……」

千歌「もう一度やってみよう!」

曜「……うん!」

千歌「じゃあ行くよ?」

「ずら」「ピギィ」「ぎらん」

曜「千歌ちゃん!」

千歌「?」

曜「もう一度、梨子ちゃんと練習してたとおりにやってみて?」

千歌「え?でも……」

曜「いいから!行くよ!」

千歌「……?」

曜「せーの!」

曜「1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8」

善子「おぉ!天界的合致!」

千歌「曜ちゃん!」

曜「これなら大丈夫でしょ?」

千歌「う、うん。さすが曜ちゃん、すごいね……」

rrr

梨子「あ、千歌ちゃん?今平気?うん、そう。東京のスタジオ着いたから、連絡しておこうかと思って」

梨子「……うん、なんか1人じゃもったいないくらいで」

千歌「えへへ。あ、ちょっと待って!みんなに代わるから。花丸ちゃん!」

花丸「!?え、えーっと……もすもす?」

梨子『もしもし、花丸ちゃん?』

花丸「み、未来ずら~~!」

善子「なに驚いてるのよ、さすがにスマホくらい知って――」

梨子『あれ、善子ちゃん?』

善子「えっ!?……フッフ、このヨハネは堕天で忙しいの……別のリトルデーモンに代わります!」

梨子『……もしもし?』

ルビィ「……ピ、ピギィィィィィィ!」

千歌「どうしてそんなに緊張してるの?梨子ちゃんだよ?」

花丸「電話だと緊張するずら。東京からだし!」

千歌「東京関係ある?」

曜「……」

千歌「じゃあ、曜ちゃん!」

曜「え?」

千歌「梨子ちゃんに話しておくこと、ない?」

曜「……うん……」

ピーッピーッ

千歌「あ、ごめん電池切れそう……」

曜「……」

千歌「またって言わないでよー!まただけど……」

梨子「ふふっ、じゃあ切るわね。他のみんなにもよろしく」

千歌「うん!」

千歌「よかったー、喜んでるみたいで」

曜「……」

曜「……」アイスを見つめる

千歌「じゃあ曜ちゃん!」

曜「?」

千歌「私たちも、もうちょっとだけがんばろっか!」

曜「……うん、そうだね!」アイスを隠す

 

 

ダイヤ「……」

果南「こんなに仕事溜めて……1人で抱え込んでたんでしょ?」

ダイヤ「違いますわ!これはただ……」

鞠莉「仕方ないなー、これからは私と果南が手伝ってあげましょう!……ん?」

新規部活動申請書

鞠莉「あれは……?」

ダイヤ「スクールアイドル部の申請書ですわ、以前千歌さんが持ってきた」

鞠莉「あら!最初は千歌っちと曜の2人だったのね」

果南「意外?」

鞠莉「てっきりstartは、千歌っちと梨子だとばかり思ってました」

ダイヤ「まあ、確かにそう見えなくもないですわね。今の状況からすると」

渡辺 曜

鞠莉「そうですね……」

 

 

曜「……」

曜「……これでよかったんだよね……」

鞠莉「……うりゃっ!Oh, これは果南にも劣らぬ――」

曜「――とりゃああああ!」

鞠莉「い……?」

鞠莉「Ouch!」

曜「?……!ま、鞠莉ちゃん!?」

鞠莉「えへへ……」

 

Bパート

 

曜「千歌ちゃんと?」

鞠莉「はい!上手く行ってなかったでしょ?」

曜「あ、あぁ……それなら大丈夫!あの後2人で練習して上手く行ったから!」

鞠莉「いいえ、ダンスではなく」

曜「え?」

鞠莉「千歌っちを梨子に取られて、ちょっぴり嫉妬FIRE~~~が燃え上がってたんじゃないの?」

曜「っ!?嫉妬!?ま、まさか、そんなことは……はうううう!!」

鞠莉「ぶっちゃけトーーク!する場ですよ、ここは」

曜「鞠莉ちゃん……」

鞠莉「話して。千歌っちにも梨子にも話せないでしょ?ほら」

曜「……」

曜「……私ね、昔から千歌ちゃんと一緒に何かやりたいなーって、ずっと思ってたんだけど」

曜「そのうち、中学生になって――」

千歌『そっか、曜ちゃん水泳部にしたんだ』

曜『千歌ちゃんは?』

千歌『私は……』

曜「――だから、千歌ちゃんが一緒にスクールアイドルやりたいって言ってくれたときは、すごく嬉しくて」

曜「これでやっと一緒にできるって思って。でも」

回想

曜「すぐに梨子ちゃんが入って、千歌ちゃんと2人で歌作って――」

曜「――気付いたら、みんなも一緒になってて。それで、思ったの」

曜「……千歌ちゃん、もしかして私と2人は、嫌だったのかなぁって……」

鞠莉「Why?なぜ?」

曜「私、全然そんなことないんだけど、なんか要領いいって思われてることが多くて」

曜「だから、そういう子と一緒にって、やりにくいのかなって……」

鞠莉「……えいっ」

曜「いたっ」

鞠莉「なに1人で勝手に決めつけてるんですか?」

曜「だって……」

鞠莉「うりゃうりゃうりゃうりゃ!」

鞠莉「曜は千歌っちのことが大好きなのでしょう?」

曜「?」

鞠莉「なら、本音でぶつかった方がいいよ」

曜「……?」

鞠莉「大好きな友達に本音を言わずに、2年間も無駄にしてしまった私が言うんだから、間違いありません!」

曜「……!」

 

 

曜「本音をぶつける、か……ううっ」

 

曜「おはよー!!」

千歌「あ、曜ちゃん!見てみて、これ!」

曜「?」

千歌「ほら!」

曜「わぁ、かわいい!どうしたの、これ?」

千歌「みんなにお礼だって送ってくれたの!梨子ちゃんが!」

曜「――!」

曜「……へぇー」

千歌「いいでしょー?梨子ちゃんもこれ付けて演奏するって!」

曜「……」

千歌「曜ちゃんのもあるよ!はい!」

曜「あ、ありがと……」

ダイヤ「特訓始めますわよー?」

「「「はーい!!!」」」

曜「……」シュシュを見つめる

千歌「曜ちゃん着替え急いでね!」

曜「……千歌ちゃん!」

千歌「?」

曜「…………がんばろうね!」

千歌「うん!」

 

 

曜「はぁ、結局話せなかった……」

曜「……本音って言っても、私なんて言えばいいんだろう――」

 

曜『千歌ちゃん!私と梨子ちゃん、どっちが大切なの?はっきりして!』

 

曜「――って、いやいや、違うよね……」

 

曜『千歌ちゃん……私のことあんまり、好きじゃないよね?』

千歌『?』

 

曜「――これもちがーーーーう!!!!」

曜「なら――!」

 

曜『私、渡辺曜は千歌ちゃんのことが、全速前進、ヨーソロー!』

千歌『……?』

 

