Aqours First LoveLive! ~Step! ZERO to ONE~ 1日目

雑感です。たぶん機械的な文章だと思う。

 

たぶん私の中でもライブの転機は未熟DREAMERと、やっぱり想いよひとつになれだったんだと思う。

 

それまでも楽しかったし、青空Jumping Heartではキャストが本当に踊っているのを見て自然と涙が出てきたりもしたんだけど、ただクオリティの高い曲とパフォーマンスを眺めていただけだった節は正直認めざるを得なかった。一番大好きな夢で夜空を照らしたいも、ただ「良い曲だな」という思いだけで耳を通り過ぎていってしまって、大きく気持ちが揺さぶられることはなかった。ユニットパートに入り、CYaRon!の表情の豊かさやAZALEAの花舞う軽やかなダンスに心を奪われ、背景で炎が燃え上がる中最高の盛り上がりを見せたGuilty Kissのターンを終えた辺りで、会場の一体感とは裏腹に、私の心にはこのままただ楽しかったライブで終わっちゃうのかな、という不安が兆し始めていた。

 

その後、アニメのダイジェストの流れをシームレスに受け継いでから、9人揃ったAqoursとして満を持して披露された未熟DREAMER。今までの楽曲の中でも一番トリッキーなこの曲のダイナミックなオケに合わせて、歌が紡がれダンスが披露されていくさまを見つめながら、それでも私は「良い曲だな」という気持ちが浮かぶだけだった。再現されてることへの感慨が薄かったというか、ハイコンテクストな言い方をすると、ラブライブ!を感じられなかったんだと思う。でも、それが変わったのが2サビだった。

 

「ひとりじゃない 無理しないでよ」

 

アニメ尺にはないこの歌詞の一節で、諏訪さんと鈴木さんが両側から小宮さんを抱きしめた。それだけで、その一瞬だけで、私の中で未熟DREAMERという曲に奥行き、深みが生まれた感覚が確かにあった。アニメ9話は個人的に引っかかりが解けなくて、このブログで写経するくらいうんうん悩んでたんだけど、それでも果南と鞠莉が「ひとりじゃない 無理しないでよ」と語りながらダイヤを抱きしめる姿を見て、3年生の友情が胸にすっと沁みた。大好きだったスクールアイドルを大好きな友達の将来と大好きな友達の想いのために諦めて、大好きな妹に八つ当たりしてしまうくらいAqoursやμ'sへの気持ちを抑え続けて、2年もの間ずっとずっと自分のことよりも果南と鞠莉のことだけを考えて、3年生になってからは生徒会の仕事をもただ1人で背負い、最後の最後まで意地を張り続け、自分にすら嘘をついて「無理してきた」ダイヤ。そんなダイヤへ、今までずっと自分たちの都合で振り回し続けたダイヤへ、新生Aqoursとダイヤのおかげですれ違いが解決した果南と鞠莉が、今までの贖罪と感謝と友情と想いを込めて送ったプレゼントは、3年生の過去にずっと描かれていた「ハグ」だった。

これこそが、私がライブで見たかった「物語」だった。ライブによって付与される新たな視点、文脈、価値観、バックグラウンド、なんでもいいけど、とにかく歌やダンスで「キャラクターの物語」を感じさせてくれることが私の中でのラブライブ!だったから、未熟DREAMERのこのダンスは本当に感動した。

 

その後の衝撃は、たぶんみんな感じたことだと思う。

 

花火が降り注ぎ、曲が終わった後、いつの間にかステージに鎮座しているグランドピアノ、こちらに背を向けゆっくりと階段を登る逢田さん。その時の私には、目の前の光景が本当に信じられなかった。何が起きようとしているのか、理解できなかった。ピアノが未経験という話はインタビューでも触れていたのに、まさか。まさか、本当に演奏するのか、なんて思いが過ぎったと同時に、逢田さんは階段を登りきり、振り返って一礼した。その時の表情は、もう誰が見てもガチガチに緊張してるのがわかるくらい固くて、それだけでこの人は本当にピアノを弾くつもりなんだ、本当に11話を再現するんだ、と直感でわかった。着席し、震える手を抑え、何回も、何回も深呼吸を繰り返し、目を瞑ってよしと頷いて、階段の下からじっと見つめ続けていた伊波さんと目を合わせて、頷き合う。その一連の動作が永遠に感じられるくらい、長い、長いコンセントレーションの時間だった。

