Aqours First LoveLive! ~Step! ZERO to ONE~ 2日目

異変は、突然だった。

 

2日目、少しだけMCの内容が変わりながらも、セットリストに大幅な変更はなくライブは佳境へ進んでいった。花火の演出とともに未熟DREAMERを終え、無言のまま、初日と同じように逢田さんが階段を登る。そして振り返った逢田さんは、しかし初日とは違うにっこりとした微笑みで、私たちにお辞儀をした。笑顔だった。昨日の経験が、初めて大舞台でピアノを弾いた経験が、今日の逢田さんにはきっと活きている。そう、私には思えた。

 

椅子に座ってからは、初日と同じコンセントレーション。しっかりと深呼吸を重ね、手に力を込め、伊波さんと目を合わせる。でも、その時間は初日よりも短かった。私は、どこか安心しながら、期待感とともにサクラピンクのブレードを握りしめ、桜内梨子の演奏を待っていた。

 

少しの後、伊波さんがゆっくりと歌い出す。逢田さんが緊張の面持ちで白鍵を叩く。初日と同じように、想いよひとつになれが始まった。ほどなくして差し掛かるピアノソロ。スクリーンに映る逢田さんの演奏に合わせ、高槻さんから順繰りに鍵盤を弾く手を重ねていった、そのときだった。

 

明らかに低い一音が、広い会場内に響き渡った。

そのときのカメラは、無情にも目を見開いたまま凍りついた表情の逢田さんを映していたことをよく覚えている。

時間が、止まったような気がした。

 

瞬間固まった会場の空気は、しかしグリスの絢爛な音色とともに吹き飛ばされた。何事もなかったように、曲は進んでいく。でも、そのときにはもう、逢田さんはオケに演奏を合わせることができなかったんだと思う。伊波さんと斉藤さんがAメロを歌い出した途中で、曲が中断された。今にして思えば、逢田さんを信じ続けたスタッフの英断だったんだろう。スクリーンに流れ出していたアニメの映像も停止し、代わりに映し出されたのは、混乱しているだろうキャストたち。今度こそ、会場は静寂に包まれた。何が起きているのか、理解できなかった。私の頭は、完全に真っ白になっていた。

 

一瞬の空白の後、ざわつき始めた空気を抑えるかのように、真っ先に伊波さんが駆け出した。涙を流し、しゃくり上げながら、過呼吸気味に「ごめんなさい、ごめんなさい」と口にする逢田さんを、伊波さんは「大丈夫だから」と抱きしめた。鈴木さんも駆け寄る。「大丈夫、絶対大丈夫、大丈夫」と、鞠莉の声で、いつものハイテンションな声音ではなく、Aqoursのお姉さんとしての落ち着いた小原鞠莉の声で、まるで子供をあやすかのごとく、逢田さんに優しく、しかし力強く、語りかけ続けた。そしてもう一人階段を駆け上がり、背を向けて観客から逢田さんの姿を隠していたキャストがいた。私は目の前の出来事を頭で処理することに必死で誰だったかまでは覚えていないけど、諏訪さんだったらしい。

 

やがて会場からは、「りきゃこー!!」「がんばれー!!」「行けるぞー!!」と、あちこちから声援が飛び交い始めた。ゆっくりと、会場が息を吹き返していた。自分にできることはただ声を届けることしかないと、そこで私はようやく「応援すること」の意味を理解したような気がした。喉が千切れんばかりの大音声で、「がんばれー!!」と何度も叫んだ。あんなにがむしゃらに泣き叫んだのは、人生でも初めてのことだったかもしれない。たくさんの声援たちは、やがて「梨香子!梨香子!」という、梨子でもりきゃこでもなく、逢田梨香子の名前を呼ぶひとつの大きな声へと収束していった。その大合唱の中、広い会場を照らす光は、サクラピンクただ一色だった。

 

駆け寄ったメンバーたちが定位置へと戻るとともに、梨香子コールは落ち着きを見せていく。そして、もう一度、想いよひとつになれが始まった。涙に濡れた顔で、逢田さんがピアノを弾き始める。私はブレードを握りしめながら、ただただ成功を祈り続けた。そして、さっき躓いてしまった前奏のピアノソロが再び訪れた。それを、逢田さんは初日よりも震える手つきで、しかし正確に演奏したのだった。その瞬間、大音量になるオケに負けないくらいの大歓声が上がったのは、きっと気のせいじゃなかったと思う。

 

私はかねてから、想いよひとつになれのCメロが好きだった。

曲展開、歌詞、ひとつひとつの音。どれを取っても、気分が高揚するような、でもどこか切なくなるような、そんな印象があった。間奏を終え、Cメロに入ったそのとき、私はこの歌詞に大きな意味が与えられたことを実感した。ミスをした逢田さんを抱きしめた伊波さん、優しく声をかけ続けた鈴木さん、ただ黙って傍に居てあげた諏訪さん、下で再起を信じて待っていた高槻さん、降幡さん、小林さん、斉藤さん、小宮さん。きっとそれができたのは、今までの長い、長い練習の中で、9人でかけがえのない日々を過ごしてきたからこその、強い絆の力のおかげだったと思う。もう、Aqoursは完全な1つのチームだった。逢田さんの奏でるピアノをバックに、8人がひとりひとり、Cメロの歌詞を紡いでいく。そして、ラストを飾る伊波さんが、今までよりも一際大きな声で、「ひとりじゃない」と高らかに歌い上げた。よく通るその歌声と強いメッセージが、会場内を満たした。そのステージには、あまりにも美しい、青春を共に駆ける仲間の絆があった。

 

最後の一節を歌い終え、想いよひとつになれは後奏を迎える。待ち構えるは、曲を締めくくるピアノソロ。初日と同じように、カメラがピアノを捉える。涙の痕を残しながら、逢田さんは真剣な、真剣な表情で、一音一音確かめるように、奏でていく。そして、最後の一音が指すその白鍵を、がくがくと震える小さなその指で、打った。高く澄んだ、綺麗なピアノの音が、梨子ちゃんの奏でたそれと全く同じ美しい音が、会場にすぅっと吸い込まれていった。数瞬の後、割れんばかりの拍手と歓声が、会場を包み込んだ。Aqoursの想いが、スタッフチームの想いが、私たちの想いが、ライブを見守るすべての人たちの想いが、ひとつになった瞬間だった。

 

演奏後、逢田さんは暗転した闇の中、ひとり下がっていった。残された8人は初日と同じ調子のMCを、初日と同じ様子で繰り広げる。あれだけのトラブルがあったのにもかかわらず、みんなとても落ち着いていた。観客を不安にさせないための、プロの姿だった。やがて、メイク直しを終えた逢田さんが戻ってきた。未熟DREAMERトークが進む中、逢田さんは衣装を見せる流れにも参加しつつ、いよいよ話題は想いよひとつになれに移る。そこで、逢田さんが初めて口にした言葉がこれだった。

 

「ごめーん間違えちゃったー!マジごめーん」

 

すごく、すごく軽い調子で、さっきまで泣きながら過呼吸を起こしていた人と同一人物とは思えないくらいの明るい調子で、逢田さんはそう言った。なんて強靭な精神力を持ち合わせているんだろうと、どれだけ観客思いなんだろうと、私はとてつもない衝撃を受けた。そもそも考えてみれば、あの張り詰めた空気の中、不安定なあの状態で、1回目よりも格段に難しい2回目で最後までピアノを弾ききってみせたこと自体が、およそ常人にはできないことだった。逢田さんは「でも、みんなの声が聞こえてきたから最後までがんばれた。ありがとう」とも語っていた。自分で精一杯だっただろうに、どこまでも観客のことを考えてくれているプロ意識、ともすればプレッシャーに変貌しかねない大きな声援をすべて自分の力へと変えてみせたその胆力こそが、逢田さんがその小さな身体に宿すパワーの源なんだろうと思う。最後に、逢田さんは「みんなに支えられてるんだなって、改めて感じ入っちゃった」と、メンバーへの感謝を告げていた。何度も感じた、絆の力だった。

その話の中で、一際強く私の心に響いたのは伊波さんのフォローだった。

 

「だって生ですから!何が起きるかわかんないから!」

 

それがライブだと、笑顔で言い切ったのだった。

「これからも、いろんなことがあると思う。嬉しいことばかりじゃなくて、つらくて、大変なことだっていっぱいあると思う。でも私、それを楽しみたい!全部を楽しんで、みんなと進んでいきたい!それがきっと、輝くってことだと思う!」

13話で千歌ちゃんが言ったこの言葉が、今回のライブの場でとても大きな意味合いを持ち始めた。ライブで起きたアクシデントに対しての、高海千歌たる伊波さんの答え。千歌ちゃんの精神性、千歌ちゃんの見つけた答えを、伊波さんはしっかりと理解し、表現していた。「新たな物語」が付与された、ラブライブ!を感じた瞬間だった。

 

ライブは終盤に差し掛かり、アニメのダイジェストを経て、初日と同じように13話の演劇が始まった。5分ほどもあるあの長丁場に、収録とは違い1回のミスも許されない再現に、9人は再び挑戦していた。私にできることはただ、噛まないことを祈ることだけだった。サクラピンクのままのブレードを強く握り、ただ祈りを捧げていた。そして、梨子ちゃんの台詞が訪れる。

 

「輝きたい!」

 

その言葉を言った逢田さんの表情は、アニメで描かれていた、顔を輝かせる梨子ちゃんとはあまりにもかけ離れていた。ピアノを弾いていたときのような、凛々しさを感じさせる真剣な顔つきだった。桜内梨子ではなく、逢田梨香子としての心からの叫びのように思えた。そこからはもう、演劇の一言一言が、ずしりとした重みを増して私の胸に響き続けた。

 

「起きること全てを受け止めて」「全てを楽しもうと」「それが、輝くことだから!」

 

なんて、なんてライブだろう。「輝くって、楽しむこと」。初日、小林さんが最後のMCで引用した、千歌ちゃんの言葉。「輝くこと」と「楽しむこと」を同義とした13話の意義はここにあったのかと、頭がパニックになるほどのトラブルを乗り越え、それでも楽しみたい、輝きたいと願うことがラブライブ!サンシャイン!!だと、Aqoursの在りたい姿なんだと、何倍も、何倍も強くなった説得力で実感させてくれた。だからこそ、逢田さんは真剣な表情で「輝きたい!」と叫んだんだと、そう強く思えた。それだけで、あの演劇にはとてつもなく大きな意味が与えられた。きっと、このライブの場には奇跡も必然もなかったと思う。2日目にあったものは、千歌ちゃんたち2年生がμ'sに憧れたように、「諦めない気持ち」と「信じる力」があったからこそ、そしてみんなの絆とそれを包み込む全員の想いがあったからこそ結実した、青春の輝きだった。

 

逢田さんは終演後、更新した自身のTwitterで「とにかく楽しかった!!」とツイートしていた。もうあのライブの中で答えを見つけていたこと、ピアノのミスがあってもなお「楽しかった」と言ってくれること、私はただ救われる思いだった。その後Instagramではピアノのことについて触れ、「失敗は失敗」「プロとしてステージに立たせて貰ってる以上失格」と割り切り、私に泣く資格はないからと、その後は笑顔でパフォーマンスをするしかできなかったと綴っていた。思い返せば、小林さんや鈴木さん、諏訪さんも涙ぐみかけていた最後のMCが終わっても、逢田さんはひとしずくの涙も見せていなかった。本当にどれほど私たち観る側のことを考え続けてくれているのか、そんなにまで自分を押し殺せるくらいのタフな気持ちはどこから湧いてくるのか、逢田さんの心の強さを改めて思い知らされる言葉たちだった。

 

楽しくて泣いたとか、悲しくて泣いたとかじゃなくて、今回私は「人の想い」に触れて、それに感動してた気がします。すごく、すごく心に残るライブでした。本当に、一生の思い出です。

Aqours First LoveLive! ~Step! ZERO to ONE~ 1日目

雑感です。たぶん機械的な文章だと思う。

 

たぶん私の中でもライブの転機は未熟DREAMERと、やっぱり想いよひとつになれだったんだと思う。

 

それまでも楽しかったし、青空Jumping Heartではキャストが本当に踊っているのを見て自然と涙が出てきたりもしたんだけど、ただクオリティの高い曲とパフォーマンスを眺めていただけだった節は正直認めざるを得なかった。一番大好きな夢で夜空を照らしたいも、ただ「良い曲だな」という思いだけで耳を通り過ぎていってしまって、大きく気持ちが揺さぶられることはなかった。ユニットパートに入り、CYaRon!の表情の豊かさやAZALEAの花舞う軽やかなダンスに心を奪われ、背景で炎が燃え上がる中最高の盛り上がりを見せたGuilty Kissのターンを終えた辺りで、会場の一体感とは裏腹に、私の心にはこのままただ楽しかったライブで終わっちゃうのかな、という不安が兆し始めていた。

 

その後、アニメのダイジェストの流れをシームレスに受け継いでから、9人揃ったAqoursとして満を持して披露された未熟DREAMER。今までの楽曲の中でも一番トリッキーなこの曲のダイナミックなオケに合わせて、歌が紡がれダンスが披露されていくさまを見つめながら、それでも私は「良い曲だな」という気持ちが浮かぶだけだった。再現されてることへの感慨が薄かったというか、ハイコンテクストな言い方をすると、ラブライブ!を感じられなかったんだと思う。でも、それが変わったのが2サビだった。

 

「ひとりじゃない 無理しないでよ」

 

アニメ尺にはないこの歌詞の一節で、諏訪さんと鈴木さんが両側から小宮さんを抱きしめた。それだけで、その一瞬だけで、私の中で未熟DREAMERという曲に奥行き、深みが生まれた感覚が確かにあった。アニメ9話は個人的に引っかかりが解けなくて、このブログで写経するくらいうんうん悩んでたんだけど、それでも果南と鞠莉が「ひとりじゃない 無理しないでよ」と語りながらダイヤを抱きしめる姿を見て、3年生の友情が胸にすっと沁みた。大好きだったスクールアイドルを大好きな友達の将来と大好きな友達の想いのために諦めて、大好きな妹に八つ当たりしてしまうくらいAqoursやμ'sへの気持ちを抑え続けて、2年もの間ずっとずっと自分のことよりも果南と鞠莉のことだけを考えて、3年生になってからは生徒会の仕事をもただ1人で背負い、最後の最後まで意地を張り続け、自分にすら嘘をついて「無理してきた」ダイヤ。そんなダイヤへ、今までずっと自分たちの都合で振り回し続けたダイヤへ、新生Aqoursとダイヤのおかげですれ違いが解決した果南と鞠莉が、今までの贖罪と感謝と友情と想いを込めて送ったプレゼントは、3年生の過去にずっと描かれていた「ハグ」だった。