曜「――ほわああああーーっ!……なんかわけわかんなくなってきた……」

rrr

曜「?」

桜内梨子 着信中

曜「……」

曜「……もしもし?」

曜「……ううん、平気平気。何かあったの?」

梨子「うん、曜ちゃんが私のポジションで歌うことになったって聞いたから。ごめんね、私のわがままで」

曜『ううん、全然』

梨子「私のことは気にしないで。2人でやりやすい形にしてね」

曜『でも、もう……」

梨子「……」

梨子「……無理に合わせちゃダメよ。曜ちゃんには曜ちゃんらしい動きがあるんだし」

曜『そうかな……』

梨子「千歌ちゃんも絶対そう思ってる」

曜『……そんなこと、ないよ……』

梨子「え?」

曜「千歌ちゃんの傍には、梨子ちゃんが一番合ってると思う。だって……」

曜「……千歌ちゃん、梨子ちゃんと居ると嬉しそうだし。梨子ちゃんのために、頑張るって言ってるし……」

梨子「……そんなこと思ってたんだ」

曜「……」ホロ

曜「っ!」

梨子『……千歌ちゃん、前話してたんだよ』

曜「え?」

 

梨子『うん、じゃ』

曜「……」

曜「千歌ちゃんが……」

千歌「――曜ちゃん!」

曜「……?」

曜「……」

千歌「――曜ちゃーん!!」

曜「……!!」

曜「千歌ちゃん……!どうして……!?」

千歌「練習しようと思って!」

曜「練習?」

千歌「うん!」

千歌「考えたんだけど、やっぱり曜ちゃん、自分のステップでダンスした方がいい!合わせるんじゃなくて、1から作り直した方がいい!」

千歌「――曜ちゃんと私の2人で!!」

曜「…………!!!」

曜「……っ!」

千歌「曜ちゃん!?」

 

曜「……!」

梨子『あのね。千歌ちゃん、前話してたんだよ』

梨子『曜ちゃんの誘い、いっつも断ってばかりで、ずっとそれが気になっているって』

梨子『だから、スクールアイドルは絶対一緒にやるんだって』

梨子『絶対曜ちゃんとやり遂げるって!』

曜「……」

千歌「あ……!……ん?」

曜「……」背を向ける

千歌「曜ちゃん……?」

曜「……」後ろに手を伸ばす

曜「……汗びっしょり……どうしたの?」

千歌「バス終わってたし、美渡姉たちも忙しいって言うし……」

曜「……っ」

千歌「曜ちゃん、なんかずっと気にしてたっぽかったから。居ても立ってもいられなくなって、へへ……」

千歌「……?」

曜「…………私、バカだ」

曜「バカヨウだ……!!」

千歌「バカヨウ……?……うわぁっ!?」

曜「っ……!」

千歌「ああっ、汚れるよー!」

曜「いいの!」

千歌「風邪引くよ!」

曜「いいの!!」

千歌「恥ずかしいってー!」

曜「いいの!!!」

千歌「もうなに、なんで泣いてんのー?」

曜「いいのー!!!!」

千歌「えへへ、なになに??」

 

 

「「「……」」」

曜「」頷く

千歌「」頷いてシュシュを見つめる

梨子「……」

梨子「……そろそろね」シュシュを見る

 

千歌「さあ行こう!ラブライブに向けて!私たちの第一歩に向けて!」

千歌「今、全力で輝こう!」

千歌「Aqours!」

「「「サンシャイン!!」」」

 

梨子『私ね、わかった気がするの(I think I get it now)。あのとき、どうして千歌ちゃんがスクールアイドルを始めようと思ったのか。スクールアイドルじゃなきゃ、ダメだったのか(Why she had to be a school idol)』

曜『うん!千歌ちゃんにとって、輝くっていうことは自分ひとりじゃなくて(shining isn't about herself,)誰かと手を取り合い、みんなで一緒に輝くことなんだよね(it's joining hands with others and shining all together)」

梨子『私や曜ちゃんや、普通のみんなが集まって(With me and you, and everyone else,)ひとりじゃとても作れない、大きな輝きを作る(we shined much brighter than anyone could alone)』

梨子『その輝きが、学校や聴いてる人に広がっていく。繋がっていく』

曜『それが、千歌ちゃんがやりたかったこと。スクールアイドルの中に見つけた、輝きなんだ』

 

想いよひとつになれ

 

ED

10話写経

鞠莉「前回の!」

「「「ラブライブ!サンシャイン!!」」」

鞠莉「Aqoursの活動を複雑な気持ちで見ていた果南」

鞠莉『果南』衣装を差し出す

鞠莉「復学した果南はAqoursへのreturnを拒否したの」

ダイヤ『東京のイベントで果南さんは歌えなかったんじゃない。わざと歌わなかったんですの』

鞠莉「そこには、果南の本当の想いが」

果南『ハグ……しよ』

鞠莉「こうしてAqoursは、ついにパーフェクトナインとなったのです」

 

LINE

梨子『歌詞は?』

千歌『ゴメン(スタンプ)』

千歌『明日には必ず…』

梨子「はぁ……」

梨子『そのスタンプ見飽きた』

千歌『ゴメン(違うスタンプ)』

梨子「……」

梨子『そんなもの用意する時間があったら早く書いて』

梨子『GRR(怒)』

千歌『(スタンプ3連打)』

梨子「はぁ……」

メール着信

梨子「?」

梨子「……!」

出場登録期限のお知らせ

※このメールではピアノコンクールについてご案内させていただいております。

桜内 梨子 様

この度、開催されますピアノコンクールの出場登録期限が迫っておりますので、お知らせ致します。

ご確認の上、当事務局までご連絡いただけますでしょうか。

梨子「…………」

 

OP

 

千歌「あ゛つーいー……」

花丸「ずら~……」

善子「天の業火に闇の翼が……」

ルビィ「その服やめた方がいいんじゃ……」

曜「どうしたんですか?全員集めて」

ダイヤ「ふっふっふ……」

ダイヤ「さて!いよいよ今日から夏休み!」

鞠莉「Summer Vacationと言えばー!?」

ダイヤ「はい、あなた!」

千歌「えっ!?……やっぱり、海だよね?」

曜「夏休みは、パパが帰ってくるんだ!」

花丸「マルはおばあちゃん家に」

善子「――夏コミ!」

ダイヤ「💢💢……ぶっぶーですわ!!!あなたたちそれでもスクールアイドルなのですか!!?片腹痛い、片腹痛いですわ!」

「「「ゴクリ……」」」

 

 

千歌「だったら、なんだって言うんです?」

ダイヤ「いいですか?みなさん、夏と言えば?はい、ルビィ」

ルビィ「……たぶん、ラブライブ!

ダイヤ「さすが我が妹、かわいいでちゅねぇ~よくできまちたねぇ~」

ルビィ「がんばルビィ!」

千歌「……」

花丸「……」

善子「何この姉妹コント」

ダイヤ「コント言うな!夏と言えばラブライブ!その大会が開かれる季節なのです!」

ダイヤ「!」バッ

ルビィ「――!」サッ

ダイヤ「ラブライブ予選突破を目指して、Aqoursはこの特訓を行います!」

ダイヤ「これは、わたくしが独自のルートで手に入れたμ'sの合宿のスケジュールですわ!」

ルビィ「すごいお姉ちゃん!」

花丸「……遠泳10km……?」

善子「ランニング15km……」

千歌「こんなの無理だよ……」

果南「ま、なんとかなりそうね」

「「「!?」」」

曜「えっへへ」

ダイヤ「熱いハートがあればなんでもできますわ!」

ルビィ「ふんばルビィ!」

曜「なんでこんなにやる気なの……?」

鞠莉「ずっと我慢してただけに、今までの想いがシャイニーしたのかも」

梨子「……」

曜「……」

ダイヤ「なにをごちゃごちゃと!さ、外に行って始めますわよ!」

 