 

8人が位置につき、静かなシンセのオケが流れ出す。伊波さんの歌とともに、逢田さんの弾く鍵盤の音が耳を打った。ピアノの横に設えられたカメラが、真剣な眼差しで、震える指先で、一音一音はっきりと、ピアノソロの旋律を慎重に奏でていく逢田さんを映す。エレクトーンとは違い、一つ一つのキーがかなりの重さを持つグランドピアノで、明らかに初心者とわかる慣れない手つきながらも、今の彼女には難しいはずの小節中のグリッサンドを、逢田さんは綺麗に成功させた。同時にギターやベース、ドラムのバンドサウンドの奔流が9人を包み込み、やがて歌い出す8人が大写しになった。その後も、笑う余裕もないまま、ただただ本気の表情で、しっかりと伴奏を弾く逢田さんの姿が時々映されていたような気がする。

 

曲はやがて終わりに向かう。伊波さんと斉藤さんが両サイドから手を伸ばし合う、アニメさながらのダンスからバトンタッチするかのように、オケとピアノの後奏が始まる。疾走するドラムが最後のスネアを響かせた瞬間、ひとり取り残されるピアノ。逢田さんはまったく緩むことのない顔で、最後の一音を、「想いよひとつになれ」ではなく、11話の梨子ちゃんがそうだったように、「海に還るもの」のラストの音を、その小さな指先で、けれど確かな存在感で、奏でた。あの瞬間だけは、階段の上と下で、世界が分かたれていた。1人と8人が別々の場所で想いをひとつにした、11話そのものだった。演奏が終わった瞬間、私はへたり込んでしまって、その後の逢田さんの顔や、8人がどんな表情をしていたかはまったく記憶にない。

 

逢田さんはアンコール後最後のMCで、「今回挑戦させてもらうことがすごく多くて、ピアノもそうなんだけど、どうなってしまうんだろうという恐怖があったんです」という旨の話をしていた。1万人以上、いやもっとそれ以上の人たちの前で未経験のピアノを弾く覚悟は、積み重ねてきた努力はいったいどれほどだったんだろうと、どれだけ桜内梨子に想いを懸けているんだろうと、涙が止まらなかった。

そして逢田さんは、「でもそれがあったおかげで、梨子ちゃんの気持ちが少しわかった気がしました」と語った。私の思う、キャラとキャストの関係の絶対性、不可侵性がその言葉の中に詰まっていた。キャストだけが掴み、近づくことのできるキャラの在り方、キャラの領域。ラブライブ!のライブが紡ぐ、2次元と3次元が繋がる感覚があった。トートロジーみたいなことを言うけど、ラブライブ!サンシャイン!!は確かにラブライブ!だったことを、私はそこで改めて思い知った。

 

初日、私の中で心に残っているのは、確実にハイライトとして掲げられる想いよひとつになれが終わった後、そのMCでの斉藤さんの発言だった。MCが進む中、やがてもじもじし始める斉藤さん。伊波さんたちにどうしたのと尋ねられ、ややあってからくるっと逢田さんに向き合う。そして、

 

「梨子ちゃん、おかえり!」

 