これこそが、私がライブで見たかった「物語」だった。ライブによって付与される新たな視点、文脈、価値観、バックグラウンド、なんでもいいけど、とにかく歌やダンスで「キャラクターの物語」を感じさせてくれることが私の中でのラブライブ!だったから、未熟DREAMERのこのダンスは本当に感動した。

 

その後の衝撃は、たぶんみんな感じたことだと思う。

 

花火が降り注ぎ、曲が終わった後、いつの間にかステージに鎮座しているグランドピアノ、こちらに背を向けゆっくりと階段を登る逢田さん。その時の私には、目の前の光景が本当に信じられなかった。何が起きようとしているのか、理解できなかった。ピアノが未経験という話はインタビューでも触れていたのに、まさか。まさか、本当に演奏するのか、なんて思いが過ぎったと同時に、逢田さんは階段を登りきり、振り返って一礼した。その時の表情は、もう誰が見てもガチガチに緊張してるのがわかるくらい固くて、それだけでこの人は本当にピアノを弾くつもりなんだ、本当に11話を再現するんだ、と直感でわかった。着席し、震える手を抑え、何回も、何回も深呼吸を繰り返し、目を瞑ってよしと頷いて、階段の下からじっと見つめ続けていた伊波さんと目を合わせて、頷き合う。その一連の動作が永遠に感じられるくらい、長い、長いコンセントレーションの時間だった。

 

8人が位置につき、静かなシンセのオケが流れ出す。伊波さんの歌とともに、逢田さんの弾く鍵盤の音が耳を打った。ピアノの横に設えられたカメラが、真剣な眼差しで、震える指先で、一音一音はっきりと、ピアノソロの旋律を慎重に奏でていく逢田さんを映す。エレクトーンとは違い、一つ一つのキーがかなりの重さを持つグランドピアノで、明らかに初心者とわかる慣れない手つきながらも、今の彼女には難しいはずの小節中のグリッサンドを、逢田さんは綺麗に成功させた。同時にギターやベース、ドラムのバンドサウンドの奔流が9人を包み込み、やがて歌い出す8人が大写しになった。その後も、笑う余裕もないまま、ただただ本気の表情で、しっかりと伴奏を弾く逢田さんの姿が時々映されていたような気がする。

 

曲はやがて終わりに向かう。伊波さんと斉藤さんが両サイドから手を伸ばし合う、アニメさながらのダンスからバトンタッチするかのように、オケとピアノの後奏が始まる。疾走するドラムが最後のスネアを響かせた瞬間、ひとり取り残されるピアノ。逢田さんはまったく緩むことのない顔で、最後の一音を、「想いよひとつになれ」ではなく、11話の梨子ちゃんがそうだったように、「海に還るもの」のラストの音を、その小さな指先で、けれど確かな存在感で、奏でた。あの瞬間だけは、階段の上と下で、世界が分かたれていた。1人と8人が別々の場所で想いをひとつにした、11話そのものだった。演奏が終わった瞬間、私はへたり込んでしまって、その後の逢田さんの顔や、8人がどんな表情をしていたかはまったく記憶にない。

 

逢田さんはアンコール後最後のMCで、「今回挑戦させてもらうことがすごく多くて、ピアノもそうなんだけど、どうなってしまうんだろうという恐怖があったんです」という旨の話をしていた。1万人以上、いやもっとそれ以上の人たちの前で未経験のピアノを弾く覚悟は、積み重ねてきた努力はいったいどれほどだったんだろうと、どれだけ桜内梨子に想いを懸けているんだろうと、涙が止まらなかった。

そして逢田さんは、「でもそれがあったおかげで、梨子ちゃんの気持ちが少しわかった気がしました」と語った。私の思う、キャラとキャストの関係の絶対性、不可侵性がその言葉の中に詰まっていた。キャストだけが掴み、近づくことのできるキャラの在り方、キャラの領域。ラブライブ!のライブが紡ぐ、2次元と3次元が繋がる感覚があった。トートロジーみたいなことを言うけど、ラブライブ!サンシャイン!!は確かにラブライブ!だったことを、私はそこで改めて思い知った。

 

初日、私の中で心に残っているのは、確実にハイライトとして掲げられる想いよひとつになれが終わった後、そのMCでの斉藤さんの発言だった。MCが進む中、やがてもじもじし始める斉藤さん。伊波さんたちにどうしたのと尋ねられ、ややあってからくるっと逢田さんに向き合う。そして、

 

「梨子ちゃん、おかえり!」

 

と、誰よりも早く梨子ちゃんの帰還を喜んだ。11話を経た曜ちゃんの想いが、その言葉と表情に溢れ出していた。千歌ちゃんが自分を見てくれていないかもしれないことへの不安や恐怖の中で、いつも千歌ちゃんと一緒に曲作りをする梨子ちゃんへの、嫉妬を形作るほどでもないもやもやとした気持ちを抱えたまま曜ちゃんは、ダンスのフォーメーションについて心配して連絡してくれた梨子ちゃんとの電話口で、鞠莉との「ぶっちゃけトーク」で緩んでいた胸の蓋が外れて、その中にあるどろっとした気持ち、普段見せない弱みを零してしまう。そして梨子ちゃんに千歌ちゃんへの想いを掬われ、梨子ちゃんの語る言葉とそれを証明する千歌ちゃんの行動で救われた曜ちゃんは、家を訪れた千歌ちゃんに縋り付いて泣きながら、梨子ちゃんにプレゼントされたシュシュを手首につけて、ようやく梨子ちゃんも大好きな友達だと思うことができた。その流れがあるからこそ、想いよひとつになれを披露した後で、曜ちゃんが真っ先に「梨子ちゃん、おかえり!」と言うことの意義はすごく大きかった。11話と12話の間で曜ちゃんが梨子ちゃんに対して絶対言ってるに違いない言葉だと、私に強く信じさせてくれる力があった。ライブの場が提示する「キャラクターの物語」、歌やダンスじゃなくとも、私の思うラブライブ!はここにも確かに存在していたんだと感じられた。

 

同じような感慨を感じたのは、そのMCの少し手前、未熟DREAMERについて触れているときの、「親愛なるお姉ちゃん!ようこそ、Aqoursへ!」というアニメに登場するルビィの台詞を再現した降幡さんに対して発せられた、「ありがとう、ルビィ」という小宮さんの言葉。でも、これはダイヤが言うだろうという言葉というよりも、最後まで意地を張って本音を言わなかったダイヤの本心を小宮さんがキャラに唯一近づき触れられるキャストとして代わりに言ってくれたような、そういう類の感慨だった。「梨子ちゃん、おかえり!」が渡辺曜としての言葉なら、「ありがとう、ルビィ」は小宮有紗としての言葉。どちらにもキャラとキャストのそれぞれの関係性を垣間見たような気がして、ラブライブ!のライブで私が見たかった、感じたかったことはこれなんだ、と強く印象に残ってる。

 

最後のMCで泣いてしまった高槻さんの話。高槻さんは普段のおちゃらけながらも空気がしっかり読める、場のバランサーとしてのスキルに長けたバラエティ力の塊という個人的なイメージがあって、涙から一番縁遠い人だと勝手に思っていたから、失礼な話だけど少しびっくりした。遡れば去年1月にメルパルクホールで開催された、Aqours初めてのイベントの中でダイジェストとして放送された合宿の映像で、9人が体力づくりでジョギングに励む中、1人だけぐっと離されてしまったキャストが高槻さんだった。以前からインタビューでも、合宿のときは自分だけ体力が無くて本当に情けなかったと語っていた高槻さんは、「Step! ZERO to ONE」を冠する今回のライブで「0になったことがありました」と、そのときの話を涙ぐみながら語っていた。そのとき、「マルちゃんと同じで、体力が無くて」と言っていたことで、こと花丸ちゃんへ近づくためであれば、このラブライブ!サンシャイン!!というプロジェクトにおいてであれば、体力がなかったことはポジティブに捉えられるんじゃないかと、私は身勝手なことを思ってしまった。キャラもキャストも同じ位置から、同じ「0」からスタートしたことは、Aqoursのキャストであるならば利点なんじゃないか、と。花丸ちゃんはアニメ全13話を経て、今はアニメPVの中でみんなと一緒に完璧なダンスを披露している。高槻さんも、今日はしっかり踊れていたんじゃないかと、LVのカメラ越しの素人目線で何がわかると言われればそれまでなんだけど、それでもその成長があるならばいいんじゃないかと、安全地帯の観客だから思えることが頭を過ぎっていた。そんなとき、高槻さんは笑顔で言い切った。

 

「でも、今は自信しかありません!」

 

この言葉を聞いて、そう思ってしまった自分が許されたような、それ以上に花丸ちゃんとのシンクロを強く感じたような、熱い気持ちが溢れた。それはまさに、8話で梨子ちゃんが「みんなで一緒に歩こう」と言い、キャラが手を繋ぎ合って進んでいったAqoursの姿を感じさせる一言。キャラ同士だけじゃなく、キャラとキャストが、花丸ちゃんと高槻さんが一緒に手を繋いで、同じ位置から二人三脚で進んでいく、そういう次元を超えた友情のようなものを感じて、涙が零れそうになった。「一歩を踏み出せたと思います」という言葉が、会場のスピーカーを通して劇場内に力強く響いた。その後で「ま、明日もあるんですけど」と笑いを誘って常に空気に気を配るところがやっぱり高槻さんの高槻さんたる所以だなと思いながらも、「今日の反省を活かして、明日も頑張ります」と宣言していたところにプロの心意気を感じたとともに、私は私自身の甘さを痛感した。

2日目、私は現地のメインステージ横のアリーナ席にいた。そこからは、アンコールで披露されたPops heartで踊るんだもん!を横並びでパフォーマンスするキャストをとても近くで見ることができた。歌詞にライブの今を重ねて泣きそうになりながらただ頷くだけだった私は、Bメロで目の前に来た高槻さんと目が合った。高槻さんは、顔を歪めた私の様子を見てにっこりと優しげな微笑みを浮かべて頷き、すぐに前を向いたと同時にサビに差し掛かった。サビで9人が同じダンスをするPopsheartで、初日に「体力がなかった」「今日の反省を活かして」と語った高槻さんは、みんなと一糸乱れぬ動きで完璧なダンスを披露しながら、ずっと笑顔のまま歌い続けていた。プロであればそれが当たり前なのかもしれないけど、私はそこに運動が苦手ながらも努力を重ねて踊れるようになった花丸ちゃんの姿と、何よりその楽しげな横顔に花丸ちゃんの優しい笑みを見たような気がした。2日目の挨拶で「身長がコンプレックスで、花丸ちゃんは一番小さいから」「Aqoursと花丸ちゃんのことをずっと考えてきた」という話をしていた高槻さん。私は今まで、告知や宣伝の場で「高槻かなこ」として高槻さんが喋っているとき、すぐに「ずら」を語尾につけて話す高槻さんが、正直に言うと少し苦手だった。今は花丸ちゃんとして喋ってるわけじゃないのにどうして「ずら」をつける必要があるの、シンクロってそういうことじゃないでしょ、と疑問が浮かぶばかりで。でも今回のライブを経て、それはずっと花丸ちゃんのことを考えてきたゆえで、喋るたびに「ずら」が付く花丸ちゃんのことばかりを考えてきたから、Aqoursの話をするときはそれが癖になってしまっているのかもしれないと思えるようになった。もちろん、真実は私にはわからない。それでも、このライブに懸ける想い、磨き上げたパフォーマンス、そして何よりも、高槻さんが見せた優しい微笑みが私に「国木田花丸」を感じさせてくれた。身長なんか些細な問題でしかなかったと、ラブライブ!における大前提をしっかり体現してみせた高槻さんは、間違いなくラブライブ!サンシャイン!!の、Aqoursの立派なメンバーだった。それがたまらなく、私にはうれしかった。

 

両日とも、最後のMCで「横浜アリーナは、私の憧れの場で。ラブライブ!、大好きなラブライブ!で、横浜アリーナに立ててひとつ夢が叶いました」「横浜アリーナに大好きなラブライブ!で出演できて、本当に嬉しいです」と涙ながらに語ったのは、鈴木愛奈さんだった。歌からダンスから、キャストの立ち姿からラブライブ!を感じられた私にとって、すごく、すごく身近な言葉だった。ラブライブ!サンシャイン!!は、Aqoursは、確かにラブライブ!を受け継いでいる。改めてその実感が蘇って、本当に楽しくて、うれしくて、幸せだった。ライブに参加する前と後で、Aqoursに対する気持ちが何倍にも大きくなってると思えた。私の中では少なくとも0じゃなかったし、倍数表現を使う。0から1への一歩を踏み出したのは、Aqoursの9人だったから。そしてきっと、まだ18人じゃない。これから、まだまだ新しい景色がたくさんある。そう思わせてくれる熱量に満ちた、すごく意味の大きなライブだった。

 

なんかごちゃごちゃしたけど、以上です。2日目のあのことは別に書きたい。

9話写経

鞠莉『……え?』

果南『私、スクールアイドル、やめようと思う』

ダイヤ『……』

鞠莉『……なんで?』

鞠莉『まだ引きずっているの?東京で歌えなかったくらいで……』

果南『……鞠莉、留学の話が来てるんでしょ?行くべきだよ』

鞠莉『どうして……?冗談はやめて?』

鞠莉『前にも言ったでしょ、その話は断ったって……ダイヤも、なんか言ってよ』

ダイヤ『……』

鞠莉『……ダイヤ……』

果南『ダイヤも同じ意見。もう続けても、意味がない』

鞠莉『……』

鞠莉『……果南!ダイヤ!』

果南『……』

ダイヤ『……』

鞠莉『……』

果南『……終わりにしよう』

 

OP

 