「「「「……」」」」

曜「……そーいえば千歌ちゃん!海の家の手伝いがあるって言ってなかった?」

千歌「あ!そーだそーだよ!自治会で出してる、海の家手伝うように言われてるのです!」ビシッ

果南「あ、私もだ」

ダイヤ「そんなぁ!?特訓はどうするんですの?」

千歌「残念ながらそのスケジュールでは……」敬礼

曜「もちろんサボりたいわけではなく……」敬礼

ダイヤ「…………」

ダイヤ「――!」ギラン

ルビィ「ピッ」

ようちか「「!!」」

鞠莉「――じゃあ、昼は全員で海の家手伝って、涼しいmorning&eveningに練習ってことにすればいいんじゃない?」

花丸「それ賛成ずら」

ダイヤ「それでは練習時間が……」

千歌「じゃあ、夏休みだしうちで合宿にしない?」

「「「合宿?」」」

千歌「ほら、うち旅館でしょ?(We've got an inn, right?) 頼んで一部屋借りれば、みんな泊まれるし」

曜「そうか、千歌ちゃん家なら目の前が海だもんね」

果南「移動がないぶん、早朝と夕方、時間取って練習できるもんね」

花丸「でも、急にみんなで泊まりに行って大丈夫ずらか?」

千歌「なんとかなるよ!じゃあ、決まり!」

 

ダイヤ「それでは明日の朝4時、海の家に集合ということで」

「「「お、おー……」」」

千歌「……?」

梨子「……」

千歌「梨子ちゃんどうかした?」

梨子「え?ううん、なんでもない」

 

 

自室

『海に還るもの 桜内梨子

梨子「……」

 

 

千歌「やっほーい!」

曜「まっぶしー!」

千歌「よーっし!」

曜「とりゃー!」

千歌「ぷはー……ぅわっ」

鞠莉「えっへへ、シャイニー!」

果南「(サーフィンしてる)」

ルビィ「ぷかぷか……」

曜「……」ニシシ

曜「」コチョコチョ

ルビィ「!?うゅ……」

曜「あははっ!」

千歌「梨子ちゃーん!」

梨子「……」

ダイヤ「結局遊んでばかりですわね……」

花丸「朝4時に来たら、マル以外誰もいなかったずら……」

善子「あったりまえよ。無理に決まってるじゃない」

ダイヤ「……ま、まあ?練習は後からきちんとするとして……それより、手伝いは午後からって言ってましたわね?確か」

 

海の家「」

ダイヤ「――!?」

ダイヤ「はて、そのお店はどこですの?」

花丸「現実を見るずら」

ダイヤ「うっ……」

ルビィ「ボロボロ……」

曜「あっはは……それに比べて、隣は――」

曜「――人がいっぱい」

花丸「都会ずら~!」

ダイヤ「ダメですわ……」

鞠莉「――都会の軍門に下るのデェスか?」

「「「?」」」

鞠莉「私たちはラブライブの決勝を目指しているんでしょう?あんなチャラチャラした店に負けるわけには行かないわ!」

ダイヤ「……鞠莉さん――」

ダイヤ「――あなたの言う通りですわ!!」

「「「……」」」

鞠莉「てへぺろ

果南「え?」

 

ちかりこ「「これ、なに……?」」

ダイヤ「それで、この海の家にお客を呼ぶのですわ。聞けば、去年も売上で隣に負けたそうではありませんか」

ダイヤ「今年はわたくしたちが救世主となるのです!」

ちかりこ「「っ……救世主!?」」

果南「ははは……」

善子「……どうしてあんなに熱くなってんの……?」

ルビィ「ちょっと昔いろいろあって……」

ダイヤ「――果南さん。とぅっ!」

「「「?」」」

ダイヤ「さぁ、果南さんはこのチラシを!」

ダイヤ「商売もスクールアイドルも大切なのは宣伝!」

果南「はぁ……」

ダイヤ「あなたのそのグッラァ~マラスな水着姿でお客を引き寄せるのですわ!他のジャリどもでは女の魅力に欠けますので。ふっふ」

果南「なんか、顔が怖いんだけど……」

千歌「じゃりってなーに?」

梨子「知らない方がいいと思う……」

 

 

ダイヤ「そして鞠莉さん!曜さん!善子さん!」

善子「ヨハネ!!」

ダイヤ「あなたたちには料理を担当してもらいますわ」

曜「はぁ……」

ダイヤ「都会の方々に負けない料理で、お客のハートを鷲掴みにするのですわ!」

曜「面白そうだねー!」

善子「堕天使の腕の見せどころ……!」

鞠莉「じゃあ、Let's cooking!」

ようよし「「おー!」」

 

曜「とりゃ!ほっ!たぁっ!それぃ!」

曜「ほい、おいしいヨキソバ(Niceoodles)!ヨーソロー!」

善子「クックック……」

曜「……?」

善子「クックックック……堕天使の涙……降臨……!」

曜「……」

鞠莉「Unbelievable……」

鞠莉「シャイ煮、complete……」

曜「……」

 

ダイヤ「さあ、これで客がドバドバと!」

「「「……」」」

ダイヤ「……なんで来ないんですの!!?」

「こんにちはー!」

ダイヤ「あ、はーい!」

「ここが千歌たちが手伝ってる海の家?」

「私ヨキソバ!」

曜「へい!ヨーソロー!」

千歌「みんなに連絡したら、すぐ来てくれたよ!」

果南「最初からこうすればよかったんだね。ほーんとダイヤはおばかさん」

鞠莉「ほんと、お・ば・さ・ん!」

ダイヤ「一文字抜けてますわ!!」

 

 

果南「はっ、はっ、はっ……ふぅ」

果南「さすがにお店の後だと、ちょっときついね」

果南「?」

ダイヤ「……うぅ……こんな特訓をμ'sはやっていたのですか……?」

ルビィ「す、すごすぎる……」

ダイヤ「」バタリ

 

果南「次は体幹をきちんと鍛えるよ!」

善子「……今こそ……!無我に……!(Must...eliminate the ego!)」

花丸「ずら~……!」

千歌「!?うわぁっ!」

善子「っ!」

花丸「ずらっ!」

ルビィ「ピギィ!」

「「「「~~~……」」」」

梨子「……ふふっ」

千歌「?」

千歌「……ふふ」

 

ルビィ「ひゃっこい……」

千歌「我慢して?まだ砂落ちてないよ」

ダイヤ「まったく、お湯はないんですの?」

ルビィ「それにしてもμ'sって、すごい特訓してたんだね!」

善子「リトルデーモンね」

花丸「違うずら」

美渡「あんたたち!他のお客さんもいるから、絶対うるさくしたらダメだからね!」

千歌「わかってるー!」

美渡「言ったからね!」

グゥ

鞠莉「I'm hungry! ごはんまだ?」

千歌「それが……」

 

 

「「「えぇ~!?」」」

千歌「美渡姉が余った食材は自分たちで処分しなさいって……」

梨子「そんなに余ったの?」

千歌「ヨキソバはほぼ売り切れたんだけど……」

千歌「シャイ煮と堕天使の涙、まったく売れてなくて」

善子「申し訳ない」鞠莉「デース!」

ルビィ「それってどんな味がするんですか?」

果南「ちょっと興味あるね」

梨子「そうですね」

花丸「マルも食べてみたいずら!」

よしまり「「いいですわ!!」」

 