と、誰よりも早く梨子ちゃんの帰還を喜んだ。11話を経た曜ちゃんの想いが、その言葉と表情に溢れ出していた。千歌ちゃんが自分を見てくれていないかもしれないことへの不安や恐怖の中で、いつも千歌ちゃんと一緒に曲作りをする梨子ちゃんへの、嫉妬を形作るほどでもないもやもやとした気持ちを抱えたまま曜ちゃんは、ダンスのフォーメーションについて心配して連絡してくれた梨子ちゃんとの電話口で、鞠莉との「ぶっちゃけトーク」で緩んでいた胸の蓋が外れて、その中にあるどろっとした気持ち、普段見せない弱みを零してしまう。そして梨子ちゃんに千歌ちゃんへの想いを掬われ、梨子ちゃんの語る言葉とそれを証明する千歌ちゃんの行動で救われた曜ちゃんは、家を訪れた千歌ちゃんに縋り付いて泣きながら、梨子ちゃんにプレゼントされたシュシュを手首につけて、ようやく梨子ちゃんも大好きな友達だと思うことができた。その流れがあるからこそ、想いよひとつになれを披露した後で、曜ちゃんが真っ先に「梨子ちゃん、おかえり!」と言うことの意義はすごく大きかった。11話と12話の間で曜ちゃんが梨子ちゃんに対して絶対言ってるに違いない言葉だと、私に強く信じさせてくれる力があった。ライブの場が提示する「キャラクターの物語」、歌やダンスじゃなくとも、私の思うラブライブ!はここにも確かに存在していたんだと感じられた。

 

同じような感慨を感じたのは、そのMCの少し手前、未熟DREAMERについて触れているときの、「親愛なるお姉ちゃん!ようこそ、Aqoursへ!」というアニメに登場するルビィの台詞を再現した降幡さんに対して発せられた、「ありがとう、ルビィ」という小宮さんの言葉。でも、これはダイヤが言うだろうという言葉というよりも、最後まで意地を張って本音を言わなかったダイヤの本心を小宮さんがキャラに唯一近づき触れられるキャストとして代わりに言ってくれたような、そういう類の感慨だった。「梨子ちゃん、おかえり!」が渡辺曜としての言葉なら、「ありがとう、ルビィ」は小宮有紗としての言葉。どちらにもキャラとキャストのそれぞれの関係性を垣間見たような気がして、ラブライブ!のライブで私が見たかった、感じたかったことはこれなんだ、と強く印象に残ってる。

 

最後のMCで泣いてしまった高槻さんの話。高槻さんは普段のおちゃらけながらも空気がしっかり読める、場のバランサーとしてのスキルに長けたバラエティ力の塊という個人的なイメージがあって、涙から一番縁遠い人だと勝手に思っていたから、失礼な話だけど少しびっくりした。遡れば去年1月にメルパルクホールで開催された、Aqours初めてのイベントの中でダイジェストとして放送された合宿の映像で、9人が体力づくりでジョギングに励む中、1人だけぐっと離されてしまったキャストが高槻さんだった。以前からインタビューでも、合宿のときは自分だけ体力が無くて本当に情けなかったと語っていた高槻さんは、「Step! ZERO to ONE」を冠する今回のライブで「0になったことがありました」と、そのときの話を涙ぐみながら語っていた。そのとき、「マルちゃんと同じで、体力が無くて」と言っていたことで、こと花丸ちゃんへ近づくためであれば、このラブライブ!サンシャイン!!というプロジェクトにおいてであれば、体力がなかったことはポジティブに捉えられるんじゃないかと、私は身勝手なことを思ってしまった。キャラもキャストも同じ位置から、同じ「0」からスタートしたことは、Aqoursのキャストであるならば利点なんじゃないか、と。花丸ちゃんはアニメ全13話を経て、今はアニメPVの中でみんなと一緒に完璧なダンスを披露している。高槻さんも、今日はしっかり踊れていたんじゃないかと、LVのカメラ越しの素人目線で何がわかると言われればそれまでなんだけど、それでもその成長があるならばいいんじゃないかと、安全地帯の観客だから思えることが頭を過ぎっていた。そんなとき、高槻さんは笑顔で言い切った。

 

「でも、今は自信しかありません!」

 