ルビィ「夏祭り?」

花丸「屋台も出るずら……」

善子「……これは、痕跡……?僅かに残っている、気配……」

ルビィ「……どうしよ、東京へ行ってからすっかり元に戻っちゃって」

花丸「ほっとくずら」

梨子「それより、しいたけちゃん本当に散歩でいないわよね?」

曜「千歌ちゃんは夏祭り、どうするの?」

千歌「そうだねー……決めないとねー……」

曜「沼津の花火大会って言ったら、ここら辺じゃ一番のイベントだよ。そこから、オファーが来てるんでしょ?」

花丸「Aqoursを知ってもらうには一番ずらね」

ルビィ「でも、今からじゃあんまり練習時間ないよね……」

梨子「私は、今は練習を優先した方がいいと思うけど」

曜「……千歌ちゃんは?」

曜「?」

千歌「……うん!私は出たいかな!」

曜「……そっか!」

梨子「千歌ちゃん……!」

千歌「今の私たちの全力を見てもらう。それでダメだったら、また頑張る。それを繰り返すしかないんじゃないかな」

曜「ヨーソロー!賛成であります!」

善子「ぎらん!」

千歌「……うん!」

曜「……変わったね、千歌ちゃん」

梨子「うん」

ルビィ「ピギィ!?」

善子「ちょっとー、待ちなさいよー!激おこデーモン丸ー!」

千歌「…………」

 

 

果南『ん?』

千歌『はぁ、はぁ……』

果南『練習、頑張ってね』

千歌『……やってたんだよね?スクールアイドル……』

果南『聞いちゃったか……ちょっとだけね』

千歌『……』

 

 

梨子「どうしたの?」

千歌「果南ちゃん、どうしてスクールアイドルやめちゃったんだろう」

善子「生徒会長が言ってたでしょ?東京のイベントで歌えなかったからだ、って」

千歌「でも、それでやめちゃうような性格じゃないと思う」

梨子「そうなの?」

千歌「うん。小さい頃は、いつも一緒に遊んでて――」

 

果南『こわくないって、チカ!ここでやめたらこうかいするよ!』

千歌『うぅぅ……』

果南『ぜったいできるから!』

千歌『ううぅ……』

果南『さぁ!』

千歌『……!たぁっ……!』

 

梨子「――そうだったのね」

ルビィ「とてもそんな風には見えませんけど……あっ!すいません……」

善子「……まさか!天界の眷属が憑依……!?」

千歌「もう少し、スクールアイドルやっていた頃のことがわかればいいんだけどな……」

曜「聞くまで、全然知らなかったもんね(You didn't know about it at all until you asked, huh?)」

「「「……?」」」

ルビィ「ピギィ!?」

千歌「……ルビィちゃん、ダイヤさんから何か聞いてない?」

曜「小耳に挟んだとか」

梨子「ずっと一緒に家にいるのよね?何かあるはずよ!」

ルビィ「え……あわわ……うぅ……ピギィィ~!」

千歌「あ、逃げた!」

善子「フッ……とぉりゃあああ!堕天使奥義、堕天龍鳳凰縛!!」

花丸「やめるずら?」

善子「あ……はい……」

 

 

千歌「ほんとに?」

ルビィ「……ルビィが聞いたのは、東京のライブが上手く行かなかったって話くらいです」

ルビィ「それから、スクールアイドルの話はほとんどしなくなっちゃったので……」

ルビィ「ただ……」

「「「ただ?」」」

ルビィ「は、あははは――」

 

ルビィ『……』

鞠莉『……』3年生の制服

ダイヤ『逃げてるわけじゃありませんわ。だから、果南さんのことを逃げたなんて言わないで』

ルビィ『……』

 

ルビィ「――って」

千歌「逃げたわけじゃない、か……」

 

 

果南「うぅ~ん……よっと」

果南「はっ、はっ……」

「「「……」」」

花丸「ふわ~ぁ、まだ眠いずら……」

ルビィ「毎日こんな朝早く起きてるんですねー……」

梨子「それより、こんな大人数で尾行したらバレるわ!」

曜「だって、みんな来たいって言うし」

千歌「はぁ、しっかし速いね~……」

善子「いったい、はぁ、どこまで走るつもり~……?」

曜「もう、かなり走ってるよね?」

花丸「はぁ、マル、もうダメずら……」

ルビィ「花丸ちゃん……!」

千歌「でもなんか……気持ちよさそうだね」

梨子「はぁ、はぁ……そうね……」

「「「はぁ、はぁ……」」」

千歌「はぁ、はぁ……ん?」

果南「――」

千歌「きれい……」

千歌「……?」

鞠莉「……」パチパチ

果南「……」

鞠莉「復学届、提出したのね」

果南「まあね……」

鞠莉「やっと逃げるのを諦めた?」

果南「……!」

果南「……勘違いしないで。学校を休んでいたのは、父さんの怪我がもとで……それに、復学してもスクールアイドルはやらない」

鞠莉「私の知っている果南は、どんな失敗をしても笑顔で次に向かって走り出していた。成功するまで、諦めなかった」

果南「……卒業まで、あと1年もないんだよ」

鞠莉「それだけあれば充分。それに、今は後輩もいる」

「「「!?」」」

果南「……だったら、千歌たちに任せればいい」

鞠莉「……果南……」

果南「どうして戻ってきたの?私は、戻ってきてほしくなかった」

鞠莉「果南……!?」

鞠莉「……ふふ、相変わらず果南は頑固な――」

果南「――もうやめて」

鞠莉「っ!」

果南「……もう、あなたの顔……見たくないの」

鞠莉「っ……!……」

「「「はぁ、はぁ……」」」

ルビィ「ひどい……」

花丸「かわいそうずら……」

曜「やっぱり、何かありそうだね」

千歌「うん……」

梨子「『逃げるの、諦めた』か……」

千歌「?」

梨子「ううん、なんでもない」

千歌「……」

 

 

千歌「果南ちゃんが!?」

曜「うん。今日から学校に来るって」

梨子「それで、鞠莉さんは?」

曜「まだ、わからないけど……」

「「「……」」」

 

果南「……」

鞠莉「……」

「「「……」」」

鞠莉「……果南」

果南「……」

 

曜「くんくん……制服!!」

ちかりこ「「うわぁっ!?ダメ!!」」

曜「あーちょっ……あ……」

ちかりこ「「はぁ……」」

千歌「……これって……スクールアイドルの……?」

 

Bパート

 

ルビィ「……」

花丸「……」

千歌「……!」

果南「離して!離せって言ってるの!」

鞠莉「いいと言うまで離さない!!強情も大概にしておきなさい!!たった一度失敗したくらいで、いつまでもネガティブに……!」

果南「うるさい!いつまでもはどっち!?もう2年前の話だよ!!だいたい今更スクールアイドルなんて……!私たち、もう3年生なんだよ!!」

ダイヤ「2人とも、おやめなさい!みんな見てますわよ!!」

鞠莉「ダイヤもそう思うでしょう!?」

ダイヤ「やめなさい!いくら粘っても果南さんは再びスクールアイドルを始めることはありませんわ!」

鞠莉「どうして!?あの時の失敗をそんなに引きずること!?千歌っちたちだって、再スタートを切ろうとしてるのに、なんで!!」

果南「千歌とは違うの!!」

千歌「……!」

曜「千歌ちゃん!」

果南「鞠莉には他にもやるべきことがたくさんあるでしょ!?」

果南「……千歌?」

鞠莉「?」

ダイヤ「?」

千歌「……すぅっ……いい加減に――――!!」

千歌「――しろーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

千歌「もう、なんかよくわからない話をいつまでもずーっと、ずーっと、ずーーーーーーーーーーーーっっっと!!隠してないで、ちゃんと話しなさい!!!!」

果南「……千歌には関係な――」

千歌「あるよ!!!!!」

ダイヤ「いや、ですが……」

千歌「ダイヤさんも!鞠莉さんも!3人揃って放課後、部室に来てください」

果南「いや、でも……」

千歌「いいですね!?!?!?」

「「「……はい」」」

曜「……千歌ちゃんすごい……!」

ルビィ「3年生に向かって……」

千歌「…………あ」

 

 

果南「だから、東京のイベントで歌えなくて!」

千歌「その話はダイヤさんから聞いた」

果南「……!」ジロッ

ダイヤ「……!……」プイッ

果南「……」

千歌「でも、それで諦めるような果南ちゃんじゃないでしょ?」

鞠莉「そうそう、千歌っちの言う通りよ!だから何度も言ってるのに!」

果南「……」

千歌「何か事情があるんだよね?」

果南「……」

千歌「ね……?」

果南「……そんなものないよ。さっき言ったとおり、私が歌えなかっただけ」

ダイヤ「……」

千歌「~~!!イライラする~~っ!!!」

鞠莉「その気持ち、よぉ~くわかるよ~!!ほんっと腹立つよねぇコイツ!!!」

果南「勝手に鞠莉がイライラしているだけでしょ!?」

ルビィ「でも、この前弁天島で踊っていたような……」

果南「~~っ!」

花丸「ずら!」

ルビィ「ピギッ!」

鞠莉「おぉー、赤くなってるーww」

果南「うるさい……!」

ダイヤ「……」微笑む

鞠莉「ふふっ、やーっぱり未練あるんでしょー?」

果南「……っ!」

果南「……うるさい」

鞠莉「っ……」

果南「未練なんてない!とにかく私は、もう嫌になったの」

ダイヤ「……」

果南「スクールアイドルは……絶対にやらない」

梨子「……まったく。ダイヤさん」

ダイヤ「……!?」

梨子「何か知ってますよね?」

ダイヤ「え!?わたくしはなにも……」

梨子「じゃあどうしてさっき、果南さんの肩を持ったんですか?」

ダイヤ「そ、それは……」

ダイヤ「……っ!」ダッ

千歌「善子ちゃん!」

善子「ぎらん!」

ダイヤ「ピギャアァァァ!」

善子「ヨハネだってばー!!」

ルビィ「お姉ちゃん……」

花丸「さすが姉妹ずら……」

 

 

ダイヤ「……」

「「「わざと!?」」」

ダイヤ「……そう、東京のイベントで果南さんは歌えなかったんじゃない。わざと歌わなかったんですの」

鞠莉「どうして?」

善子「まさか、闇の魔術――うぁっ!?」

花丸「……」

ダイヤ「あなたのためですわ」

鞠莉「私の……?」

ダイヤ「覚えていませんか?あの日、鞠莉さんは怪我をしていたでしょう?」

鞠莉「……」

 

鞠莉『……っ!』

ダイヤ『大丈夫ですの!?』

鞠莉『全然!……っ……!』

鞠莉『……果南、やるわよ!』

果南『……』

鞠莉『……?果南……?』

 

鞠莉「そんな……!私は、そんなことしてほしいなんて一言も……!」

ダイヤ「あのまま進めていたら、どうなっていたと思うんですの?怪我だけでなく、事故になってもおかしくなかった」

鞠莉「……でも……!」

ルビィ「だから、逃げたわけじゃないって……」

曜「でも、その後は?」

千歌「そうだよ、怪我が治ったら続けてもよかったのに……」

鞠莉「……そうよ。花火大会に向けて(We could have gotten ready for the fireworks show)、新しい曲作って(made a new song)、ダンスも衣装も完璧にして(perfected our dances and costumes)……なのに……」

ダイヤ「……心配していたのですわ。あなた、留学や転校の話があるたびに、全部断っていたでしょう?」

鞠莉「そんなの当たり前でしょ!?」

「「「……!」」」

千歌「……」

ダイヤ「……果南さんは、思っていたのですわ。このままでは自分たちのせいで、鞠莉さんから未来のいろんな可能性が奪われてしまうのではないか、って」

ダイヤ「そんなとき――」

 

果南『……?』

『本当に断るの!?ご両親も先方も是非って仰ってるの、もし向こうで卒業すれば大学の推薦だって――』

鞠莉『いいんです。私、スクールアイドル始めたんです(I'm a school idol now)』

『……』

鞠莉『学校を救うために』

果南『……』

果南『――』

 

鞠莉「……まさか……それで……?」

鞠莉「っ……!」

ダイヤ「どこへ行くんですの!?」

鞠莉「……ぶん殴る!そんなこと、一言も相談せずに……!」

ダイヤ「……おやめなさい。果南さんはずっとあなたのことを見てきたのですよ」

鞠莉「……!」

幼少期の回想

ダイヤ「――あなたの立場も」

ダイヤ「――あなたの気持ちも」

ダイヤ「――そして、あなたの将来も。誰よりも考えている」

鞠莉「――っ!!」

鞠莉『……そんなのわからないよ。どうして言ってくれなかったの……?』

ダイヤ『ちゃんと伝えていましたわよ?あなたが気付かなかっただけ』

鞠莉「……!はぁ、はぁ――あっ!?」

鞠莉「……!」

鞠莉「……ちゃんと……!」

 

鞠莉『え?』

果南『離れ離れになってもさ……私は、鞠莉のこと――忘れないから』

 

鞠莉「……!」

鞠莉「……果南……」

鞠莉「……っ!」

鞠莉「――――!!!!」

 

 

鞠莉「……」

鞠莉「……」

鞠莉「……ばか」

 

果南「……なに?」

鞠莉「いい加減、話をつけようと思って」

果南「……」ピチャ

果南「……!」

鞠莉「……どうして言ってくれなかったの。思ってること、ちゃんと話して」

鞠莉「果南が私のことを想うように、私も果南のこと考えているんだから……」

果南「……」

鞠莉「……将来なんか今はどうでもいいの。留学?まったく興味なかった……!当たり前じゃない、だって……果南が歌えなかったんだよ?」

鞠莉「――放っておけるはずない……!!」

果南「っ……!!」

鞠莉「……!」パシーン

果南「――!?」

鞠莉「……私が、私が果南を想う気持ちを、甘く見ないで……!!!」

果南「……だったら、だったら素直にそう言ってよ!!リベンジだとか、負けられないとかじゃなく、ちゃんと言ってよ……!!」

鞠莉「……だよね」

果南「あ……」

鞠莉「だから……」

果南「……!」

果南「……」スッ

鞠莉「……!!!」

 

ダイヤ『み、みつかったらおこられますわ!』

果南『へいきだよ!』

鞠莉『……?』

ダイヤ『ピギャッ!?』

果南『いっ……!』

鞠莉『あなたは……?』

果南『……は、はぐ……』

鞠莉『え?』

果南『……』

果南『……はぐ――』

 

果南「――しよ?」

鞠莉「……!!」

鞠莉「っ……!!ひぅっ……!!」

鞠莉「――あああぁっ……!うあぁあぁっ、ううっ、ああぁ……!」

果南「……ぐすっ、うっ、うう……!」

 

 

ダイヤ「……」

千歌「ふふっ」

ダイヤ「!」

千歌「ダイヤさんって、本当に2人が好きなんですね」

ダイヤ「それより、これから2人を頼みましたわよ?ああ見えて2人とも繊細ですから」

千歌「じゃあ、ダイヤさんもいてくれないと!」

ダイヤ「えっ?わたくしは生徒会長ですわよ?とてもそんな時間は……」

千歌「それならだいじょぶです!鞠莉さんと果南ちゃんと……あと、6人もいるので!」

ルビィ「……」

ダイヤ「ルビィ!」

ルビィ「……親愛なるお姉ちゃん!ようこそ、Aqoursへ!」

ダイヤ「……!」

ダイヤ「……」微笑む

 

未熟DREAMER

 

果南「……ふふっ、Aqoursか」

曜「?どうしたの?」

果南「私たちのグループも、Aqoursって名前だったんだよ」

千歌「え?そうなの?」

梨子「そんな偶然が……」

ルビィ「……」コクコク

果南「私も、そう思ってたんだけど……」

曜「じゃあ……」

ダイヤ「…………」

果南「ふふっ」

果南「……千歌たちも、私と鞠莉も、たぶんまんまと乗せられたんだよ(we were all played like fiddles)――」

果南「――誰かさんに(By a certain someone)」

8話写経

聖良「見てて、私たち――Saint Snowのステージを」

千歌「……」

聖良「……」

「でーはー!トップバッターは、このグループ!」

聖良「……フッ」

Saint Snow!!」

聖良「……」

理亞「……」

千歌「……」ゴクリ

SELF CONTROL!!