鞠莉「シャイ煮、please……!」

善子「堕天使の涙に溺れなさい!」

よしまり「「さあ!召し上がれ!!」」

「「「い、いただきます……」」」

千歌「はむ……ん!?」

千歌「シャイ煮おいしい!!」

梨子「……でもいったい、中に何が入ってるの……?」

花丸「おかわりずら!」

鞠莉「ふっふーん、シャイ煮はワッターシが世界から集めたスッペーシャルな食材で作った究極の料理デース!」

ダイヤ「で、一杯いくらするんですの、これ……」

鞠莉「さあ?10万円くらいかなー」

「「「ぶーっ!!!」」」

花丸「じゅ、10万円!!?」

千歌「高すぎるよ!!」

鞠莉「え?そうかなー?」

果南「これだから金持ちは……」

ルビィ「えへへへ……次は、堕天使の涙を……あむっ」

ルビィ「――――」

ダイヤ「?ルビィ?」

ルビィ「――――ピギャァァァァァァァァァァァァ!!!!」

ルビィ「からいからいからいからいからいからいからいからい!!」

善子「フッ」

ダイヤ「ちょっと!いったい何を入れたんですの!?」

善子「タコの代わりに大量のタバスコで味付けした、これぞ堕天使の涙!!」

鞠莉「Oh!Strong hot!!!」

ダイヤ「平気ですの?」

善子「え?どうして?」

ダイヤ「どうしてじゃないですわ!」

 

梨子「そういえば歌詞は?」

千歌「うーん、なかなかね……」

曜「難産みたいだね。作曲は?」

梨子「いろいろ考えているけど、やっぱり歌詞のイメージもあるから」

千歌「いい歌にしないとね」

梨子「うん」

 

ルビィ「ふぇえ~……」

梨子「……ふふ」

メッセージを消去してもよろしいですか?

梨子「……」

メッセージを消去しました

梨子「……」目を閉じる

 

曜「千歌ちゃーん!ソース切れちゃったー!」

千歌「わかったー!うちから取ってくるね!」

 

千歌「……?」

志満「ピアノコンクール?」

梨子ママ「ええ、案内が来たらしいんだけど、あの子出るとも出ないとも言ってなくて」

志満「いえ、千歌からは何も聞いてないですけど……」

千歌「……」

 

Bパート

 

「「「Zzz……」」」

千歌「……」

千歌「やっぱり……」

千歌「この日って、ラブライブ予備予選と同じ日……」

千歌「……」

梨子「Zzz……」

千歌「梨子ちゃん……」

千歌「梨子ちゃーん……」

千歌「梨子ちゃーん」

梨子「千歌ちゃん……面白がってませんか……?」

千歌「えへへ……」

 

梨子「バレてたか……」

千歌「……」

梨子「心配しなくて大丈夫。ちゃんとラブライブに出るから」

千歌「え?」

梨子「確かに、初めて知らせが届いたときはちょっと戸惑ったよ?チャンスがあったらもう一度って気持ちもあったし」

梨子「でも、合宿が始まってみんなと一緒に過ごして」

千歌「……」

梨子「ここに越してきてから、この学校やみんなやスクールアイドルが、自分の中でどんどん大きくなって」

梨子「みんなとのAqoursの活動が楽しくて、千歌ちゃんとの出会いも」

梨子「自分に聞いたの」

千歌「……」

梨子「どっちが、大切なのか」

梨子「すぐ答えは出た」

梨子「今の私の居場所は、ここなんだって」

千歌「……そっか」

梨子「今の私の目標は、今までで一番の曲を作って予選を突破すること!それだけ」

千歌「……!うん、わかった。梨子ちゃんがそう言うなら……」

梨子「だから早く歌詞ください」

千歌「えぇー!?今言うそれ!?」

梨子「ふふっ、当たり前でしょ?さ、風邪引くといけないから戻ろ」

千歌「……」

千歌「……うん」

 

 

ちかりこ「「へーい!!」」

かなまり「「あははは!!」」

ちかりこ「「もー!!」」

曜「はい、ヨキソバ!」

ルビマル「「……!」」グラグラ

ダイヤ「シャイ煮をおひとつ――」

ルビマル「「!!」」ガッシャーン

ルビマル「「ふぇぇ……」」

 

千歌「どこ行くの?」

果南「梨子ちゃんとダンスの相談。来る?」

千歌「いいの!?」

 

梨子「大切な、もの?」

果南「それが歌詞のテーマ?」

千歌「うん。まだ、出だしだけしか書けてないんだけど……」

梨子「……」

梨子「……大切な、もの……」

千歌「……?」

机の上の楽譜

果南「梨子ちゃん?」

梨子「え?」

果南「梨子ちゃんも読んでみて、どう?」

千歌「……」

梨子「ああ、はい……」

千歌「……」

海に還るもの

千歌「あの曲……」

 

 

よしまり「「はぁあー……」」

千歌「今日も売れなかったんだね……?」

曜「できた!カレーにしてみました!」

曜「船乗りカレー、withシャイ煮と――愉快な堕天使の涙たち(イケボ)」

「「「……」」」

ルビィ「うぅ……ルビィ死んじゃうかも……」

曜「じゃあ、梨子ちゃんから召し上がれ!」

梨子「うっ……」

梨子「あむっ……ん!?」

梨子「おいしい……!」

ちかよしまり「「「!」」」

梨子「すごい、こんな特技あったんだ!」

鞠莉「んん~っ!Delicious!」

曜「パパから教わった船乗りカレーはなんにでも合うんだ!」

ダイヤ「フッフッフ……これなら明日は完売ですわ……」

「「「……」」」

ルビィ「お姉ちゃん……?」

花丸「おかわりずら!」

善子「はやっ!」

曜「あっはは!」

曜「……?」

曜「わっ!千歌ちゃんどうしたの?」

千歌「……ううん、なんでもないよ。ありがと」

曜「……?」

梨子「あはははっ」

曜「……」

 

 

ダイヤ「では!これからラブライブの歴史と、レジェンドスクールアイドルの講義を行いますわ!」

果南「……今から?」

ルビィ「うわぁ~!」

ダイヤ「だいたいあなた方は、スクールアイドルでありながらラブライブのなんたるかを知らなすぎですわ」

「「「……」」」

ダイヤ「まずはA-RISEの誕生から……ん?」

「「「……?」」」

鞠莉「……」

ダイヤ「鞠莉さん?聞こえてますか?」

ダイヤ「おーい、Missマリー?」

鞠莉「……」ペラッ

ダイヤ「~~~~!!!!」

ダイヤ「あぅっ」バタリ

ルビィ「お、お姉ちゃん!?」

「「「ふぅ……」」」

千歌「――っ!」

千歌「……」ソーッ

美渡「――!!!」

千歌「……っ今日はもう遅いから早く寝よ!!」

曜「遅いって、まだ9時だよ?」

千歌「今日のところは早く静かにしないと、旅館の神様に尻子玉抜かれるよ!」

曜「よ、よーそろー……」

美渡「……」スッ

千歌「……ふぅ……」

 

 

「「「Zzz……」」」

ダイヤ「目が……目がぁ……」

千歌「……」

千歌「梨子ちゃん!」

梨子「……?」

梨子「なーに……?」

千歌「ひとつお願いがあるの」

 

梨子「こんな夜中にどこ行くの?」

千歌「いいからいいからー!」

 

千歌「考えてみたら、聞いてみたことなかったなって。ここだったら思いっきり弾いても大丈夫だから」

千歌「梨子ちゃんが自分で考えて、悩んで、一生懸命気持ち込めて作った曲でしょ?聴いてみたくて!」

梨子「でも……」

千歌「おねがい!少しだけでいいから」

梨子「……そんな、良い曲じゃないよ?」

梨子「……はぁ……」

梨子「……」

梨子「――」♪~

千歌「……!」

 