この言葉を聞いて、そう思ってしまった自分が許されたような、それ以上に花丸ちゃんとのシンクロを強く感じたような、熱い気持ちが溢れた。それはまさに、8話で梨子ちゃんが「みんなで一緒に歩こう」と言い、キャラが手を繋ぎ合って進んでいったAqoursの姿を感じさせる一言。キャラ同士だけじゃなく、キャラとキャストが、花丸ちゃんと高槻さんが一緒に手を繋いで、同じ位置から二人三脚で進んでいく、そういう次元を超えた友情のようなものを感じて、涙が零れそうになった。「一歩を踏み出せたと思います」という言葉が、会場のスピーカーを通して劇場内に力強く響いた。その後で「ま、明日もあるんですけど」と笑いを誘って常に空気に気を配るところがやっぱり高槻さんの高槻さんたる所以だなと思いながらも、「今日の反省を活かして、明日も頑張ります」と宣言していたところにプロの心意気を感じたとともに、私は私自身の甘さを痛感した。

2日目、私は現地のメインステージ横のアリーナ席にいた。そこからは、アンコールで披露されたPops heartで踊るんだもん!を横並びでパフォーマンスするキャストをとても近くで見ることができた。歌詞にライブの今を重ねて泣きそうになりながらただ頷くだけだった私は、Bメロで目の前に来た高槻さんと目が合った。高槻さんは、顔を歪めた私の様子を見てにっこりと優しげな微笑みを浮かべて頷き、すぐに前を向いたと同時にサビに差し掛かった。サビで9人が同じダンスをするPopsheartで、初日に「体力がなかった」「今日の反省を活かして」と語った高槻さんは、みんなと一糸乱れぬ動きで完璧なダンスを披露しながら、ずっと笑顔のまま歌い続けていた。プロであればそれが当たり前なのかもしれないけど、私はそこに運動が苦手ながらも努力を重ねて踊れるようになった花丸ちゃんの姿と、何よりその楽しげな横顔に花丸ちゃんの優しい笑みを見たような気がした。2日目の挨拶で「身長がコンプレックスで、花丸ちゃんは一番小さいから」「Aqoursと花丸ちゃんのことをずっと考えてきた」という話をしていた高槻さん。私は今まで、告知や宣伝の場で「高槻かなこ」として高槻さんが喋っているとき、すぐに「ずら」を語尾につけて話す高槻さんが、正直に言うと少し苦手だった。今は花丸ちゃんとして喋ってるわけじゃないのにどうして「ずら」をつける必要があるの、シンクロってそういうことじゃないでしょ、と疑問が浮かぶばかりで。でも今回のライブを経て、それはずっと花丸ちゃんのことを考えてきたゆえで、喋るたびに「ずら」が付く花丸ちゃんのことばかりを考えてきたから、Aqoursの話をするときはそれが癖になってしまっているのかもしれないと思えるようになった。もちろん、真実は私にはわからない。それでも、このライブに懸ける想い、磨き上げたパフォーマンス、そして何よりも、高槻さんが見せた優しい微笑みが私に「国木田花丸」を感じさせてくれた。身長なんか些細な問題でしかなかったと、ラブライブ!における大前提をしっかり体現してみせた高槻さんは、間違いなくラブライブ!サンシャイン!!の、Aqoursの立派なメンバーだった。それがたまらなく、私にはうれしかった。

 

両日とも、最後のMCで「横浜アリーナは、私の憧れの場で。ラブライブ!、大好きなラブライブ!で、横浜アリーナに立ててひとつ夢が叶いました」「横浜アリーナに大好きなラブライブ!で出演できて、本当に嬉しいです」と涙ながらに語ったのは、鈴木愛奈さんだった。歌からダンスから、キャストの立ち姿からラブライブ!を感じられた私にとって、すごく、すごく身近な言葉だった。ラブライブ!サンシャイン!!は、Aqoursは、確かにラブライブ!を受け継いでいる。改めてその実感が蘇って、本当に楽しくて、うれしくて、幸せだった。ライブに参加する前と後で、Aqoursに対する気持ちが何倍にも大きくなってると思えた。私の中では少なくとも0じゃなかったし、倍数表現を使う。0から1への一歩を踏み出したのは、Aqoursの9人だったから。そしてきっと、まだ18人じゃない。これから、まだまだ新しい景色がたくさんある。そう思わせてくれる熱量に満ちた、すごく意味の大きなライブだった。

 

なんかごちゃごちゃしたけど、以上です。2日目のあのことは別に書きたい。