千歌「――――っ!」

「続いてー、人気急上昇中!の、フレッシュなスクールアイドル!Aqoursのみなさんです!」

曜「――千歌ちゃん!」

千歌「あ……うん!」

 

OP

 

梨子「……この街、1300万人も人が住んでいるのよ」

曜「そうなんだ……」

梨子「って言われても、全然想像できないけどね……」

曜「……やっぱり、違うのかな。そういうところで暮らしていると」

花丸「……どこまで行ってもビルずら」

ルビィ「あれが富士山かなあ?」

花丸「ずら」

善子「フッフッフ……最終呪詛プロジェクト、ルシファーを解放」

善子「魔力2000万のリトルデーモンを……召喚!」

善子「……かっこいい!」

ルビィ「善子ちゃんは元気だね」

善子「善子じゃなくて!ヨ!ハ!ネ!」

花丸「ライブ終わったのにヨハネのままずら」

千歌「……」

千歌「……!」

千歌「……おまたせ~!」

千歌「わ、なにこれすごーい!キラキラしてるー!」

曜「……千歌、ちゃん……」

千歌「それにこれもすっごい美味しいよ!食べる?」

曜「あ、うん……」

千歌「はい!ルビィちゃんたちも!」

ルビィ「あ、ありがとう……」

千歌「全力で頑張ったんだよ?私ね、今日のライブ……今まで歌ってきた中で、出来は一番よかったって思った」

千歌「声も出てたし、ミスも一番少なかったし」

梨子「でも――」

千歌「それに、周りはみんなラブライブ本選に出場しているような人たちでしょ?入賞できなくて当たり前だよ」

梨子「だけど、ラブライブの決勝に出ようと思ったら、今日出ていた人たちくらい上手くないといけないってことでしょう?」

千歌「それは、そうだけど……」

曜「……私ね、Saint Snowを見たときに思ったの」

曜「これがトップレベルのスクールアイドルなんだって、このくらいできなきゃダメなんだって」

曜「……なのに、入賞すらしていなかった」

曜「あの人たちのレベルでも、無理なんだって」

ルビィ「……それはルビィもちょっと思った」

花丸「マルも……」

善子「……な、なに言ってるのよ。あれはたまたまでしょ?天界が放った魔力によって……」

ルビまる「「……」」微笑む

ルビィ「何がたまたまなの?」

花丸「何が魔力ずら?」

善子「え?いや、それは……」

花丸「なぐさめるの下手すぎずら」

善子「な、なによぉ!人が気利かせてあげたのにー!」

千歌「そうだよ!今はそんなこと考えても、しょうがないよ」

梨子「……」

曜「……」

千歌「それよりさ、せっかくの東京だしみんなで楽しもうよ!」

rrrr

「「?」」

千歌「……高海です。え?はい、まだ近くにいますけど……」

 

 

「ごめんなさいねー、呼び戻しちゃって!これ、渡し忘れていたからって思って」

ルビィ「なんだろう……」

善子「もしかして……ギャラ?」

花丸「卑しいずら(Show some class)」

千歌「……?」

「今回、お客さんの投票で入賞グループ決めたでしょ?その集計結果」

千歌「わざわざ、すいません」

「正直、どうしようかなーってちょっと迷ったんだけど……」

「出場してもらったグループにはちゃんと渡すことにしてるから」

千歌「はぁ……」

「じゃあ!」

曜「……見る?」

千歌「うん……」

千歌「!」

千歌「上位入賞したグループだけじゃなくて、出場グループ全部の得票数が書いてある……」

花丸「Aqoursはどこずら?」

千歌「えーっと……あ、Saint Snowだ」

梨子「9位か……もう少しで入賞だったのね」

花丸「Aqoursはー?」

千歌「うん」

千歌「……あ」

千歌「……30位……」

曜「30組中、30位……?」

善子「ビリってこと?」

花丸「わざわざ言わなくていいずら!」

梨子「得票数はどのくらい?」

千歌「えーっと……」

千歌「……」

千歌「……0……」

ルビィ「……そんな……」

梨子「私たちに入れた人、1人もいなかったってこと……?」

千歌「――――」

曜「千歌ちゃん……」

千歌「――――」

聖良「お疲れ様でした」

千歌「……!」

千歌「Saint Snowさん……」

聖良「素敵な歌で、とてもいいパフォーマンスだったと思います」

聖良「ただ、もしμ'sのようにラブライブを目指しているのだとしたら――」

聖良「――諦めた方がいいかもしれません」

「「「……!!」」」

千歌「?」

理亞「……馬鹿にしないで」

千歌「……」

理亞「ラブライブは――遊びじゃない!」

千歌「…………!!」

 

 

「「「……」」」

ルビィ「……泣いてたね、あの子。きっと悔しかったんだね、入賞できなくて……」

花丸「ずら……」

善子「……だからって、ラブライブを馬鹿にしないで、なんて……」

「「「……」」」

曜「……でも、そう見えたのかも」

梨子「……」

「「「……」」」

千歌「……私はよかったと思うけどな」

曜「千歌ちゃん……?」

千歌「精一杯やったんだもん。努力して頑張って、東京に呼ばれたんだよ?それだけですごいことだと思う。でしょ?」

花丸「それは……」

千歌「だから、胸張っていいと思う!今の私たちの精一杯ができたんだから」

曜「……千歌ちゃん」

千歌「?」

曜「千歌ちゃんは、悔しくないの?」

千歌「え?」

よしまるびぃ「「「……!」」」

梨子「……!」

曜「……悔しくないの?」

千歌「……そ、そりゃあちょっとは……でも満足だよ!みんなであそこに立てて、私は……うれしかった」

曜「……」

曜「……そっか」

 

 

ルビィ「戻ってきた~……」

花丸「やっとずらって言えるずら~」

善子「ずっと言ってたじゃない!」

花丸「ずらー!」

「「「おーい!」」」

千歌「みんな……」

「「「おかえりー!」」」

「どうだった、東京は?」

千歌「……あー、うん、すごかったよ。なんかステージもキラキラしてて……」

「ちゃんと歌えた?」「緊張して、間違ったりしなかった?」

曜「うん、それはなんとか……ね?」

梨子「……そうね、ダンスのミスもなかったし……」

千歌「そうそう!今までで、一番のパフォーマンスだったねってみんなで話していたところだったんだー」

「なぁーんだ、心配して損したー」

「じゃあじゃあ、もしかして本気でラブライブ決勝狙えちゃうかもってこと!?」

千歌「……え?」

「そうだよね!東京のイベント、呼ばれるくらいだもんね!」「うんうん!」

千歌「……あー、そうだねー!だと、いいけど……」

ルビィ「……」

花丸「……」

善子「……」

ダイヤ「――おかえりなさい」

ルビィ「……お姉ちゃん……」

ダイヤ「……ふふ」

ルビィ「……!」

ルビィ「……ふ、うっ、う――!」

ダイヤ「……よく頑張ったわね」

ルビィ「ううっ、う、うああっ、ああ……!」

花丸「……」

善子「……」

曜「……」

梨子「……」

千歌「――」

ルビィ「うっ、ああ、ふぅっ、うぅ、うあぁっ、あぁあ……!」

千歌「――――」

 

 

鞠莉「……」

ライト

鞠莉「いつ以来かなあ、こうやって呼び出されるの」

果南「……ダイヤから聞いた、千歌たちのこと」

鞠莉「そう」

果南「――どうするつもり?」

 

Bパート

 

ダイヤ「――得票、ゼロですか」

梨子「はい……」

ダイヤ「やっぱりそういうことになってしまったのですね。今のスクールアイドルの中では」

ルビィ「zzz……」

ダイヤ「先に言っておきますけど、あなたたちは決してダメだったわけではないのです」

ダイヤ「スクールアイドルとして充分練習を積み、見てくれる人を楽しませるに足りるだけのパフォーマンスもしている」

ダイヤ「……でも、それだけではダメなのです。もう、それだけでは」

千歌「……」

曜「どういうことです?」

ダイヤ「……7236。なんの数字かわかります?」

善子「ヨハネのリト――」

花丸「違うずら」

善子「ツッコミはやっ!」

ダイヤ「ふふ。……去年最終的にラブライブにエントリーした、スクールアイドルの数ですわ。第1回大会の10倍以上」

千歌「……」

千歌「……そんなに」

ダイヤ「スクールアイドルは確かに、以前から人気がありました。しかし、ラブライブの大会の開催によって、それは爆発的なものになった」

ダイヤ「A-RISEとμ'sによって、その人気は揺るぎないものになり、アキバドームで決勝が行われるまでになった」

ダイヤ「……そして、レベルの向上を生んだのですわ」

梨子「じゃあ……」

ダイヤ「そう。あなたたちが誰にも支持されなかったのも、わたくしたちが歌えなかったのも、仕方ないことなのです」

千歌「……歌えなかった?」

善子「どういうこと?」

ルビィ「……!」

ダイヤ「……2年前、既に浦の星には統合になるかも、という噂がありましてね――」

 

鞠莉『School idol?』

ダイヤ『そうですわ!学校を廃校の危機から救うには、それしかありませんの!』

果南『鞠莉スタイルいいし、一緒にやったら絶対注目浴びるって!』

鞠莉『Sorry, そういうの興味ないの……』

果南『……ふふん』

果南『ハグッ!』

鞠莉『なにするの!?』

果南『うんって言うまでハグする!』

鞠莉『放してよー!』

ダイヤ『ふふふっ』

果南『ダーメ!』

鞠莉『もー、やめて果南ー!』

果南『やめない!』

ダイヤ『わたくしも仲間に入れてください!』

 

 

鞠莉「――その何が悪かったの?町の人も学校の人も、School idolだと応援してくれたじゃない」

果南「……ライブも上手く行ったしね。でも――」

 

果南『東京?』

ダイヤ『そうですの!わたくしたちが呼ばれたんですのよ!』

鞠莉『ダイヤ、ずいぶん鼻息がvery hard……』

ダイヤ『っ!とにかくチャンスですわ!このイベントで有名になれば、ラブライブが一気に近づきますわ!』

かなまり『……ふふっ』

 

 

ダイヤ「――でも、歌えなかったのですわ」

回想

ダイヤ「他のグループのパフォーマンスのすごさと、巨大な会場の空気に圧倒され――」

ダイヤ「――何も歌えなかった。あなたたちは歌えただけ立派ですわ」

曜「じゃあ、反対してたのは……」

ダイヤ「……いつかこうなると思っていたから」

千歌「……」

ダイヤ『これは今までのスクールアイドルの努力と、町の人たちの善意があっての成功ですわ。勘違いしないように』

 

果南「外の人にも見てもらうとか、ラブライブに優勝して学校を救うとか――」

果南「――そんなのは絶対に無理なんだよ」

鞠莉「だから諦めろって言うの?」

果南「……私はそうすべきだと思う」

果南「……!」

鞠莉「……果南……」

果南「……」

鞠莉「……」

果南「――誰かが、傷つく前に(Before someone gets hurt)」

鞠莉「……」

鞠莉「……私は諦めない……必ず取り戻すの、あの時を!果南とダイヤと失ったあの時を……!」

鞠莉「私にとって……宝物だった、あの時を……」

 

 

美渡「はやくお風呂入っちゃいなよー!」

千歌「うん……」

美渡「梨子ちゃんも早く休んでね」

梨子「はい、ありがとうございます」

梨子「千歌ちゃん……」

千歌「?」

梨子「大丈夫?」

千歌「……うん。少し考えてみるね」

千歌「私がちゃんとしないと、みんな困っちゃうもんね」

梨子「……」

 

 

花丸「……ずら」

 

善子「今日もおしまいっ。……ふぅ……」

 

ルビィ「……ここで、こう……!ピギィ!?」

ルビィ「……」

 

 

ダイヤ「――ええ、話しましたわ。きちんと」

果南「そう……」

ダイヤ「よかったんですわよね、これで(This is what you wanted, right?)」

果南「……」

ダイヤ「……これで……(This is what you wanted...)」

 

 

曜「……」

曜『――千歌ちゃん。……やめる?』

千歌『……』

曜『やめる?スクールアイドル』

千歌『……』

曜『……』

曜「うぅ~ん…………」

 

 

梨子「……」

「身体、冷えるわよ?」

梨子「うん……」

梨子「……」

 

千歌「……」

千歌「ふぅ……」

千歌「……」μ'sのポスターに手を伸ばす

Saint Snowの回想、0

千歌「……!」

千歌「……」

 

 

梨子「――」

梨子「――?」

梨子「……」千歌の部屋を見つめる

梨子「……?」

千歌「……」

梨子「千歌、ちゃん……」

千歌「……」

千歌「……っ!」

 