千歌「良い曲だね」

梨子「千歌ちゃん……」

千歌「すっごく良い曲だよ、梨子ちゃんがいっぱい詰まった」

千歌「……梨子ちゃん」

梨子「?」

千歌「ピアノコンクール出てほしい」

梨子「……!!」

千歌「……こんなこと言うの、変だよね。めちゃくちゃだよね」

千歌「スクールアイドルに誘ったのは私なのに。梨子ちゃん、Aqoursの方が大切って言ってくれたのに」

千歌「……でも、でもね!」

梨子「私が一緒じゃ、嫌……?」

千歌「違うよ!一緒がいいに決まってるよ!!」

千歌「……思い出したの。最初に梨子ちゃん誘ったときのこと」

梨子「……」

千歌「あのとき私、思ってた。スクールアイドルを一緒に続けて、梨子ちゃんの中の何かが変わって、またピアノに前向きに取り組めたら、素晴らしいなって。素敵だなって!そう思ってた、って」

梨子「……でも……」

千歌「……」手を差し出す

千歌「この町や学校や、みんなが大切なのはわかるよ?私も同じだもん」

千歌「でもね、梨子ちゃんにとってピアノは、同じくらい大切なものだったんじゃないの?」

梨子「……!」

千歌「その気持ちに、答えを出してあげて?」

梨子「……」

千歌「私待ってるから!どこにも行かないって、ここでみんなと一緒に待ってるって約束するから、だから……!」

梨子「――!」

千歌「……!」

梨子「――ほんと、変な人……!」

千歌「……!」

梨子「――」

千歌「――」

梨子「……大好きだよ」

 

ED

Aqours First LoveLive! ~Step! ZERO to ONE~ 2日目

異変は、突然だった。

 

2日目、少しだけMCの内容が変わりながらも、セットリストに大幅な変更はなくライブは佳境へ進んでいった。花火の演出とともに未熟DREAMERを終え、無言のまま、初日と同じように逢田さんが階段を登る。そして振り返った逢田さんは、しかし初日とは違うにっこりとした微笑みで、私たちにお辞儀をした。笑顔だった。昨日の経験が、初めて大舞台でピアノを弾いた経験が、今日の逢田さんにはきっと活きている。そう、私には思えた。

 

椅子に座ってからは、初日と同じコンセントレーション。しっかりと深呼吸を重ね、手に力を込め、伊波さんと目を合わせる。でも、その時間は初日よりも短かった。私は、どこか安心しながら、期待感とともにサクラピンクのブレードを握りしめ、桜内梨子の演奏を待っていた。

 

少しの後、伊波さんがゆっくりと歌い出す。逢田さんが緊張の面持ちで白鍵を叩く。初日と同じように、想いよひとつになれが始まった。ほどなくして差し掛かるピアノソロ。スクリーンに映る逢田さんの演奏に合わせ、高槻さんから順繰りに鍵盤を弾く手を重ねていった、そのときだった。

 

明らかに低い一音が、広い会場内に響き渡った。

そのときのカメラは、無情にも目を見開いたまま凍りついた表情の逢田さんを映していたことをよく覚えている。

時間が、止まったような気がした。

 

瞬間固まった会場の空気は、しかしグリスの絢爛な音色とともに吹き飛ばされた。何事もなかったように、曲は進んでいく。でも、そのときにはもう、逢田さんはオケに演奏を合わせることができなかったんだと思う。伊波さんと斉藤さんがAメロを歌い出した途中で、曲が中断された。今にして思えば、逢田さんを信じ続けたスタッフの英断だったんだろう。スクリーンに流れ出していたアニメの映像も停止し、代わりに映し出されたのは、混乱しているだろうキャストたち。今度こそ、会場は静寂に包まれた。何が起きているのか、理解できなかった。私の頭は、完全に真っ白になっていた。

 

一瞬の空白の後、ざわつき始めた空気を抑えるかのように、真っ先に伊波さんが駆け出した。涙を流し、しゃくり上げながら、過呼吸気味に「ごめんなさい、ごめんなさい」と口にする逢田さんを、伊波さんは「大丈夫だから」と抱きしめた。鈴木さんも駆け寄る。「大丈夫、絶対大丈夫、大丈夫」と、鞠莉の声で、いつものハイテンションな声音ではなく、Aqoursのお姉さんとしての落ち着いた小原鞠莉の声で、まるで子供をあやすかのごとく、逢田さんに優しく、しかし力強く、語りかけ続けた。そしてもう一人階段を駆け上がり、背を向けて観客から逢田さんの姿を隠していたキャストがいた。私は目の前の出来事を頭で処理することに必死で誰だったかまでは覚えていないけど、諏訪さんだったらしい。

 

やがて会場からは、「りきゃこー!!」「がんばれー!!」「行けるぞー!!」と、あちこちから声援が飛び交い始めた。ゆっくりと、会場が息を吹き返していた。自分にできることはただ声を届けることしかないと、そこで私はようやく「応援すること」の意味を理解したような気がした。喉が千切れんばかりの大音声で、「がんばれー!!」と何度も叫んだ。あんなにがむしゃらに泣き叫んだのは、人生でも初めてのことだったかもしれない。たくさんの声援たちは、やがて「梨香子!梨香子!」という、梨子でもりきゃこでもなく、逢田梨香子の名前を呼ぶひとつの大きな声へと収束していった。その大合唱の中、広い会場を照らす光は、サクラピンクただ一色だった。

 

駆け寄ったメンバーたちが定位置へと戻るとともに、梨香子コールは落ち着きを見せていく。そして、もう一度、想いよひとつになれが始まった。涙に濡れた顔で、逢田さんがピアノを弾き始める。私はブレードを握りしめながら、ただただ成功を祈り続けた。そして、さっき躓いてしまった前奏のピアノソロが再び訪れた。それを、逢田さんは初日よりも震える手つきで、しかし正確に演奏したのだった。その瞬間、大音量になるオケに負けないくらいの大歓声が上がったのは、きっと気のせいじゃなかったと思う。

 

私はかねてから、想いよひとつになれのCメロが好きだった。

曲展開、歌詞、ひとつひとつの音。どれを取っても、気分が高揚するような、でもどこか切なくなるような、そんな印象があった。間奏を終え、Cメロに入ったそのとき、私はこの歌詞に大きな意味が与えられたことを実感した。ミスをした逢田さんを抱きしめた伊波さん、優しく声をかけ続けた鈴木さん、ただ黙って傍に居てあげた諏訪さん、下で再起を信じて待っていた高槻さん、降幡さん、小林さん、斉藤さん、小宮さん。きっとそれができたのは、今までの長い、長い練習の中で、9人でかけがえのない日々を過ごしてきたからこその、強い絆の力のおかげだったと思う。もう、Aqoursは完全な1つのチームだった。逢田さんの奏でるピアノをバックに、8人がひとりひとり、Cメロの歌詞を紡いでいく。そして、ラストを飾る伊波さんが、今までよりも一際大きな声で、「ひとりじゃない」と高らかに歌い上げた。よく通るその歌声と強いメッセージが、会場内を満たした。そのステージには、あまりにも美しい、青春を共に駆ける仲間の絆があった。

 

最後の一節を歌い終え、想いよひとつになれは後奏を迎える。待ち構えるは、曲を締めくくるピアノソロ。初日と同じように、カメラがピアノを捉える。涙の痕を残しながら、逢田さんは真剣な、真剣な表情で、一音一音確かめるように、奏でていく。そして、最後の一音が指すその白鍵を、がくがくと震える小さなその指で、打った。高く澄んだ、綺麗なピアノの音が、梨子ちゃんの奏でたそれと全く同じ美しい音が、会場にすぅっと吸い込まれていった。数瞬の後、割れんばかりの拍手と歓声が、会場を包み込んだ。Aqoursの想いが、スタッフチームの想いが、私たちの想いが、ライブを見守るすべての人たちの想いが、ひとつになった瞬間だった。

 

演奏後、逢田さんは暗転した闇の中、ひとり下がっていった。残された8人は初日と同じ調子のMCを、初日と同じ様子で繰り広げる。あれだけのトラブルがあったのにもかかわらず、みんなとても落ち着いていた。観客を不安にさせないための、プロの姿だった。やがて、メイク直しを終えた逢田さんが戻ってきた。未熟DREAMERトークが進む中、逢田さんは衣装を見せる流れにも参加しつつ、いよいよ話題は想いよひとつになれに移る。そこで、逢田さんが初めて口にした言葉がこれだった。

 

「ごめーん間違えちゃったー!マジごめーん」

 

すごく、すごく軽い調子で、さっきまで泣きながら過呼吸を起こしていた人と同一人物とは思えないくらいの明るい調子で、逢田さんはそう言った。なんて強靭な精神力を持ち合わせているんだろうと、どれだけ観客思いなんだろうと、私はとてつもない衝撃を受けた。そもそも考えてみれば、あの張り詰めた空気の中、不安定なあの状態で、1回目よりも格段に難しい2回目で最後までピアノを弾ききってみせたこと自体が、およそ常人にはできないことだった。逢田さんは「でも、みんなの声が聞こえてきたから最後までがんばれた。ありがとう」とも語っていた。自分で精一杯だっただろうに、どこまでも観客のことを考えてくれているプロ意識、ともすればプレッシャーに変貌しかねない大きな声援をすべて自分の力へと変えてみせたその胆力こそが、逢田さんがその小さな身体に宿すパワーの源なんだろうと思う。最後に、逢田さんは「みんなに支えられてるんだなって、改めて感じ入っちゃった」と、メンバーへの感謝を告げていた。何度も感じた、絆の力だった。

その話の中で、一際強く私の心に響いたのは伊波さんのフォローだった。

 

「だって生ですから!何が起きるかわかんないから!」

 

それがライブだと、笑顔で言い切ったのだった。

「これからも、いろんなことがあると思う。嬉しいことばかりじゃなくて、つらくて、大変なことだっていっぱいあると思う。でも私、それを楽しみたい!全部を楽しんで、みんなと進んでいきたい!それがきっと、輝くってことだと思う!」

13話で千歌ちゃんが言ったこの言葉が、今回のライブの場でとても大きな意味合いを持ち始めた。ライブで起きたアクシデントに対しての、高海千歌たる伊波さんの答え。千歌ちゃんの精神性、千歌ちゃんの見つけた答えを、伊波さんはしっかりと理解し、表現していた。「新たな物語」が付与された、ラブライブ!を感じた瞬間だった。

 

ライブは終盤に差し掛かり、アニメのダイジェストを経て、初日と同じように13話の演劇が始まった。5分ほどもあるあの長丁場に、収録とは違い1回のミスも許されない再現に、9人は再び挑戦していた。私にできることはただ、噛まないことを祈ることだけだった。サクラピンクのままのブレードを強く握り、ただ祈りを捧げていた。そして、梨子ちゃんの台詞が訪れる。

 

「輝きたい!」

 

その言葉を言った逢田さんの表情は、アニメで描かれていた、顔を輝かせる梨子ちゃんとはあまりにもかけ離れていた。ピアノを弾いていたときのような、凛々しさを感じさせる真剣な顔つきだった。桜内梨子ではなく、逢田梨香子としての心からの叫びのように思えた。そこからはもう、演劇の一言一言が、ずしりとした重みを増して私の胸に響き続けた。

 

「起きること全てを受け止めて」「全てを楽しもうと」「それが、輝くことだから!」

 

なんて、なんてライブだろう。「輝くって、楽しむこと」。初日、小林さんが最後のMCで引用した、千歌ちゃんの言葉。「輝くこと」と「楽しむこと」を同義とした13話の意義はここにあったのかと、頭がパニックになるほどのトラブルを乗り越え、それでも楽しみたい、輝きたいと願うことがラブライブ!サンシャイン!!だと、Aqoursの在りたい姿なんだと、何倍も、何倍も強くなった説得力で実感させてくれた。だからこそ、逢田さんは真剣な表情で「輝きたい!」と叫んだんだと、そう強く思えた。それだけで、あの演劇にはとてつもなく大きな意味が与えられた。きっと、このライブの場には奇跡も必然もなかったと思う。2日目にあったものは、千歌ちゃんたち2年生がμ'sに憧れたように、「諦めない気持ち」と「信じる力」があったからこそ、そしてみんなの絆とそれを包み込む全員の想いがあったからこそ結実した、青春の輝きだった。

 

逢田さんは終演後、更新した自身のTwitterで「とにかく楽しかった!!」とツイートしていた。もうあのライブの中で答えを見つけていたこと、ピアノのミスがあってもなお「楽しかった」と言ってくれること、私はただ救われる思いだった。その後Instagramではピアノのことについて触れ、「失敗は失敗」「プロとしてステージに立たせて貰ってる以上失格」と割り切り、私に泣く資格はないからと、その後は笑顔でパフォーマンスをするしかできなかったと綴っていた。思い返せば、小林さんや鈴木さん、諏訪さんも涙ぐみかけていた最後のMCが終わっても、逢田さんはひとしずくの涙も見せていなかった。本当にどれほど私たち観る側のことを考え続けてくれているのか、そんなにまで自分を押し殺せるくらいのタフな気持ちはどこから湧いてくるのか、逢田さんの心の強さを改めて思い知らされる言葉たちだった。

 

楽しくて泣いたとか、悲しくて泣いたとかじゃなくて、今回私は「人の想い」に触れて、それに感動してた気がします。すごく、すごく心に残るライブでした。本当に、一生の思い出です。

Aqours First LoveLive! ~Step! ZERO to ONE~ 1日目

雑感です。たぶん機械的な文章だと思う。

 

たぶん私の中でもライブの転機は未熟DREAMERと、やっぱり想いよひとつになれだったんだと思う。

 

それまでも楽しかったし、青空Jumping Heartではキャストが本当に踊っているのを見て自然と涙が出てきたりもしたんだけど、ただクオリティの高い曲とパフォーマンスを眺めていただけだった節は正直認めざるを得なかった。一番大好きな夢で夜空を照らしたいも、ただ「良い曲だな」という思いだけで耳を通り過ぎていってしまって、大きく気持ちが揺さぶられることはなかった。ユニットパートに入り、CYaRon!の表情の豊かさやAZALEAの花舞う軽やかなダンスに心を奪われ、背景で炎が燃え上がる中最高の盛り上がりを見せたGuilty Kissのターンを終えた辺りで、会場の一体感とは裏腹に、私の心にはこのままただ楽しかったライブで終わっちゃうのかな、という不安が兆し始めていた。

 