梨子「――千歌ちゃーん!!千歌ちゃーん!!!!」

梨子「千歌ちゃーん!!!千歌ちゃーん!!!」

梨子「……!」

千歌「あれ?梨子ちゃん……」

梨子「はぁ……いったい何してるの?」

千歌「え?あぁ、うん……何か、見えないかなーって」

梨子「え?」

千歌「ほら、梨子ちゃん海の音を探して潜ってたでしょ?」

千歌「だから私も何か見えないかなーって」

梨子「……それで?」

千歌「うん!」

梨子「ふふっ……それで、見えたの?」

千歌「ううん、なにも」

梨子「なにも?」

千歌「うん。なにも見えなかった」

千歌「でもね、だから思った。続けなきゃって」

千歌「私、まだ何も見えてないんだって。先にあるものがなんなのか」

千歌「このまま続けても、0なのか、それとも1になるのか、10になるのか――」

千歌「――ここでやめたら全部わからないままだって」

梨子「千歌ちゃん……」

千歌「だから私は続けるよ、スクールアイドル。だってまだ0だもん」

千歌「……0だもん。0なんだよ……あれだけみんなで練習して、みんなで歌を作って、衣装も作ってPVも作って、頑張って頑張って、みんなにいい歌聴いてほしいって……」

千歌「……スクールアイドルとして、輝きたいって――」

千歌「……っ」

梨子「……」

千歌「っ……!」

梨子「……!?」

千歌「――なのに0だったんだよ!?悔しいじゃん!!!……っ!!」

梨子「あ……!」

千歌「差がすごいあるとか、昔とは違うとか、そんなのどうでもいい!!」

千歌「――悔しい!!やっぱり私、悔しいんだよ……!!」

千歌「うぅっ……!!」

千歌「……あ……!」

梨子「――よかった……!やっと素直になれたね……!」

千歌「……だって私が泣いたら、みんな落ち込むでしょ?今まで頑張ってきたのに、せっかくスクールアイドルやってくれたのに、悲しくなっちゃうでしょ……?」

千歌「……だから、だから……っ!」

梨子「……ふふっ、馬鹿ね……!みんな千歌ちゃんのためにスクールアイドルやってるんじゃないの……自分で決めたのよ。私も――」

千歌「――!?」

梨子「曜ちゃんも、ルビィちゃんも、花丸ちゃんも、もちろん善子ちゃんも」

曜「おーーい!!」

千歌「……でも……!」

梨子「だからいいの。千歌ちゃんは、感じたことを素直にぶつけて、声に出して」

曜「千歌ちゃん!」

ルビィ「えへへ」

花丸「ずら!」

善子「うわぁっ!?」

梨子「――みんなで一緒に歩こう。一緒に」

千歌「……ぅ、うぅっ、うわぁあん……!ああぁ、っ、あぁ……!」

梨子「今から、0を100にするのは無理だと思う」

梨子「――でも、もしかしたら1にすることはできるかも!」

梨子「私も知りたいの。それができるか」

千歌「……うん……!」

光が射す

「「「うわぁ……!!」」」

千歌「――うん!」

 

 

千歌「」集計結果を貼る

「「「」」」目を合わせる

練習へ

ホワイトボード

0

 

ED

7話写経

ダイヤ「前回の!」

「「「ラブライブ!サンシャイン!!」」」

『『『統廃合!?』』』

ダイヤ「Aqoursは学校存続に向けて、活動を開始」

千歌『特に何も無いです!』

ダイヤ「この学校と町の魅力を伝えようと、悪戦苦闘」

鞠莉『努力の量と結果は比例しません!』

ダイヤ「千歌たちは奮起して――」

梨子『これなんじゃないかな。この町や学校のいいところって』

千歌『――そうだ!』

ダイヤ「学校存続に向けて、大きな一歩を踏み出したのですわ」

 

 

千歌「この前のPVが5万再生?」

曜「ほんとに?」

善子「ランタンが綺麗だって評判になったみたい」

善子「ランキングも……」

梨子「99位!?」

花丸「ずら!?」

千歌「……来た!きたきたー!それって全国でってことでしょ?5000以上いるスクールアイドルの中で、100位以内ってことでしょ!?」

梨子「一時的な盛り上がりってこともあるかもしれないけど、それでもすごいわね!」

ルビィ「ランキング上昇率では1位!」

花丸「わぁ~、すごいずら!」

千歌「なんかさ、このまま行ったらラブライブ優勝できちゃうかも!」

曜「優勝?」

梨子「そんな簡単なわけないでしょう?」

千歌「分かっているけど、でも可能性は0じゃないってことだよ」

メール

善子「?これ……」

千歌「なになに?」

ルビィ「Aqoursのみなさん、東京スクールアイドルワールド運営委員会」

曜「東京?」

ルビィ「って書いてあります」

千歌「東京って、あの東にある京の……」

梨子「……なんの説明にもなってないけど」

「「「「「「……」」」」」」

「「「「「「……!!」」」」」」

「「「「「「東京だー!」」」」」」

千歌「わぁ……!」

 

OP

 

ダイヤ「東京?」

ルビィ「うん……」

ルビィ「イベントで、一緒に歌いませんかって」

ダイヤ「東京の、スクールアイドルイベント……」

ルビィ「うぅ……あ、ちゃんとしたイベントで、去年入賞したスクールアイドルもたくさん出るみたいで――」

千歌『行きます!』

梨子『交通費とか大丈夫なの?』

千歌『うぁ~お小遣い前借りでー!』

ルビィ「――って、千歌ちゃんが」

ダイヤ「……」

ルビィ「……」

ダイヤ「……東京の……」

ルビィ「やっぱり、ダメ?」

ダイヤ「鞠莉さんはなんと言ってるの?」

ルビィ「みんなが良ければ、理事長として許可を出すって」

ダイヤ「……」

ダイヤ「……」スタスタ

ルビィ「……お姉ちゃん!」

ダイヤ「……」

ルビィ「お姉ちゃんは、やっぱり嫌なの?ルビィがスクールアイドル続けること……」

ダイヤ「……ルビィ」

ルビィ「?」

ダイヤ「ルビィは自分の意志で、スクールアイドルを始めると決めたのですよね?」

ルビィ「うん」

ダイヤ「だったら、誰がどう思おうが関係ありません、でしょう?」

ルビィ「でも……」

ダイヤ「ごめんなさい、混乱させてしまってますよね」

ダイヤ「あなたは気にしなくていいの。わたくしは、ただ……」

ルビィ「ただ……?」

ダイヤ「……いえ、もう遅いから、今日は寝なさい」

ルビィ「…………」

 

 

鞠莉「来ると思った」

ダイヤ「……どういうつもりですの」

ダイヤ「あの子たちを今、東京に行かせるのがどういうことかわかっているのでしょう?」

鞠莉「ならば止めればいいのに」

ダイヤ「……!」

鞠莉「ダイヤが本気で止めれば、あの子たち諦めるかもしれないよ?」

鞠莉「ダイヤも期待してるんじゃない?私たちが乗り越えられなかった壁を、乗り越えてくれることを」

ダイヤ「……もし越えられなかったらどうなるか、充分知っているでしょう?取り返しがつかないことになるかもしれないのですよ」

鞠莉「だからと言って、避けるわけには行かないの。本気でスクールアイドルとして、学校を救おうと考えているなら」

ダイヤ「っ……!」

鞠莉「……」

ダイヤ「……変わっていませんわね、あの頃と」

 

 

千歌「東京トップス!」

千歌「東京スカート!」

千歌「東京シューズ!」

千歌「そしてー、東京バッグ!」

梨子「……いったい何がどうしたの?」

千歌「かわいいでしょ!」

美渡「クックックッ……w」

梨子「東京行くからってそんなに構えなくても……」

美渡「やべっ」

千歌「?梨子ちゃんはいいよ、内浦から東京行くなんて一大イベントなんだよ!」

梨子「……」

「「おはようございまーす」」

梨子「!……あはは……――っ!?」

ルビィ「どうでしょう……ちゃんとしてますか?」

梨子「っ……」

千歌「うっわぁぁ~……」

花丸「こ、これで、渋谷の険しい谷も大丈夫ずらか!」

梨子「……なに、その仰々しい格好は……」

「「がーん!!」」

梨子「それに渋谷は険しくない」

千歌「2人とも地方感丸出しだよ」

梨子「あなたもよ」

千歌「ええぇ~!!」

 

 

花丸「結局、いつもの服になってしまった……」

梨子「そっちの方が、かわいいと思うけど?」

花丸「本当ずら?」

梨子「ええ。でもそのずらは気をつけた方がいいかも……」

ルビィ「……」

花丸「ずら!」

ルビィ「……」

ダイヤ『ルビィ。気持ちを、強く持つのですよ』

ルビィ「……どういう意味だろう」

花丸「ルビィちゃん」

ルビィ「?」

花丸「マルがずらって言いそうになったら、止めてね?」

ルビィ「……うん」

 

曜「遅いなー……」

善子「フフフ……」

曜「……」

善子「天つ雲居の彼方から堕天したるこの私が、魔都にて冥府より数多のリトルデーモンを召喚しましょう……」

「ねえねえ、あれなに?」

「しっ見ちゃダメ」

曜「……ものすごく注目されてるんですけど……」

「「「くっくっく」」」

千歌「善子ちゃんも」

ルビィ「やってしまいましたね」

善子「っ!」

花丸「善子ちゃんもすっかり堕天使ずらー」

善子「ぐぬぬぬ……」

曜「みんな遅いよー!」

善子「善子じゃなくて――」

「「「!?」」」

善子「ヨハネ!」

周りが逃げ出す

「こっち来なさい!」

善子「せっかくのステージ!溜まりに溜まった堕天使キャラを解放しまくるの!」

「「「「お、おう……」」」」

 

志満「梨子ちゃん」

梨子「はい」

志満「みんな、あんまり東京に慣れてないからよろしくね」

梨子「……はい」

「千歌ー!」

千歌「あ、むっちゃん!」

「イベント、頑張ってきてね!」

「これ、クラスみんなから」

千歌「わぁ、ありがとう!」

「それ食べて、浦女のすごいところ見せてやって!」

千歌「(真剣な表情)……うん!頑張る!」

「いってらっしゃーい!」

千歌「いってきまーーす!!!」

 

 

千歌「次の電車、どっち?」

曜「えーっと、こっち?」

善子「感じる……魔都の波動を……」

花丸「美味しいずらー」

善子「雰囲気こわれる!」

千歌「うわぁ~……!」根府川駅から国府津の海を見る

 

 

善子「フフ……」

「お願いします!」

善子「フフ……」

「はいいくよー」

善子「ここが、遍く魔の者が闊歩すると言い伝えられる約束の地……魔都、東京」

千歌「うわぁ~、見てみて!ほらあれ、スクールアイドルの広告だよね!?」

曜「はしゃいでると、地方から来たって思われちゃうよ」

ルビィ「そ、そうですよね……慣れてますーって感じにしないと」

千歌「そっか……うん!」

千歌「ほっほっ、ほんと原宿っていっつもこれだからマジやばくなーい?ほーっほっほっほ!」

「ふふ、かわいいわね」

曜「千歌ちゃん」

梨子「ここ、アキバ……」

千歌「てへぺろ!」

ルビィ「あれぇ?」

花丸「うわあぁあぁ~……未来ずら、未来ず――!」

ルビィ「」肩ポン

花丸「――ふぅ」

ルビィ「……あれ、みんなは?」

 

千歌「かがやく~~!!」

千歌「缶バッジもこんなに種類がある!あ、あぁ、このポスター見るの初めて!」

曜「あっ、かわいい!」

梨子「時間なくなるわよー?」

善子「あれ?花丸とルビィは?」

梨子「?」

善子「!」

黒魔術ショップ堕天使

善子「……堕天使……」ゴクリ

曜「♪~……?」

制服専門店

曜「……制服……100種類以上……!?」ゴクリ

千歌「さぁ、じゃあみんなで明日のライブの成功を祈って、神社の方に……!」

梨子「……」

千歌「……あれ?」

 

千歌「うん、うん!大きなビルの下!見えない?」

ルビィ「あぁ、いました!」

花丸「すみませ~ん!」

千歌「善子ちゃんと曜ちゃんは?」

梨子「2人とも場所はわかるから、もう少ししたら行くって」

千歌「もう少しって?」

梨子「さぁ……」

千歌「もう!みんな勝手なんだから!」

梨子「しょうがないわね……」

梨子「……?」

新作同人誌

梨子「――はっ!?壁……クイ……!?」

千歌「梨子ちゃん?」

梨子「!?な、なんでもない!!」

千歌「なにが?」

梨子「い、いえ……!わ、私、ちょっとお手洗い行ってくるねー!」

千歌「ええぇぇええー!!?」

 

 

千歌「もう、時間無くなっちゃったよー。せっかくじっくり見ようと思ったのに……」

梨子「……!!」同人誌を背中に隠す

善子「な、なによ!だから言ってるでしょ、これはライブのための道具なの!」

千歌「はぁ……そんな格好して……」

曜「だって、神社に行くって言ってたから!似合いますでしょうか!」

千歌「……敬礼は違うと思う」

 

千歌「――ここだ」

ルビィ「これが、μ'sがいつも練習していたって階段……!」

千歌「……うん……!」

千歌「……登ってみない?」

梨子「そうね」

千歌「よーし!じゃあみんな行くよー!よーい!」

「「うぇぇ!?」」「待ちなさいよー!」

千歌(……μ'sが登ってたんだ……!ここを……!)

千歌(……ラブライブを、目指して……!)