その後、アニメのダイジェストの流れをシームレスに受け継いでから、9人揃ったAqoursとして満を持して披露された未熟DREAMER。今までの楽曲の中でも一番トリッキーなこの曲のダイナミックなオケに合わせて、歌が紡がれダンスが披露されていくさまを見つめながら、それでも私は「良い曲だな」という気持ちが浮かぶだけだった。再現されてることへの感慨が薄かったというか、ハイコンテクストな言い方をすると、ラブライブ!を感じられなかったんだと思う。でも、それが変わったのが2サビだった。

 

「ひとりじゃない 無理しないでよ」

 

アニメ尺にはないこの歌詞の一節で、諏訪さんと鈴木さんが両側から小宮さんを抱きしめた。それだけで、その一瞬だけで、私の中で未熟DREAMERという曲に奥行き、深みが生まれた感覚が確かにあった。アニメ9話は個人的に引っかかりが解けなくて、このブログで写経するくらいうんうん悩んでたんだけど、それでも果南と鞠莉が「ひとりじゃない 無理しないでよ」と語りながらダイヤを抱きしめる姿を見て、3年生の友情が胸にすっと沁みた。大好きだったスクールアイドルを大好きな友達の将来と大好きな友達の想いのために諦めて、大好きな妹に八つ当たりしてしまうくらいAqoursやμ'sへの気持ちを抑え続けて、2年もの間ずっとずっと自分のことよりも果南と鞠莉のことだけを考えて、3年生になってからは生徒会の仕事をもただ1人で背負い、最後の最後まで意地を張り続け、自分にすら嘘をついて「無理してきた」ダイヤ。そんなダイヤへ、今までずっと自分たちの都合で振り回し続けたダイヤへ、新生Aqoursとダイヤのおかげですれ違いが解決した果南と鞠莉が、今までの贖罪と感謝と友情と想いを込めて送ったプレゼントは、3年生の過去にずっと描かれていた「ハグ」だった。

これこそが、私がライブで見たかった「物語」だった。ライブによって付与される新たな視点、文脈、価値観、バックグラウンド、なんでもいいけど、とにかく歌やダンスで「キャラクターの物語」を感じさせてくれることが私の中でのラブライブ!だったから、未熟DREAMERのこのダンスは本当に感動した。

 

その後の衝撃は、たぶんみんな感じたことだと思う。

 

花火が降り注ぎ、曲が終わった後、いつの間にかステージに鎮座しているグランドピアノ、こちらに背を向けゆっくりと階段を登る逢田さん。その時の私には、目の前の光景が本当に信じられなかった。何が起きようとしているのか、理解できなかった。ピアノが未経験という話はインタビューでも触れていたのに、まさか。まさか、本当に演奏するのか、なんて思いが過ぎったと同時に、逢田さんは階段を登りきり、振り返って一礼した。その時の表情は、もう誰が見てもガチガチに緊張してるのがわかるくらい固くて、それだけでこの人は本当にピアノを弾くつもりなんだ、本当に11話を再現するんだ、と直感でわかった。着席し、震える手を抑え、何回も、何回も深呼吸を繰り返し、目を瞑ってよしと頷いて、階段の下からじっと見つめ続けていた伊波さんと目を合わせて、頷き合う。その一連の動作が永遠に感じられるくらい、長い、長いコンセントレーションの時間だった。

 

8人が位置につき、静かなシンセのオケが流れ出す。伊波さんの歌とともに、逢田さんの弾く鍵盤の音が耳を打った。ピアノの横に設えられたカメラが、真剣な眼差しで、震える指先で、一音一音はっきりと、ピアノソロの旋律を慎重に奏でていく逢田さんを映す。エレクトーンとは違い、一つ一つのキーがかなりの重さを持つグランドピアノで、明らかに初心者とわかる慣れない手つきながらも、今の彼女には難しいはずの小節中のグリッサンドを、逢田さんは綺麗に成功させた。同時にギターやベース、ドラムのバンドサウンドの奔流が9人を包み込み、やがて歌い出す8人が大写しになった。その後も、笑う余裕もないまま、ただただ本気の表情で、しっかりと伴奏を弾く逢田さんの姿が時々映されていたような気がする。

 

曲はやがて終わりに向かう。伊波さんと斉藤さんが両サイドから手を伸ばし合う、アニメさながらのダンスからバトンタッチするかのように、オケとピアノの後奏が始まる。疾走するドラムが最後のスネアを響かせた瞬間、ひとり取り残されるピアノ。逢田さんはまったく緩むことのない顔で、最後の一音を、「想いよひとつになれ」ではなく、11話の梨子ちゃんがそうだったように、「海に還るもの」のラストの音を、その小さな指先で、けれど確かな存在感で、奏でた。あの瞬間だけは、階段の上と下で、世界が分かたれていた。1人と8人が別々の場所で想いをひとつにした、11話そのものだった。演奏が終わった瞬間、私はへたり込んでしまって、その後の逢田さんの顔や、8人がどんな表情をしていたかはまったく記憶にない。

 

逢田さんはアンコール後最後のMCで、「今回挑戦させてもらうことがすごく多くて、ピアノもそうなんだけど、どうなってしまうんだろうという恐怖があったんです」という旨の話をしていた。1万人以上、いやもっとそれ以上の人たちの前で未経験のピアノを弾く覚悟は、積み重ねてきた努力はいったいどれほどだったんだろうと、どれだけ桜内梨子に想いを懸けているんだろうと、涙が止まらなかった。

そして逢田さんは、「でもそれがあったおかげで、梨子ちゃんの気持ちが少しわかった気がしました」と語った。私の思う、キャラとキャストの関係の絶対性、不可侵性がその言葉の中に詰まっていた。キャストだけが掴み、近づくことのできるキャラの在り方、キャラの領域。ラブライブ!のライブが紡ぐ、2次元と3次元が繋がる感覚があった。トートロジーみたいなことを言うけど、ラブライブ!サンシャイン!!は確かにラブライブ!だったことを、私はそこで改めて思い知った。

 

初日、私の中で心に残っているのは、確実にハイライトとして掲げられる想いよひとつになれが終わった後、そのMCでの斉藤さんの発言だった。MCが進む中、やがてもじもじし始める斉藤さん。伊波さんたちにどうしたのと尋ねられ、ややあってからくるっと逢田さんに向き合う。そして、

 

「梨子ちゃん、おかえり!」

 

と、誰よりも早く梨子ちゃんの帰還を喜んだ。11話を経た曜ちゃんの想いが、その言葉と表情に溢れ出していた。千歌ちゃんが自分を見てくれていないかもしれないことへの不安や恐怖の中で、いつも千歌ちゃんと一緒に曲作りをする梨子ちゃんへの、嫉妬を形作るほどでもないもやもやとした気持ちを抱えたまま曜ちゃんは、ダンスのフォーメーションについて心配して連絡してくれた梨子ちゃんとの電話口で、鞠莉との「ぶっちゃけトーク」で緩んでいた胸の蓋が外れて、その中にあるどろっとした気持ち、普段見せない弱みを零してしまう。そして梨子ちゃんに千歌ちゃんへの想いを掬われ、梨子ちゃんの語る言葉とそれを証明する千歌ちゃんの行動で救われた曜ちゃんは、家を訪れた千歌ちゃんに縋り付いて泣きながら、梨子ちゃんにプレゼントされたシュシュを手首につけて、ようやく梨子ちゃんも大好きな友達だと思うことができた。その流れがあるからこそ、想いよひとつになれを披露した後で、曜ちゃんが真っ先に「梨子ちゃん、おかえり!」と言うことの意義はすごく大きかった。11話と12話の間で曜ちゃんが梨子ちゃんに対して絶対言ってるに違いない言葉だと、私に強く信じさせてくれる力があった。ライブの場が提示する「キャラクターの物語」、歌やダンスじゃなくとも、私の思うラブライブ!はここにも確かに存在していたんだと感じられた。