千歌「――はぁ、はぁ、はぁ……」

♪~

千歌「……?」

Saint Snow「♪~」

千歌「……!」

Saint Snow「……」

千歌「……あ」

Saint Snow「……フフ」

 

Bパート

 

聖良「こんにちは」

千歌「こ、こんにちは」

梨子「千歌ちゃん?」

善子「まさか、天界勅使?」

聖良「あら?あなたたちもしかして、Aqoursのみなさん?」

千歌「うそ、どうして……」

善子「この子、脳内に直接……!」

花丸「マルたち、もうそんなに有名人?」

ルビィ「……!ピギィ!」

聖良「……PV、見ました。素晴らしかったです」

千歌「あ、ありがとうございます!」

聖良「もしかして……明日のイベントでいらしたんですか?」

千歌「はい」

聖良「そうですか。楽しみにしてます」

理亞「――!」

梨子「!?」

曜「!?」

よしまるびぃ「!?」

理亞「……」

聖良「……では」

理亞「……」

ルビィ「……すごいです」

花丸「東京の女子高生って、みんなこんなにすごいずら?」

善子「あったりまえでしょ!東京よ、東京!」

千歌「……歌、綺麗だったな……」

 

 

花丸「ふぅぅ~、落ち着くずら~」

梨子「気に入ってくれたみたいでうれしいわ」

曜「なんか、修学旅行みたいで楽しいね!」

ルビィ「あはは……」

善子「堕天使ヨハネ、降臨!やばい……かっこいい……!」

花丸「ご満悦ずら」

善子「あんただって、東京のお菓子でご満悦のくせに!」

梨子「降りなさい!」

善子「ううっ……」

花丸「お土産に買ったけど、夜食用にもまだ別に取ってあるず……ん……?」

曜「ほえ?」

梨子「旅館のじゃなかったの?」

花丸「マルのバックトゥザピヨコ饅頭ーー!!」

ルビィ「花丸ちゃん、夜食べると太るよ?」

善子「静かにして!集中できないでしょ!」

花丸「もういいずら、食べちゃうずら!はむっ」

ルビィ「……それより、そろそろ布団敷かなきゃ……っおっとっとっ……ピギィ!?」

千歌「――ねえ!今、旅館の人に聞いたんだけ……ど……あれ?」

 

曜「音ノ木坂って、μ'sの?」

千歌「うん、この近くなんだって。梨子ちゃん?」

梨子「?」

千歌「今からさ、行ってみない?」

梨子「え……?」

千歌「みんなで!」

「「「え?」」」

千歌「私、一回行ってみたいって思ってたんだ!μ'sが頑張って守った高校、μ'sが練習していた学校!」

梨子「……」

ルビィ「ルビィも行ってみたい!」

曜「私も賛成!」

花丸「東京の夜は物騒じゃないずら?」

善子「な、なに?怖いの?(Is it scary?)」

花丸「善子ちゃん、震えてるずら……」

梨子「ごめん、私はいい……」

「「「え?」」」

梨子「先に寝てるから、みんなで行ってきて」

「「「……」」」

千歌「梨子ちゃん……」

曜「……やっぱり、寝よっか」

ルビィ「……そうですね、明日ライブですし」

千歌「……」

 

 

梨子「……」

梨子「?」

善子「……スティグマ天使……」

梨子「……」

千歌「……眠れないの?」

梨子「……千歌ちゃんも?」

千歌「うん、なんとなく」

梨子「……ごめんね、なんか空気悪くしちゃって」

千歌「ううん、こっちこそ……ごめん」

梨子「……」

梨子「……音ノ木坂って、伝統的に音楽で有名な高校なの」

梨子「私、中学の頃ピアノの全国大会行ったせいか、高校では結構期待されてて」

千歌「……そうだったんだ」

梨子「音ノ木坂が嫌いなわけじゃないの。ただ、期待に応えなきゃって……いつも練習ばかりしてて」

梨子「……でも結局、大会では上手く行かなくて」

千歌「期待されるって、どういう気持ちなんだろうね」

梨子「え?」

千歌「沼津出る時、みんな見送りに来てくれたでしょ?」

のっぽパンの辺りの回想

千歌「みんなが来てくれて、すごいうれしかったけど……実はちょっぴり怖かった」

千歌「『期待に応えなくちゃ』って、『失敗できないぞ』って」

梨子「千歌ちゃん……」

千歌「……ごめんね。全然関係ない話して」

梨子「……ううん、ありがとう」

千歌「え?」

梨子「……寝よ。明日のために」

千歌「……うん!」

 

 

千歌「……」

千歌「……」

 

千歌「……」

千歌「……よし」

 

千歌「……はっ、はっ、はっ……」

千歌「……ふぅ」

UTXモニター

千歌「わぁ……!」

千歌(……ここで初めて見たんだ。スクールアイドルを……μ'sを……!)

曜「千歌ちゃん!」

千歌「?」

「「「はぁ……はぁ……」」」

曜「やっぱり、ここだったんだね!」

千歌「……みんな……」

梨子「練習行くなら声かけて?」

善子「1人で抜け駆けなんてしないでよね!」

花丸「帰りに神社でお祈りするずらー!」

ルビィ「だね!」

千歌「うん!」

千歌「?」

「「「「「?」」」」

LoveLive! School idol project

千歌「……ラブ、ライブ……」

ルビィ「ラブライブ!今年のラブライブが発表になりました!」

ENTRY START AKIBA DOME

曜「ついに来たね」

梨子「どうするの?」

千歌「……もちろん出るよ!」

千歌「μ'sがそうだったように、学校を救ったように!」

千歌「さあ、行こう!今、全力で輝こう!」

「「「「「「Aqours!サンシャイン!!」」」」」」

 

 

千歌「ランキング?」

「えぇ。会場のお客さんの投票で、出場するスクールアイドルのランキングを決めることになったのー!」

曜「上位に入れば、一気に有名になるチャンスってことですか?」

「まぁ、そうだね!Aqoursの出番は2番目!元気にはっちゃけちゃってね!」

千歌「2番……」

梨子「前座ってことね……」

ルビィ「仕方ないですよ、周りは全部ラブライブの決勝に出たことがあるグループばかりですから」

花丸「そうずらか……」

千歌「でも、チャンスなんだ。頑張らなきゃ」

 

 

曜「緊張してる?」

梨子「そりゃあね……」

曜「じゃあ、私と一緒に敬礼!おはヨーソロー!」

梨子「お、おはヨーソロー……」

曜「よくできました!緊張が解けるおまじないだよ!」

花丸「ルビィちゃん」

曜「?」

ルビィ「……やっぱり無理です……!」

花丸「……ルビィちゃん。ふんばるビィ、ずら」

善子「堕天使の神気を以って、天界を穿つ時が来たのです」

千歌「ダメダメ、弱気になっちゃ」

Aqoursのみなさーん、お願いしまーす!」

 

ルビィ「す、すごい人です……」

善子「だっ、だ、だ、大丈夫よ!」

千歌「……ふふっ」

Saint Snow「……」

千歌「……!」

聖良「……よろしくお願いしますね」

千歌「……スクールアイドル、だったんですか」

聖良「あれ、言ってませんでしたっけ」

聖良「私は、鹿角聖良」

理亞「……」

聖良「理亞」

理亞「……」

聖良「見てて、私たち――Saint Snowのステージを」

 

ED

6話写経

花丸「前回の!」

「「「ラブライブ!サンシャイン!!」」」

善子『みんな一緒に堕天しましょ?』

花丸「堕天使キャラをどうしても忘れられない善子ちゃん」

千歌『これだよ!』

花丸「千歌ちゃんはAqoursを堕天使スクールアイドルとして特徴を出そうと提案」

ダイヤ『破廉恥というのですわ!!!』

花丸「でもやめなきゃいけないことになって――」

善子『高校生にもなって通じないよ』

花丸「そんな善子ちゃんに、千歌ちゃんは――」

千歌『自分が一番好きな姿を、輝いてる姿を見せることなんだよ!』

花丸「そして――」

 

 

ダイヤ「どういうことですの!?」

鞠莉「……書いてある通りよ。沼津の高校と統合して、浦の星女学院は廃校になる。わかっていたことでしょう?」

ダイヤ「それは……そうですけど」

鞠莉「ただ、まだ決定ではないの。まだ待ってほしいと、私が強く言ってるからね」

ダイヤ「鞠莉さんが?」

鞠莉「何のために、私が理事長になったと思っているの?」

鞠莉「……この学校は失くさない。私にとって、どこよりも……大事な場所なの」

(幼少期の噴水前の記憶)

ダイヤ「……方法はあるんですの?入学者はこの2年、どんどん減っているんですのよ」

鞠莉「だからスクールアイドルが必要なの」

ダイヤ「鞠莉さん……」

鞠莉「あの時も言ったでしょう、私は諦めないと。今でも決して、終わったとは思っていない」手を差し出す

ダイヤ「……」

ダイヤ「……わたくしは、わたくしのやり方で廃校を阻止しますわ」

鞠莉「……ほんと、ダイヤは好きなのね……果南が」

 

OP

 

善子「そ、そうよねー!マジ、ムカつくー、よねー?よねー……?よね……?」

「だよねー!」「じゃーねー」

善子「またねー!」

「善子ちゃん面白いよね」「ほんと」

善子「……つかれた」

善子「たはー……普通って難しい……」

花丸「無理に普通にならなくてもいいと思うずらー……よ!」

善子「ぎらん!」

善子「深淵の深き闇から……ヨハネ、堕天!――っは!?」

花丸「やっぱり善子ちゃんはそうじゃないと」

ルビィ「大変、大変だよ!」

花丸「どうしたの?」

ルビィ「大変!学校が――!」

「「「「「統廃合!!?」」」」」

ルビィ「……そうみたいです」

ルビィ「沼津の学校と合併して、浦の星女学院は無くなるかもって……」

曜「そんなぁ!?」

梨子「いつ!?」

ルビィ「それは、まだ……一応、来年の入学希望者の数を見て、どうするか決めるらしいんですけど……」

「「「「「……」」」」」

千歌「…………廃校?」

ようりこ「え?」

千歌「来た!ついに来た!!!」

千歌「統廃合ってつまり廃校ってことだよね!?学校のピンチってことだよね!?」

曜「千歌ちゃん?」

梨子「まあそうだけど……」

曜「なんだか、心なしかうれしそうに見えるけど……」

千歌「だって――!!」

千歌「廃校だよーー!!音ノ木坂と、一緒だよー!!!」

「「「「「!?」」」」」

千歌「これで舞台は整ったよ!私たちが学校を救うんだよー!」

善子「!?」

千歌「そして輝くの!あの、μ'sのように!!っふぅ!」

善子「……」

曜「……」

梨子「そんな簡単にできると思ってるの……」

ルビィ「花丸ちゃんはどう思う?」

花丸「…………統廃合~~!?」

ルビィ「こ、こっちも!」

花丸「が、合併ということは沼津の高校になるずらね!?あの街に通えるずらよね!?」

ルビィ「ま、まぁ……」

花丸「ぅうわぁあぁ~~~!!!」

善子「相変わらずね、ずら丸。昔からこんな感じだったし」

曜「そうなの?」

花丸『ずら~~~!未来じゅら~~~!』

善子『えぇ……?』

曜「そうだったんだ……」

ルビィ「善子ちゃんはどう思う?」

善子「そりゃ統合した方がいいに決まってるわ!私みたいな流行に敏感な生徒も集まってるだろうし!」

花丸「よかったずらね~!中学の頃の友達に会えるずら~!」

善子「統廃合絶対反対~~~!!!!」

ルビィ「あはは……」

千歌「とにかく、廃校の危機が学校に迫っているとわかった以上、Aqoursは学校を救うため――行動します!えへっ」

曜「ふふっ、ヨーソロー!スクールアイドルだもんね!」

梨子「でも、行動って何するつもり?」

千歌「……」

千歌「……へ?」

「「「「「え?」」」」」

 

 

千歌「結局、μ'sがやったのはスクールアイドルとしてランキングに登録して……」

千歌「……ラブライブに出て、有名になって……」

千歌「……生徒を集める」

曜「それだけなの?」

千歌「みたい……。あとは……」

 

 

ダイヤ「はぁ……そもそも受験人数が減っているんですのね……」

コンコン

ダイヤ「はい」

ルビィ「……お姉ちゃん?」

ダイヤ「どうしたんですの?」

ルビィ「実は、今日もちょっと遅くなるかもって……」

ダイヤ「今日も?」

ルビィ「うん、千歌ちゃんが入学希望者を増やすために、PV作るんだって言ってて」

ダイヤ「……」

ルビィ「……ぅぅ」

ダイヤ「……わかりましたわ」

ルビィ「――!」

ダイヤ「お父様とお母様に言っておきますわ」

ルビィ「いいの!?ほんとに!?」

ダイヤ「ただし、日が暮れる前には戻ってきなさい」

ルビィ「うん!じゃあ、行ってくる!」

ダイヤ「……どう?スクールアイドルは」

ルビィ「……!」

ルビィ「……大変だけど、楽しいよ」

ダイヤ「……そう」

ルビィ「……他の生徒会の人は?」

ダイヤ「みんな他の部と兼部なので忙しいのですわ」

ルビィ「……そう……」

ルビィ「……」

ルビィ「……お姉ちゃ――」

ダイヤ「早く行きなさい」

ルビィ「っ……」

ダイヤ「遅くなりますわよ」

ルビィ「……」

 

 

梨子「内浦のいいところ?」

千歌「そう!東京と違って、外の人はこの町のこと知らないでしょ?だからまずこの町のいいところを伝えなきゃって!」

善子「それでPVを?」

千歌「うん!μ'sもやってたみたいだし、これをネットで公開して、みんなに知ってもらう――」

花丸「知識の海ずら~」

千歌「――というわけで!ひとつよろしく!」

花丸「わぁ!?いや、マ、マルには無理ず、いやぁ、無理」

ルビィ「……!……ピギッ!」

曜「?あれ?」

善子「――見える!あそこーーー……よっ!」

「「「?」」」

ルビィ「違いますぅー!べーっ!」

曜「さっ」

ルビィ「ピギィッ!?」

千歌「おおー、なんだかレベルアップしてる!」

梨子「そんなこと言ってる場合!?」

花丸『』カット

千歌『どうですかー!?この雄大な富士山!!』

梨子『』カット

千歌『それと、この綺麗な海!』

ルビィ『』カット

千歌『さらに、みかんがどっさり!』

千歌『そして町にはー!……えっと、町には…………特に何もないです!』

曜「……それ言っちゃダメ」

千歌「うぅーん、じゃあ……」

曜『バスでちょっと行くと、そこは大都会!』

曜『お店もたーくさんあるよー!』

千歌『……そしてー……!ちょっとぉー……!』

梨子『……自転車で……!坂を越えると……はぁ……!そこには、伊豆長岡の、商店街が……!』

花丸「全然……ちょっとじゃない……」

ルビィ「沼津に行くのだって……バスで500円以上かかるし……!」

善子「…………いい加減にしてよ……」

千歌「うーん……じゃあ……」

善子『うふふ……ふふ……リトルデーモンのあなた、堕天使ヨハネです。今日は、このヨハネが堕ちてきた地上を紹介してあげましょう』

善子『まず、これが……土!!あーっはっはっは!!』

花丸「やっぱり善子ちゃんはこうでないと」

善子「うぇぇ……」

曜「……根本的に考え直した方がいいかも」

千歌「そーお?面白くない?」

梨子「面白くてどうするの!」

ルビィ「あははは……」

 

 

「はーい、おまちどおさま。こんなに大人数なんて珍しいわね。ごゆっくり」

善子「……」

善子「……どうして喫茶店なの?」

ルビィ「もしかして、この前騒いで家族の人に怒られたり……」

千歌「ううん、違うの。梨子ちゃんがしいたけいるなら来ないって」

梨子「行かないとは言ってないわ!ちゃんと繋いでおいてって言ってるだけ」

千歌「いや、でも……」

曜「ここら辺じゃ、家の中だと放し飼いの人の方が多いかも」

梨子「そんな……」

ワン!