 

同じような感慨を感じたのは、そのMCの少し手前、未熟DREAMERについて触れているときの、「親愛なるお姉ちゃん!ようこそ、Aqoursへ!」というアニメに登場するルビィの台詞を再現した降幡さんに対して発せられた、「ありがとう、ルビィ」という小宮さんの言葉。でも、これはダイヤが言うだろうという言葉というよりも、最後まで意地を張って本音を言わなかったダイヤの本心を小宮さんがキャラに唯一近づき触れられるキャストとして代わりに言ってくれたような、そういう類の感慨だった。「梨子ちゃん、おかえり!」が渡辺曜としての言葉なら、「ありがとう、ルビィ」は小宮有紗としての言葉。どちらにもキャラとキャストのそれぞれの関係性を垣間見たような気がして、ラブライブ!のライブで私が見たかった、感じたかったことはこれなんだ、と強く印象に残ってる。

 

最後のMCで泣いてしまった高槻さんの話。高槻さんは普段のおちゃらけながらも空気がしっかり読める、場のバランサーとしてのスキルに長けたバラエティ力の塊という個人的なイメージがあって、涙から一番縁遠い人だと勝手に思っていたから、失礼な話だけど少しびっくりした。遡れば去年1月にメルパルクホールで開催された、Aqours初めてのイベントの中でダイジェストとして放送された合宿の映像で、9人が体力づくりでジョギングに励む中、1人だけぐっと離されてしまったキャストが高槻さんだった。以前からインタビューでも、合宿のときは自分だけ体力が無くて本当に情けなかったと語っていた高槻さんは、「Step! ZERO to ONE」を冠する今回のライブで「0になったことがありました」と、そのときの話を涙ぐみながら語っていた。そのとき、「マルちゃんと同じで、体力が無くて」と言っていたことで、こと花丸ちゃんへ近づくためであれば、このラブライブ!サンシャイン!!というプロジェクトにおいてであれば、体力がなかったことはポジティブに捉えられるんじゃないかと、私は身勝手なことを思ってしまった。キャラもキャストも同じ位置から、同じ「0」からスタートしたことは、Aqoursのキャストであるならば利点なんじゃないか、と。花丸ちゃんはアニメ全13話を経て、今はアニメPVの中でみんなと一緒に完璧なダンスを披露している。高槻さんも、今日はしっかり踊れていたんじゃないかと、LVのカメラ越しの素人目線で何がわかると言われればそれまでなんだけど、それでもその成長があるならばいいんじゃないかと、安全地帯の観客だから思えることが頭を過ぎっていた。そんなとき、高槻さんは笑顔で言い切った。

 

「でも、今は自信しかありません!」

 

この言葉を聞いて、そう思ってしまった自分が許されたような、それ以上に花丸ちゃんとのシンクロを強く感じたような、熱い気持ちが溢れた。それはまさに、8話で梨子ちゃんが「みんなで一緒に歩こう」と言い、キャラが手を繋ぎ合って進んでいったAqoursの姿を感じさせる一言。キャラ同士だけじゃなく、キャラとキャストが、花丸ちゃんと高槻さんが一緒に手を繋いで、同じ位置から二人三脚で進んでいく、そういう次元を超えた友情のようなものを感じて、涙が零れそうになった。「一歩を踏み出せたと思います」という言葉が、会場のスピーカーを通して劇場内に力強く響いた。その後で「ま、明日もあるんですけど」と笑いを誘って常に空気に気を配るところがやっぱり高槻さんの高槻さんたる所以だなと思いながらも、「今日の反省を活かして、明日も頑張ります」と宣言していたところにプロの心意気を感じたとともに、私は私自身の甘さを痛感した。

2日目、私は現地のメインステージ横のアリーナ席にいた。そこからは、アンコールで披露されたPops heartで踊るんだもん!を横並びでパフォーマンスするキャストをとても近くで見ることができた。歌詞にライブの今を重ねて泣きそうになりながらただ頷くだけだった私は、Bメロで目の前に来た高槻さんと目が合った。高槻さんは、顔を歪めた私の様子を見てにっこりと優しげな微笑みを浮かべて頷き、すぐに前を向いたと同時にサビに差し掛かった。サビで9人が同じダンスをするPopsheartで、初日に「体力がなかった」「今日の反省を活かして」と語った高槻さんは、みんなと一糸乱れぬ動きで完璧なダンスを披露しながら、ずっと笑顔のまま歌い続けていた。プロであればそれが当たり前なのかもしれないけど、私はそこに運動が苦手ながらも努力を重ねて踊れるようになった花丸ちゃんの姿と、何よりその楽しげな横顔に花丸ちゃんの優しい笑みを見たような気がした。2日目の挨拶で「身長がコンプレックスで、花丸ちゃんは一番小さいから」「Aqoursと花丸ちゃんのことをずっと考えてきた」という話をしていた高槻さん。私は今まで、告知や宣伝の場で「高槻かなこ」として高槻さんが喋っているとき、すぐに「ずら」を語尾につけて話す高槻さんが、正直に言うと少し苦手だった。今は花丸ちゃんとして喋ってるわけじゃないのにどうして「ずら」をつける必要があるの、シンクロってそういうことじゃないでしょ、と疑問が浮かぶばかりで。でも今回のライブを経て、それはずっと花丸ちゃんのことを考えてきたゆえで、喋るたびに「ずら」が付く花丸ちゃんのことばかりを考えてきたから、Aqoursの話をするときはそれが癖になってしまっているのかもしれないと思えるようになった。もちろん、真実は私にはわからない。それでも、このライブに懸ける想い、磨き上げたパフォーマンス、そして何よりも、高槻さんが見せた優しい微笑みが私に「国木田花丸」を感じさせてくれた。身長なんか些細な問題でしかなかったと、ラブライブ!における大前提をしっかり体現してみせた高槻さんは、間違いなくラブライブ!サンシャイン!!の、Aqoursの立派なメンバーだった。それがたまらなく、私にはうれしかった。

 

両日とも、最後のMCで「横浜アリーナは、私の憧れの場で。ラブライブ!、大好きなラブライブ!で、横浜アリーナに立ててひとつ夢が叶いました」「横浜アリーナに大好きなラブライブ!で出演できて、本当に嬉しいです」と涙ながらに語ったのは、鈴木愛奈さんだった。歌からダンスから、キャストの立ち姿からラブライブ!を感じられた私にとって、すごく、すごく身近な言葉だった。ラブライブ!サンシャイン!!は、Aqoursは、確かにラブライブ!を受け継いでいる。改めてその実感が蘇って、本当に楽しくて、うれしくて、幸せだった。ライブに参加する前と後で、Aqoursに対する気持ちが何倍にも大きくなってると思えた。私の中では少なくとも0じゃなかったし、倍数表現を使う。0から1への一歩を踏み出したのは、Aqoursの9人だったから。そしてきっと、まだ18人じゃない。これから、まだまだ新しい景色がたくさんある。そう思わせてくれる熱量に満ちた、すごく意味の大きなライブだった。

 

なんかごちゃごちゃしたけど、以上です。2日目のあのことは別に書きたい。