梨子「またまた……」

ワン!

ルビィ「わぁ~!」

梨子「……!!!」

千歌「こんなに小さいのに!?」

梨子「大きさは関係ないの!そのキバ!」

梨子「……そんなので噛まれたら……死!!!」

千歌「噛まないよ……ねー、わたちゃん」

梨子「あ、危ないわよ!そんな顔近づけたら……!」

千歌「そうだ!わたちゃんで少し慣れるといいよ!」

梨子「は……!!」

ペロリ

梨子「あぁあぁ!!!」

曜「梨子ちゃーん!」

梨子「話は聞いてるから!早く進めて!」

千歌「しょうがないなあ……できた?」

善子「簡単に編集しただけだけど……お世辞にも、魅力的とは……言えないわね」

ルビィ「やっぱりここだけじゃ難しいんですかね……」

千歌「うーん……」

千歌「……じゃあ沼津の賑やかな映像を混ぜて――」

千歌『これが私たちの街です!』

梨子「そんなの詐欺でしょ!」

千歌「なんでわかったの!?」

ルビィ苦笑い、花丸どら焼きを頬張る

曜「だんだん行動パターンがわかってきているのかも……」

曜「?」

千歌「そっか……」

曜「うわぁ!終バス来たよ!」

善子「うそーっ!」

 

善子「ふふふ、ではまた」

曜「ヨーシコー!」

善子「うっ」

千歌「結局何も決まらなかったなぁ……」

ルビィ「~~!!こんな時間!!失礼します!!ほら花丸ちゃん、口にあんこついてるよ!」

花丸「~~~」

千歌「意外と難しいんだなぁ、いいところを伝えるのって」

梨子「住めば都。住んでみないと分からない良さも、たくさんあると思うし」

千歌「うん。でも、学校が無くなったらこういう毎日も無くなっちゃうんだよね……」

梨子「そうね……」

千歌「スクールアイドル、頑張らなきゃ」

梨子「今更?」

千歌「だよね。でも……今、気がついた。無くなっちゃダメだって」

千歌「……私、この学校好きなんだ」

梨子「!……ふふ。うん!」

 

 

鞠莉「……」

鞠莉「来るなら来ると先に言ってよ。勝手に入ってくると家の者が激おこぷんぷん丸だよ?」

果南「……廃校になるの?」

鞠莉「ならないわ。でも、それには力が必要なの」

復学届

鞠莉「だからもう一度、果南の力がほしい」

果南「……」

果南「……本気?」

鞠莉「……私は果南の、ストーカーだから」

果南「……」

 

Bパート

 

鞠莉「……」

千歌「……!」ゴクリ

ルビィ『以上、がんばルビィ!こと、黒澤ルビィがお伝えしました!』201607

千歌「どうでしょうか?」

鞠莉「……」

鞠莉「zzz……っは!?」

「「「「「」」」」」ガクッ

千歌「もう!本気なのに、ちゃんと見てください!」

鞠莉「本気で?」

千歌「はい!」

鞠莉「……それでこのテイタラークですか?」

千歌「テイタラク?」

曜「それは、さすがにひどいんじゃ……」

梨子「そうです!これだけ作るのがどれだけ大変だったと思ってるんで――」

鞠莉「努力の量と結果は比例しません!」

鞠莉「大切なのはこのtownやschoolの魅力を、ちゃんと理解してるかです!」

ルビィ「それってつまり……」

花丸「私たちが理解してないということですか?」

善子「じゃあ理事長は、魅力が分かってるってこと?」

鞠莉「……少なくとも、あなたたちよりは」

鞠莉「……聞きたいですか?」

千歌「……!」

 

 

梨子「どうして聞かなかったの?」

千歌「なんか……聞いちゃダメな気がしたから」

善子「何意地張ってんのよ」

千歌「意地じゃないよ」

善子「?」

千歌「それって大切なことだもん。自分で気付けなきゃ、PV作る資格ないよ」

梨子「……そうかもね」

千歌「……!」

曜「ヨーソロー!じゃあ、今日は千歌ちゃん家で作戦会議だ!」

梨子「!?」

曜「喫茶店だってタダじゃないんだから、梨子ちゃんもがんばるビィして!」

梨子「はぁ……」

千歌「ふふっ、あははは!」

千歌「よーし!……あ、忘れ物した」

「「「「こけっ」」」」ガクッ

千歌「ちょっと部室見てくるー!」

梨子「もう……」

 

千歌「ふふっ、えへへ」

千歌「……?」

ダイヤ「――」

千歌「……!!」

ダイヤ「――」

千歌「」パチパチ

ダイヤ「……?」

千歌「すごいです!私、感動しました!」

ダイヤ「な、なんですの!?」

千歌「ダイヤさんがスクールアイドルが嫌いなのは分かってます」

千歌「でも、私たちも学校続いてほしいって、無くなってほしくないって思ってるんです」

千歌「……一緒にやりませんか?スクールアイドル!」

ルビィ「お姉ちゃん……」

ダイヤ「……」

ダイヤ「残念ですけど……ただ、あなたたちのその気持ちは、うれしく思いますわ。お互い頑張りましょう」

ルビィ「……」

曜「……ルビィちゃん、生徒会長って前は、スクールアイドルが……」

ルビィ「はい、ルビィよりも大好きでした……」

千歌「……!」

ルビィ「――!!!」

千歌「!?」

ルビィ「今は言わないで……!」

千歌「……ルビィちゃん……」

ルビィ「……ごめんなさい」

 

 

ダイヤ「……」

(2年前のライブの回想)

鞠莉「ダイヤ、逃げていても、何も変わりはしないよ?」

鞠莉「進むしかない、そう思わない?」

ダイヤ「逃げてるわけじゃありませんわ。あの時だって……」

鞠莉「……ダイヤ?」

ダイヤ「……」

鞠莉「……」

 

 

梨子「……」

曜「しいたけいないよ!ね、千歌ちゃん!」

善子「……」

ルビィ「……」

花丸「……」

善子「それよりもPVだよ、どうすんの?」

花丸「確かに何も思いついてないずら……」

梨子「それはそうだけど……」

志満「あら、いらっしゃい」

志満「みんなで相談?」

梨子「はい」

志満「いいけど、明日みんな早いんだから、今日はあんまり遅くなっちゃダメよ?」

「「「「はーい」」」」

梨子「明日朝早いの?」

曜「さあ、何かあったかな……」

千歌「海開きだよ!」

曜「あれ!?千歌ちゃん!」

梨子「じゃあ……!」

しいたけ「ワン!」

 

 

梨子「ふわぁぁ~……」

千歌「おーい!梨子ちゃーん!」

曜「おはヨーソロー!」

梨子「おはよう」

千歌「梨子ちゃんの分もあるよ」

曜「こっちの端から、海の方に向かって拾っていってね」

梨子「……」

梨子「……曜ちゃん」

曜「?なに?」

梨子「毎年、海開きってこんな感じなの?」

曜「うん、どうして?」

ルビィ、花丸、善子

梨子「この町って、こんなにたくさん人がいたんだ……」

ダイヤ、果南

曜「うん!町中の人が来てるよ。もちろん、学校のみんなも!」

鞠莉→ダイヤ、果南に近づく

梨子「そうなんだ……」

梨子「……」

梨子「……!これなんじゃないかな、この町や学校のいいところって」

千歌「……そうだ!」

果南「?」

鞠莉「?」

ダイヤ「?」

善子「?」

花丸「?」

ルビィ「?」

千歌「……ふぅ」

千歌「……あのー!みなさん!」

千歌「私たち、浦の星女学院でスクールアイドルをやっている、Aqoursです!」

千歌「私たちは、学校を残すために、ここに生徒をたくさん集めるために、みなさんに協力してほしいことがあります!」

千歌「――みんなの気持ちを形にするために!」

夢で夜空を照らしたい

鞠莉、少し驚いた表情 果南、見守る ダイヤ、口を少し開けて見惚れる?

 

千歌「――私、心の中でずっと叫んでた」

千歌「『助けて』って、『ここには何もない』って」

千歌「でも、違ったんだ!」

千歌「……追いかけてみせるよ!ずっと、ずっと……!」

曜だけ驚いた顔

千歌(――この場所から始めよう!できるんだ!)

 

ED

5話写経

ルビィ「前回の!」

「「「ラブライブ!サンシャイン!!」」」

ルビィ「千歌さんからスクールアイドルの誘いを受けた花丸ちゃんと私」

千歌『2人が歌ったら絶対キラキラする!』

ルビィ「アイドルに興味がありながら、お姉ちゃんのことを気にする私のために、花丸ちゃんは――」

花丸『スクールアイドルになりたいんでしょ?』

花丸『だったら、前に進まなきゃ』

ルビィ「そして、花丸ちゃんも」

千歌『一番大切なのはできるかどうかじゃない、やりたいかどうかだよ!』

ルビィ「こうしてAqoursは、5人になった!」

 

 

善子「感じます。精霊結界の損壊により、魔力構造が変化していくのが」

(カワエエ)(堕天使様ーー)(楽しかったよ~)(また会いに来ます)(ヨハネ最高ううううう)(あやしすぎる)(今日もよかった)

善子「世界の趨勢が、天界議決により決して行くのが」

善子「かの約束の地に降臨した、堕天使ヨハネの魔眼が、その全てを見通すのです!」

善子「全てのリトルデーモンに授ける――堕天の力を!」

放送終了いたしました。

善子「…………フフ」

善子「……やってしまったぁあぁぁー!!!」

善子「何よ堕天使って!ヨハネって何!!?」

善子「リトルデーモン!?サタン!?いるわけないでしょう!?!?そんなもーーん!!!」

善子「もう高校生でしょ!?津島善子!!いい加減卒業するの!!」

善子「そう、この世界はもっとリアル。リアルこそが正義!」

善子「リア充にぃーーー、私はなる!!」

善子『堕天使ヨハネと契約して、あなたも私のリトルデーモンに……なってみない?』

善子「ぅはぁぁあなんであんなこと言ったのよぉ~~!学校行けないじゃな~い!」

 

OP

 

曜「ううぅ~ん……今日も上がってない……」

梨子「昨日が4856位で、今日が4768位」

曜「まあ、落ちてはないけど……」

ルビィ「ライブの歌は評判いいんですけど……」

千歌「それに新加入の2人もかわいいって!」

ルビィ「そうなんですか!?」

曜「特に、花丸ちゃんの人気がすごいんだよね!」

梨子「『花丸ちゃん応援してます』」

ルビィ「……♪」

花丸「……」

ルビィ「……?」

曜「『花丸ちゃんが歌ってるところ、早く見たいです』」

千歌「ね?ね?大人気でしょ?」

花丸「こ、これがパソコン!?}

曜「そこ!?」

花丸「もしかして、これが知識の海に繋がってると言う、インターネット……!?」

梨子「そうね……知識の海かどうかはともかくとして」

花丸「うわぁあぁ~!」

千歌「……花丸ちゃんパソコン使ったことないの?」

ルビィ「実は、お家が古いお寺で、電化製品とかほとんどなくて……」

曜「そうなんだ」

ルビィ「この前沼津行ったときも――」

花丸『こ、この蛇口、回すとこないずら』

水が出る

花丸『……ぅ、ぅわぁあ~!』

ハンドドライヤー

花丸『未来ずら!未来ずらよ、ルビィちゃん!』

ルビィ「――って」

花丸「触ってもいいですか!?」

千歌「もちろん」

花丸「うわぁあぁ……」

花丸「……?ずら!」

曜「うわっ」

千歌「あっ」

梨子「な、なにをしたの、いきなり」

花丸「え?あ……え?」

花丸「1個だけ光るボタンがあるなぁ、と思いまして……」

梨子「大丈夫!?」

曜「衣装のデータ、保存してたかなぁ……」

花丸「……マ、マル、何かいけないことしました……?」

千歌「はは……大丈夫、大丈夫……」

花丸「うぅっ……」

 

 

花丸「うわぁ~!こんなに弘法大師空海の情報が!?」

曜「うん。ここで画面切り替わるからね」

花丸「すごいずら~!」

梨子「もう、これから練習なのにー!」

曜「少しくらいいいんじゃない?」

千歌「それよりランキングをどうにかしないとだよね……」

ルビィ「毎年、スクールアイドル増えてますから」

千歌「しかもこんな何もない場所の――」

千歌「地味!アンド地味!アンド地味!……なスクールアイドルだし……」

梨子「あはは……やっぱり目立たなきゃダメなの?」

曜「人気は大切だよ」

千歌「何か目立つことか~……」

梨子「そうね~……」

梨子「たとえば、名前をもっともーっと奇抜なのに付け直してみるとか?」

千歌「奇抜って……スリーマーメイド?」

梨子「!?」

千歌「あ、ファイブだ!」

梨子「~~~!!///」

ルビィ「ファイブマーメイド……!」

千歌『私たちは――』

『『『ファイブマーメイドです!』』』

梨子「なんで蒸し返すの!?」

千歌「って、その足じゃ踊れない!」

梨子「~~!!」

ルビィ「じゃあ、みんなの応援があれば、足になっちゃうとか!」

千歌「わぁ、なんかいいその設定!」

曜「……でも代わりに、声が無くなるという……!」

千歌「ダメじゃん!」

梨子「だからその名前は忘れてって言ってるでしょ!?」

千歌「うわぁ~あぁ~あぁ~」

曜「悲しい話だよね~、人魚姫」

ルビィ「はい……」

花丸「……?」

梨子(ガヤ)「何を言ってるの!?だからそもそもあの名前はただの思いつきで……!」

千歌(ガヤ)「え、なんだっけ梨子ちゃん、な、スリー、スリーマーメイド……」

善子「なんでこんなところに先客が……!」

花丸「……善子ちゃん?」

善子「ずら丸!?……ささーっ……」

花丸「……?」

 

 

「コンビニ寄ってく~?」

善子「うぅ、いきなり屋上から堕天してしまった……」

花丸「学校来たずらか」

善子「うわぁあっ!?」

善子「……う、き、来たっていうか、たまたま近くを通りがかったから寄ってみたっていうか……」

花丸「たまたま?」

善子「どうでもいいでしょ!?そんなこと!!」

善子「……それより、クラスのみんな、なんて言ってる……?」

花丸「え?」

善子「私のことよ!『変な子だねー』とか!『ヨハネって何ー?』とか!『リトルデーモンだって!ぷふ!』とか!!」

花丸「はぁ……」

善子「そのリアクション、やっぱり噂になってるのね!そうよね、あんな変なこと言ったんだもん……終わった、ラグナロクよ……」

善子「……まさに、デッドオアアライブ!」引きこもる

花丸「それ生きるか死ぬかって意味だと思うずら」

花丸「……というか、誰も気にしてないよ」

善子「でしょー……?――え?」

花丸「ふふ、それより、みんなどうして来ないんだろうとか、悪いことしちゃったのかなって心配してて……」

善子「……ほんと?」

花丸「うん」

善子「ほんとうね?天界堕天条例に誓って、嘘じゃないわよね?」

花丸「?……ずら」

善子「――よっし!まだいける!まだやり直せる!今から普通の生徒で行ければ……!」

花丸「!?」

善子「ずら丸!」

花丸「!?な、なんずら……!?」

善子「――ヨハネたってのお願いがあるの」

 

 

「おはよー」「おっすー」

善子「……」

「……?」「……?」

善子(ふふ、見てる見てる。花丸の言ったとおり、みんな前のことは覚えてないようね)

善子(……よーし!)

善子「……おはよ?」

「「「お、おはよう……」」」

 

 

「雰囲気変わってたから、びっくりしちゃった」

「みんなで話してたんだよ?どうして休んでるんだろうって」

善子「ふふ、ごめんね。でも今日からちゃんと来るから、よろしく」

「こちらこそ!津島さんって……名前、なんだっけ?」

善子「え?」

「ひどいなー、あれだよー、あの……」

「なんだっけ?確か、よ、よ……よは……」

善子「っ!!」

善子「……よ・し・こ!私は津島善子だよ!」

「そ、そうだよね……」

善子「あ、あはは……」

ルビィ「津島さん、学校来たんだね」

花丸「ずら!マルがお願い聞いたずら」

ルビィ「お願い?」

花丸『監視?』

善子『そうなの。私、気が緩むとどうしても堕天使が顔を出すの。だから――』

花丸「――危なくなったら止めて、と」

ルビィ「堕天使が出ちゃう?」

善子「お、おほほ……ふぅ」

「津島さんって、趣味とかないの?」

善子「趣味?と、特に何も……」

善子(――いやこれは、クラスに溶け込むチャンス!?ここで上手く好感度を上げて――!)

善子「……う、占いをちょっと……」

「ほんとー!?私占ってくれる?」

「わたしもわたしも!」」

善子「いいよ!えぇーっと……あっ!今、占ってあげる、ね?」

「やったー!」

善子「……」バサッ

「――は?」

「――え」

善子「……これで、よし!」

善子「はい。火をつけてくれる?」

「……」「……」「……!?」

善子「――天界と魔界に蔓延る、あまねく精霊……煉獄に堕ちたる、眷属たちに告げます」

「……うぅ……」「……ひっ……!?」

善子「ルシファー、アスモデウスの洗礼者、堕天使ヨハネと共に!」

善子「――堕天のときが来たのです!」

「……」「……」

ルビィ「……!」

ルビィ「……?」

善子(やってしまったぁあぁぁー……!!!)

花丸「……」

 

 

善子「どうして止めてくれなかったのー!?せっかく上手く行ってたのにー!」

花丸「まさかあんなもの持ってきてるとは思わなかったずら……」

千歌「?」

梨子「どういうこと?」

ルビィ「ルビィもさっき聞いたんですけど――」

ルビィ「善子ちゃん、中学時代はずっと、自分は堕天使だと思いこんでたらしくて」

善子『天界より舞い降りしフォーリンエンジェル……堕天使ヨハネよ!みんな一緒に堕天しましょ?……ふふ』

ルビィ「まだその頃のくせが抜け切ってないって……」

善子「……わかってるの。自分が堕天使のはずなんてない、って……そもそもそんなものいないんだし」

梨子「だったら、どうしてあんなもの学校に持ってきたの?」

善子「……それは、まあ、ヨハネアイデンティティみたいなもので……あれがなかったら、私は私でいられないっていうか!――っは!?」

梨子「……なんか、心が複雑な状態にあるということは、よくわかった気がするわ」

ルビィ「ですね。実際今でもネットで占いやってますし……」

善子『――またヨハネと堕天しましょ?』

(千歌だけ目を輝かせる)

善子「――やめて!とにかく私は普通の高校生になりたいの!なんとかして!」

ルビィ「……」

花丸「ずら……」

千歌「……かわいい」

ルビィ「?」

花丸「?」

善子「え?」

千歌「――これだ!これだよ!」

曜「千歌ちゃん?」

千歌「津島善子ちゃん!いや、堕天使ヨハネちゃん!」

善子「……!?」

千歌「――スクールアイドル、やりませんか!?」

善子「……………………なに?」

 

Bパート

 

梨子「こ、これで歌うの……!?この前より短い……」

梨子「これでダンスしたら、さすがに見えるわ……」

千歌「だいじょぶー!」

梨子「そういうことしないの!!」

梨子「……はぁ。いいのかなあ本当に……」

千歌「調べてたら堕天使アイドルっていなくて、結構インパクトあると思うんだよね」

曜「確かに、昨日までこうだったのが――」

梨子「……」

ルビィ「……」

花丸「……」

善子「……」

曜「――こう変わる……!」

ルビィ「うぅ……なんか恥ずかしい」

花丸「落ち着かないずら……」

梨子「……ねえ、本当に大丈夫なの?こんな格好で歌って……」

千歌「かわいいねー!!」

梨子「そういう問題じゃない」

善子「そうよ、本当にいいの?」

千歌「これでいいんだよ!ステージ上で堕天使の魅力をみんなで思いっきり振りまくの!」

善子「堕天使の、魅力……?」

善子「……っは!ダメダメ、そんなのドン引かれるに決まってるでしょ!?」

千歌「大丈夫だよ!きっと――」

善子『天界からのドロップアウター……堕天使ヨハネ!堕天、降臨!!』

千歌「――わぁぁ……!」

善子「――大人気……!フフ……フフフ……」

千歌だけ目を輝かせる

ルビィ「協力、してくれるみたいです……」

梨子「しょうがないわねえ……」

 

美渡「よーしよーし、いい子だねー。……あ、来てたんだ」

しいたけ「……」

梨子「……!!」

しいたけ「……」

梨子「……!!!!」

 

梨子「ぃいやぁああー!!!!」

美渡「こら、しいたけー!」

千歌「梨子ちゃん?」

梨子「やめてー!!来ないでー!!!」

千歌「大丈夫?しいたけは大人し――ぶっ」

梨子「~~~!!!」

しいたけ「!!」

千歌「梨子ちゃん!?」

梨子「とおりゃあああーーー!!!」

「「「「「……おぉ、飛んだ……」」」」」

しいたけ「わん!」

梨子「――っ!」

「「「「「おぉ~!」」」」」

梨子「うぅぅ……!」

「おかえり……」

梨子「……ただいま……」

 

 

千歌「じゃあ、衣装よろしくね」

曜「ヨーソロー!」

花丸「じゃあマルたちも」

ルビィ「失礼します」

千歌「うん、じゃあねー!」

梨子「あいたたたた……」

千歌「あはは」

梨子「笑い事じゃないわよ!今度から絶対繋いでおいてよ!?」

千歌「はいはい、ふふふふ」

梨子「もう、人が困っているのがそんなに楽しい?」

千歌「違う違う、みんないろいろ個性があるんだなーって」

梨子「え?」

千歌「ほら、私たち始めたはいいけど……やっぱり地味で、普通なんだなーって思ってた」

梨子「そんなこと思ってたの?」微笑みつつ

千歌「そりゃ思うよー。一応言い出しっぺだから、責任はあるし……」

千歌「……かと言って、今の私にみんなを引っ張っていく力はないし」

梨子「……千歌ちゃん……」

千歌「でも、みんなと話して少しずつみんなのこと知って、全然地味じゃないって思ったの」

千歌「それぞれ特徴があって、魅力的で……だから、大丈夫じゃないかなって!」

梨子「……やっぱり変な人ね」

千歌「えぇ!?」

梨子「初めて会ったときから思ってたけど」

千歌「なーに?褒めてるの?けなしてるの??」

梨子「どっちも?」

千歌「なーにわかんないよー!」

梨子「とにかく、頑張っていこうってこと。地味で普通のみんなが集まって、何ができるか。ね?」

千歌「……よくわからないけど……ま、いっか」

梨子「ふふっ、うちまで競争!」

千歌「えっあっずるいー!ちょっと!あ、しいたけ!」

梨子「え!?」

千歌「うっそー!あははは!」

 

 

善子「はぁい!伊豆のビーチから登場した、待望のニューカマー、ヨハネよ!」

善子「みんなで一緒にー……堕天しない?」

「「「「「しない?」」」」」

梨子「…………やってしまった」

千歌「どう?」

曜「待って、今……」

千歌「!?うそ……一気にそんなに……!?」

梨子「じゃあ効果あったってこと?」

ルビィ「コメントもたくさん!すごい!」

(私は真ん中の子かな)(梨子ちゃん(ぼそっ))(花丸ちゃんかわいいぃぃぃ)(曜ちゃんかな)(みんなカワイイ、それでいいじゃない)

曜「『ルビィちゃんと一緒に堕天する!』」

花丸「『ルビィちゃん最高!』」

梨子「『ルビィちゃんのミニスカートがとてもいいです』……」

千歌「『ルビィちゃんの、笑顔を……』」(補完:ずっと眺めてたい)

ルビィ「いや~、そんな~」

 

ルビィ『ヨハネさまのリトルデーモン4号、く、黒澤ルビィです。一番小さい悪魔……かわいがってね!』

ダイヤ「……💢💢」

鞠莉「Oh!Pretty Bomber Head!」

ダイヤ「Pretty……!?どこがですの……!?」

ダイヤ「こういうものは……破廉恥というのですわ!!!」

千歌「いやー……そういう衣装というか……」

曜「キャラというか……」

梨子「だから私はいいの?って言ったのに……」

ダイヤ「そもそも、わたくしがルビィにスクールアイドル活動を許可したのは、節度を持って自分の意志でやりたいと言ったからです!」

ダイヤ「こんな格好をさせて注目を浴びようなど――!」

ルビィ「……ごめんなさい、お姉ちゃん……」

ダイヤ「……とにかく、キャラが立ってないとか、個性が無いと人気が出ないとか……そういう狙いでこんなことするのはいただけませんわ!」

曜「でも、一応順位は上がったし……」

ダイヤ「そんなもの一瞬に決まってるでしょう?試しに今、ランキングを見てみればいいですわ!」

曜「ふぅ……あっ!?」

1525→1526

ダイヤ「本気で目指すのならどうすればいいか、もう一度考えることですね!」

千歌「は、はい……」

善子「……」

 

 

千歌「失敗したなぁ~……」

千歌「確かにダイヤさんの言うとおりだね、こんなことでμ'sになりたいなんて失礼だよね……」

ルビィ「千歌さんが悪いわけじゃないです……」

善子「そうよ」

「「「……」」」

善子「いけなかったのは、堕天使」

千歌「え?」

善子「やっぱり、高校生にもなって通じないよ」

千歌「それは……!」

善子「なんか、すっきりした。明日から今度こそ普通の高校生になれそう」

ルビィ「じゃあ、スクールアイドルは?」

善子「うーん……やめとく。迷惑かけそうだし。……じゃあ」

善子「……少しの間だけど、堕天使に付き合ってくれて、ありがとね。楽しかったよ」

 

梨子「……どうして、堕天使だったんだろう」

花丸「マル、わかる気がします」

花丸「ずっと、普通だったんだと思うんです」

花丸「私たちと同じで、あまり目立たなくて」

善子「……」羽根を手放す

花丸「そういうとき、思いませんか?これが本当の自分なのかなあって。元々は天使みたいにキラキラしてて、何かの弾みでこうなっちゃってるんじゃないかって」

ルビィ「……そっか」

梨子「確かにそういう気持ち、あった気がする」

千歌「……」

曜「……」

花丸「……幼稚園のころの善子ちゃん、いつも言ってたんです」

善子『わたし、ほんとうはてんしなの!いつかはねがはえて、てんにかえるんだ!』

花丸『ずら~~!』

花丸「――って」

千歌「…………」

 

 

善子「……」

善子「……これでよし」

 

善子「……」ダンボールを捨てる

善子「……」

千歌「――堕天使ヨハネちゃん」

善子「え……?」

「「「「「スクールアイドルに入りませんか?」」」」」

善子「…………はぁ……?」

千歌「ううん、入ってください、Aqoursに!堕天使ヨハネとして!」

善子「何言ってるの?昨日話したでしょ、もう――」

千歌「いいんだよ、堕天使で!自分が好きならそれでいいんだよ!」

善子「……ダメよ。……っ」

千歌「あ、待って!」

善子「生徒会長にも怒られたでしょう!?」

千歌「うん、それは私たちが悪かったんだよ!」

千歌「善子ちゃんはいいんだよ、そのまんまで!」

善子「どういう意味ー!?」

「!?」

善子「あっ!っすいません!」

善子「しつこーーーい!!!!」

千歌「私ね!どうしてμ'sが伝説を作れたのか、どうしてスクールアイドルがそこまで繋がってきたのか、考えてみてわかったんだ!」

善子「っ……!もう、いい加減にして~!」

千歌「……ステージの上で、自分の『好き』を迷わずに見せることなんだよ!」

善子「はぁ……はぁ……」

千歌「はぁ……はぁ……お客さんにどう思われるかとか、人気がどうとかじゃない」

千歌「自分が一番好きな姿を、輝いてる姿を見せることなんだよ!」

千歌「だから善子ちゃんは捨てちゃダメなんだよ!自分が堕天使を好きな限り!」

善子「……」

善子「……いいの?変なこと言うわよ」

曜「いいよ」

善子「ときどき、儀式とかするかもよ」

梨子「それくらい我慢するわ」

善子「リトルデーモンになれって言うかも!」

千歌「それは……でも、やだったらやだって言う!」

善子「っ……!」

千歌「……」羽根を差し出す

善子「……!」

千歌「――だから!」手を差し出す

善子「……」手を取る

千歌「――あははっ!」

善子「……ふふっ」

 

 

ダイヤ「鞠莉さん!」

鞠莉「どうしたのデースか?」

ダイヤ「あのメールはなんですの!!?」

鞠莉「何って、書いてあるとおりデース」

ダイヤ「そんな……」

鞠莉「……」

ダイヤ「……嘘でしょう?」

 

ED